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突然の勝負

「この地に人間がいるとは……?」


 くぐもった女性っぽい声が放たれる。


「失礼、採取に来ただけなんだ」


 別に俺としても戦わなくてもいいなら、戦わないほうがいいのでそう声をかけた。


「ここまで軽装備で来るとは大したものだ……冷気使いか?」

 

 質問にはうなずいた。


 快適に過ごせる環境を維持するためにずっと冷やし続けているから、見る人が見れば簡単にわかるだろう。


「……よければ私の炎と勝負してくれないだろうか?」


「それはかまわないが、何でまたいきなり?」

 

 礼儀正しく常識をわきまえてそうな人からいきなり勝負を持ちかけられるとは思わず、反射的に聞き返してしまった。


「私は求めているんだ。私を抑え込めるほど強い存在を」


 声は少し聞き取りにくかったが、切実な響きが宿っていることは伝わってくる。

 おそらく俺には想像できないほど深刻な事情があるんだろう。


「俺でいいなら受けて立とう」


 目の前の存在からほのかにじむ孤独感が、俺を決意させた。


「ありがたい……感謝する」


 目の前の人物(?)がそう言うと同時に、全身から白い炎が立ちのぼる。


「これでも抑えているんだ……」


 苦しそうに告げられた声には真情がこもっていた。


 見るだけで全身の水分が奪われそうな白い炎の存在感は、レッドドラゴンを焼き殺しても不思議じゃないと思う。


 むしろここまで逃げて来られたのは、目の前の人物が手加減したからじゃないだろうか。


「わかった。凍てつけ」


 俺は抑えていたスキルを解放し、白い炎の凍結を試みる。

 鎧の人物以外を包み込んでいた白い炎はあっさりと凍りつく。


「おおお……」


 気のせいじゃなかったら目の前の人物が放ったのは感動だ。


「わが【白炎】をとめたのはあなたが初めてだ……」


「そうなのか?」


 たしかにすごい火力だったが、S級なら同じことができるんじゃないのか?


「わが国にいたS級冒険者【氷王】は失敗して瀕死になってしまった」


 俺の心の疑問を読んだような答えが出る。

 【氷王】って俺でも知っている、王国の有名な冒険者じゃないか。


 いつの間にか俺の力はあの【氷王】を超えていたということか。


「続けてもいいだろうか?」


「どうぞ」


 俺はまだまだ全力じゃなかったので、そう答える。


「【絢爛劫火】」


 人物が唱えると白い炎と黒い炎が両手から吹き出して、俺の全身を包もうと襲ってきた。


 これはさっきまでの白い炎よりもさらにやばい。

 

「凍えろ」


 冷えろ、凍れ、凍てつけ、よりもさらに出力をあげて対応する。

 俺の全身を包もうとしていた炎は一気に凍りつく。


「おおお……!?」

 

 目の前の人物が放った感動の声はさっきよりもずっと大きい。


「い、今のをとめるなんて、すごい……SS級の【冷神】ですら完全には防げなかったのに……そのせいで私は追放されたのに……」


 人物の声は震えている。


 SS級の【冷神】の名は俺も聞いたことがあるが、そんな大物と知り合いだったのか?


 それに追放されたっていったいどういうことなんだ?


 人物はいきなり兜に手をやって脱ぐと、中から十代後半と思しきとても美しい赤い髪の少女の素顔が現れる。


「見つけました、あなたこそ私の運命の人です!」


「……はい?」

 

 青い目を潤ませながら言われても正直ついていけない。


「いきなり言われても意味が不明なんだが」


「あ、はい。ごめんなさい」


 困惑をぶつけると美少女はしゅんとなる。

 とりあえず冷静になってくれたらそれでいい。


「えっと、最初から説明してもいいですか?」


「ああ、かまわないよ」


 追放されたという点が引っかかっていたので、彼女の申し出を受け入れる。

 もしかしたら俺と似たような境遇かもしれないと思ったんだ。


「私はウルスレジナ・シャルロット・ヴァン・エルセレット・ネブラスカといいます。ネブラスカ王国の第四王女です」


 美少女はそう名乗る。

 王国の王女は四人いたはずだけど、ウルスレジナって名前は聞いた覚えがないな。


「私は生まれ持ったスキルが期待外れだったため、対外的には存在していないものと扱われていました」


 彼女はそっと目を伏せる。

 最初は期待外れだったとか、強すぎるスキルからは想像もつかない。

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