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お菓子を探せ

「どうする? 普通に探すか?」


 と俺が聞くとルーはきょとんとしたものの、スーはにやりと笑った。


「何か勝負でもしてみるか?」


 彼女は乗り気だった。

 好戦的とは言えないにせよ、こういうのは好きなのだろう。


「勝負と言うかゲームと言うか。みんな土地勘がないからはぐれると困るし、三人歩きながら最初に見つけた者の勝ち、でどうだろう?」


 漠然と探すよりは楽しいと思うんだ。


「いいな!」


 スーがすかさず賛成する。


「はぐれる心配がない点が素敵なアイデアですね」


 ルーも乗り気になってくれた。


「子どものお遊び扱いされるかと思ったけど」

 

 ちょっと意外だった。


「なーに。たまには童心になるのもよかろう」


 スーはワクワクしている顔で言う。

 一番乗り気なのが彼女だとみて間違いなさそうだ。


「そうですね。どうせなら楽しいほうがいいでしょう」


 ルーも無邪気な感情が隠しきれていない。

 二人とも、こういうのが好きだったんだね……俺だって人のこと言えないけど。


「決まりだね」


 と言うと、スーが手のひらと拳を打ち合わせる。


「やるからには勝つぞ」


 最も彼女がやる気に燃えているようだった。


「ちょっと待ってください」


 勝負は静かにはじまりそうなところで、ルーが待ったをかける。


「どうした?」


 止められたスーは不満そうに聞く。


「私とフランさんはダリオルの見た目を知っていますが、スーさんは知らないのではありませんか?」


「あっ……」


 スーは間抜けな顔をして間抜けな声を出したけど、俺は彼女を笑う資格がない。

 発案者の癖にうっかり見落としていたからだ。


「スーは審判になるのかな」


 この流れで見ているだけだとは言いにくい。


「仕方がないな。うっかりしていたわ」


 お菓子にすっかり脳が染まっていたスー、それに影響された俺、冷静さを保っていたルーと見事に別れた。


「いいだろう。どちらが勝つか、わたしが見届けてやろう」



 何しろ三人横一線で歩くのだから、目を忙しく動かす以外にやることがない。

 もしも観客がいるとしたらとても退屈だろう。


 当事者たちは俺も含めてみんな真剣なんだけどね。

 何軒もの店を通行人を避けながら通り過ぎていくうち、俺はあっと声をあげる。


「あそこ」


 そして左斜め前の青い看板の店を指で示す。

 ちょうど一人の少女がダリオルを買っているところだった。


「本当ですね」


 それをルーが確認して認める。


「つまりフランの勝ちか。あっけない決着だったな」


 スーがちょっとがっかりした様子で言った。


「とりあえずさっきのうっかり分は挽回できたね」


 ホッとして言うとルーは微笑む。


「フランさん、お見事です」


「さて、敗者のルーはわたしにダリオルを食わせてもいいと思わないか?」


 スーはどこか期待している面持ちで提案する。


「そんなルール、作ってなかったけどね」


 俺は思わず苦笑した。

 ずうずうしいとは言わないが、ちゃっかりしている感じは否めない。


「別にかまわないと思いますよ」

 

 ルーは微笑みながら言った。


「三人分を買いましょうか。保存に関して言えば、スーさんがいれば解決できるでしょうし」


「そうだね。ダリオルは低温で保存しないといたみやすいけど、スーなら平気だろう」


 スーの能力なら何日でも余裕で保存できるので俺は賛成する。


「それくらいは任されよう」


 スーが納得したので三人で列の最後に並ぶ。

 待っているのは五人で、全員が女性だった。


 王国でも甘味が好きなのは大半が女性だったけど、皇国でも変わらないのかもしれない。


 旦那や兄弟、恋人の分を買う人がいてもおかしくはないけど。


「何と言うか、肌の白い者が多くないか?」


 とスーが言う。


「北国だから、日焼けしづらいんじゃないかな」


 太陽の下を歩く時間の長さで変わるらしいと聞いた覚えがある。

 ルーだって王族で外を歩く時は鎧を着ているせいか、肌はかなり白いしね。


「ふむ。人間の肌は日差しを浴びることで、影響を受けるのか」


 スーは興味深そうに言った。


 聞こえたらしい前の人が不思議そうな顔をしているが、俺たちは知らぬ顔を決め込む。

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