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皇都いり

「乗り物に乗ってきたのですが、申請する必要があるのですか?」


 と俺が代表して問いかけた。


「高速で移動できる乗り物があるなら、それも評価に加算されるので申請してもらったほうがお互いメリットはあると思うが」


 いかつい顔立ちの兵士がこっちを観察するように見ながら答える。

 彼が言っていることは納得も理解もできるが、従えるかは別問題だ。


 フェニックスと契約しているって情報が出回ると、王国にばれてしまうんじゃないかという懸念があるからだ。


 ちらりとルーを見ると彼女は小声で耳打ちをする。


「あの子と契約したのは追われた後なので、問題ないと思われます」


「そうだったのか」


 ならフェニックスの契約者とルーが王国で紐つけて考えられることはないか。


「報告は自分でする?」


「ええ」


 俺の問いにルーはうなずいて兵士たちを見た。


「私はフェニックスと契約していて、彼を乗り物として使っているのです」


「フェニックスだと!?」


「あの不死鳥!?」


 ルーの申告を聞いた兵士たちは驚愕し、中には思わず槍から手を放してしまう者までいる。


 フェニックスはそれほど強大な存在として認識されているのだろう。


「事実なら納得はできるが……フェニックスとなると確認せざるを得ないぞ」


 いかつい顔をした兵士がうなりながら言った。

 騙りの可能性を排除するのは皇国側として当然の判断だった。


「ええ。ただ、ここで見せてもいいのでしょうか?」


 ルーが聞いたのはここは都の門の入り口付近だからだろうね。


「ああ、人がいない場所に移動してくれるならな。我々はここから見ていよう」


 人がいなくて兵士たちが目視で確認できる場所に行けってことか。


 周囲を見回すと意外と条件を満たした場所はすぐに見つかったので、ルーはそっちへと足を運ぶ。


 移動するルーの後をついていき、拓けた場所へとやってくる。

 そしてルーはベンちゃんを呼び出した。


 何度も何度も呼ばれてもまったく疲れた様子を見せないので、さすがフェニックスはタフだなと感心する。


「おおおおお」


「ふぇ、ふぇ、フェニックスか」


「本物だ」


 火をまとって力強く空を舞う、圧倒的な存在感を持った鳥。

 兵士たちはひと目で本物だと感じたらしい。


 ベンちゃんに戻ってもらって再び城門へと戻ると、畏怖のこもった視線がルーへと集中する。


「フェニックス使いとはさすがS級ですな」


 言葉遣いがいきなりていねいになっていたのは相当な衝撃を受けたからだろうか。


「ソルトレー領主から話はあったのと思うのですが」


 俺が言うと、視線はスーへと向けられる。

 アイオーンドラゴンが少女だという情報も入っているんだろうなと推測した。


「ええ、知っていますが我々はあなたたちを通すことしかできないのです。まずは皇都の冒険者ギルドをお訪ねください」


 一介の兵士にそんな権限がないことはわかるのでうなずく。


「冒険者ギルドってここからどう行けばいいのですか?」


「まっすぐに進んでいただき、大きな噴水を左に曲がってください。けっこう歩きますが基本一本道なのでわかりやすいかと」


 いかつい兵士が答えてくれたので礼を言う。


「ありがとうございます」


 そして中へと足を踏み入れるが、スーは実は空気を読めるらしくずっと黙っていてくれたのがありがたかった。


「ここが人の街か。ソルトレーとやらとはいろいろと趣が違うな」


 そのスーは皇都の街並みを興味深そうにながめながら感想を漏らす。


「ソルトレーよりこっちは北だからね。寒さは厳しいというのはありそうだ」


 俺は堅牢な石造りの建物をながめながら答えた。


「人間は大変だな。寒さ対策が必要なのか」


 スーにしてみれば必要のないことなのだろう。

 ドラゴンはその高い魔力と生命力から、基本の変化の影響をほとんど受けない。


 レッドドラゴンが火山などに住み、アイスドラゴンが水辺で暮らすのはあくまでも好みの問題にすぎないのだ。

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