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ここで勝負?

 ルーと相談した結果、今は軽く食べて夜にしっかり食べることにした。


「人間は大変だな。三回も食事をしなければならないとは」

 

 スーは気の毒そうに言う。

 ドラゴンならではの感覚なんだろうけど、ちょっとムッとくる。


「人間が食う美味い飯を体験しても同じことが言えるかな?」


 少し挑戦的な言い方をすると、スーは愉快そうにニヤリと笑った。


「ほほう。ならばわたしが美味いと思う料理を食べさせてくれるのかな?」


「いいだろう。勝負だ」


 ほとんど悪乗りだったけど、スーは楽しそうに乗ってくる。


「え? 今の流れで勝負がはじまるんですか?」


 ルーがびっくりしているが、今さら止められない。


 勝負だと言ってもスーが気になる料理を探せるかどうか、という単純で周囲の迷惑にならないものだから、彼女も本気でとめたりしないだろう。


「勝負って言っても、スーに俺たちの食事を味見してもらうだけだからね」


 大げさな言い方になっているものの、実際のところは試食会のようなもので、勝負とは名ばかりのものになる。


「なるほどです。スーさんも食事を楽しめたら最高に素敵ですね」


 ルーはそう解釈した。


「その捉え方が素敵だと思うけどね。発想が美しいというか」


 彼女の美点の一つだと思う。


「ありがとうございます」


 ルーは照れたらしく、うつむきながら髪を右手で触ってもじもじする。


「そんなこと言われたのは初めてです。フランさんは褒め上手ですね」


「お互い様だと思うよ」


 ルーは感激したようだったが、俺にしてみれば彼女こそ褒め上手だと言いたい。


「おまえたち、わたしを置いていちゃいちゃするなよ」


 スーが呆れた声を出して雰囲気を割ったので、俺たちは我に返る。

 近くに彼女がいたのだし、ギルドの外だから天下の往来だった。

 

 多くの人は無関心だけど、何人かは不思議そうな視線をこっちに送っている。


「移動しようか」


「そうですね」


 俺たちは恥ずかしさに勝てず、そそくさと足を動かして一軒の店に入った。


 ピンクを基調とした内装の可愛らしい店で、ルーとスーが一緒じゃなかったらとてもじゃないけど入れない。


 中にいる客はほぼ全員が女性で、例外はカップル客くらいのものだ。


 男一人、女二人という組み合わせが珍しいのかちらりと視線をむけられるが、すぐにそらす。


 皇都の客だけあって不躾な客はいないようだった。


「ふん」


 そのせいか、スーは悪くないというばかりに鼻を鳴らす。


 スタッフがやってきてあいている四人掛けの席に案内し、メニューを置いていく。


 俺の正面にスー、右隣にルーとなったけど意味は特にないだろう。


「おまえたちは何を頼むんだ?」


 スーが聞いたのは勝負という名目があるからで、興味そのものはあまりなさそうだった。


「サンドイッチかパンケーキか、悩みどころですね」


 ルーはメニューを見ながら小さくうなる。

 腹にたまるならサンドイッチのほうだろう。


 ただ、疲れた自分をいたわるという意味ではパンケーキだろうか。

 と言うか皇国にもパンケーキってあるものなんだね。


 パンケーキ発祥の地は王国よりもさらに西らしいと聞いた覚えがあるんだけど、そんなのは関係ないってことだろうか。

 

「パンケーキでいいんじゃないかな?」


 サンドイッチは王国建国功労者の一人、イッチ公爵が考案したと伝わっている。


 俺たちがしゃべっているのは王国風の発言だと人によってはすぐわかるだろうし、王国伝来の料理を頼まなくてもいいんじゃないかと思うのだ。


「うーん……たしかにサンドイッチは王国風料理ですし……」


 ルーは迷っているらしい。


「両方食べたい気分なのかな?」


「はい」


 彼女は恥ずかしそうにうなずく。


「じゃあ俺と二人で一品ずつ頼んで、半分こしようか。それなら両方食べられるし、スーにも分けられる」


 解決策を提供するのはどうだろうかと思ったら、彼女はそれで満足したらしく満面の笑顔になった。


「素晴らしいアイデアですね! それでいきましょう」


「わたしはおまえたちに任せる」


 スーの反応は予想していたので、ルーが賛成するなら決定だな。

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