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第3話 「やっぱり…これだよなぁ!!」

…あぁ……醜い豚ども…憎い………憎い……


首に付いてるこれさえ無ければ、テーブルナイフ一つで…全員の手足を切り落として、ゆっくりと殺してやるのに…


次々と手を挙げていく。

声を荒げて数字を叫ぶ。

私を買う為に。


ここにいる何処ぞの金持ちの奴隷になるのだろう。ろくな目に合わないのは誰でも分かる。

だけど、殺すことも……ましてや死ぬことも出来ない…。


あまりの先行きの暗さに下を向きたくなる気持ちになるが、それでは屈している感じになる。前を向き、睨みつける。

心だけは絶対に…誰にも自由に触れる事は出来ないのだから。


「おぉっと!そちらの手を挙げている方はいくらにするのですか??」


何年掛かろうが、必ず復讐を…


「……値段が付けられないような物なんてはどうだ??」


司会者は一瞬考える。


「……そうですねぇ。物によります。どのような物でしょうか??」


「………あんたらの命なんてどうだ??」


言葉を頭で吸収しきる前に彼は動いた。


突然、大きな音がなり、司会者は血を飛び散りながら後ろに倒れた。

ワインのボトルを投げたのだ。速すぎて見えなかった。

一斉に悲鳴が上がったが、その前にさらに4人素手で殺している。

ほとんどが出口に向けて逃げ出しているが、それは叶わなかった。そうなる前に仕留められている。


しばらく経った静寂後、血みどろの水溜りの中で残ったのは奴隷従業員とマダムと呼ばれた人物だけ。

それ以外は壊れた人形の残骸になっている。


彼は仮面を脱ぎ捨てる。

若い成人男性で、癖っ毛のある少し長めの黒髪。人間種と同じ小さめの耳に、無邪気な子供のように爛々とした眼。そして、何よりも笑顔だった。


恐怖を感じるのが当たり前の反応なんだろうが、生憎私にはそのような感情が湧かなかった。


彼が近づいてくる。

そして、片膝をついて口を開ける。


「名前は何という…??」


…濁りきった目…だけど、何故か安心感があって落ち着く。


「…アイナ……アイナ・シャロメット………

貴方は…??」


「俺の名前は、ーーーだ。」



「俺の名前は、犬神純也(いぬがみ しゅんや)だ。」


そう名乗るとアイナは首を傾げる。


アイナ「……ごめんなさい。名前のとこだけ分かりません。…発音の難しい言語なのですね。」


どういうことだ?

………まさか…


犬神「この言葉は分かるか⁇…野球、東京タワー、埼玉、ジュース。」


アイナ「…すみません。ジュース以外分からないです。」


なるほど。

この指輪は完璧ではないようだ。

あっちの世界に有って、こっちの世界に無いものは上手く翻訳出来ないってことか。


となると…名前を変えねぇといけねぇか……

まぁ、異世界だし心機一転で名前を変えても良いか。

いぬがみ……イヌ、は捻りがない。…………狂犬だとよく言われたが、どちらかと言うと俺は自分のことを野良犬みたいだと感じている。…野良犬……はちょっと変か。…ノライヌ……ノラ…ノラ!


犬神「……決めた。今日から俺はノラだ。それが名前だ。」


満足の入った笑いを浮かべながら言う。


アイナ「…ノラ……」


ノラ「…悪くねぇだろ??」


そんな彼を見つめながら小さく呟く。

魂に刻むように。忘れることがないようにする為。



ノラ「この首輪邪魔だな。」


両手で無理やり外そうとする。


アイナ「!だ…ダメ!?それをすると…!」


慌てて止めようとする。


これは首輪に合った鍵がないと外れない魔道具。魔力による解除はもちろんのこと、筋力で外す事は不可能。無理に外そうとすると電撃が走り、最悪の場合、首輪内側にある魔石が爆発して首が飛ぶ。


止めさせないと…。


ガチャ


ノラ「なんか言いかけたか?」


アイナ「……えっ…??」


外れた。簡単に外れた。電撃の覚悟をしていたのに反応がなかった。どうゆうこと?


アイナ「あの…これ、無理やり外す事が出来ないんです。外そうとすると電撃が……最悪爆発して首が無くなるんですが…どうやったんですか?」


??

俺にも分からん。手錠を無理やり外すよりも簡単だったんだが?


ノラ「そうなのか?普通に力技で外しただけなんだが…」


電撃なんてもっと分からねぇよ。不良品だったんじゃね?


ノラ「ちなみに鍵はどいつが持ってる?」


アイナは壇上にある死体を指差す。


アイナ「売りに出された奴隷の鍵はあの司会者が持っているはずです。奴隷従業員のは分かりません。」


ノラはなるほどと呟き、アイナに手を差し出す。アイナはその手を取り、立ち上がる。

ノラはそのまま頭が半壊した司会者の死体を漁り、鍵を見つける。


ノラ「マダム・キシュナ!」


ノラがマダムを呼ぶ。マダムは奴隷従業員の首輪を弄っている。暫くするとガチャという音と共に首輪が落ちる。


マダム・キシュナ「もうすでに見つけてるわ。残りも外してここから立ち去りましょう。ここから少し離れた所に馬車を待たせているわ。」


ノラがその言葉を聞きながら、舞台裏へ向かう。赤のカーテンの先、暗闇の中に先ほど競売に掛けられていた奴隷が檻に入れられている。何が起こっているのか分からないといった状態で怯えている。

その状態でも御構い無しに鍵を開けていく。全ての檻の鍵を開け終わると、奴隷たちは恐る恐る出てくる。

今度は出てきた奴隷たちの首輪を外していく。


静かに泣く者や感謝の言葉を述べる者など反応は様々だが、全員喜んでいるのが目に見えて分かる。


ノラ「さっさとここからズラかんぞ。」


そう言ったノラはカーテン裏から出る。

奴隷たちはその後を追う。


マダム・キシュナ「近くに馬車を止めてあるわ!全員乗りなさい!一先ず落ち着ける場所に行かないとね。」


キシュナが先導する。


外は静かで先ほどの悲鳴等は何処にも聞こえてないらしい。入る前と変わらず暗く、静寂である。


少し歩くと3台の馬車が止まっている。

待っていたらしい数人の使用人がキシュナと少し話した後、すぐに馬車に奴隷たちを乗せるのを手伝う。


マダム・キシュナ「待って。」


その姿を見たノラは何も言わずに立ち去ろうとするが、キシュナが呼び止める。


マダム・キシュナ「あなたとは色々お話ししたいの。明日、私の家に来て。向かいを寄越すわ。」


ノラは了承し、泊まっている宿の場所を教える。


マダム・キシュナ「あそこの宿ね。優しい親子が経営している…良いところに泊まっているわね。……かなり強引なやり方だったけど、あの場所が完全に潰れたし、みんなを助けることができた。ありがとう。また明日ね。」


その言葉を聞き、ノラは去り、キシュナは馬車の元へ行く。


気に入らない奴らを殺しただけだけどなぁ…

まぁ、面白い奴らと出会えた。気分が良いな。


ノラは上機嫌なまますぐに宿へと向かわず、キシュナに関して情報収集がてら気に入らない奴らを殺しに行く。

辺りに血と惨劇の匂いを撒き散らしながら。

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