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皇都セリオン

「皇都やらへはこのまますぐに向かうのか?」

 

 屋敷を出たところでスーに聞かれる。


「ああ。ルーが契約しているモンスターならひとっ飛びだ」


 俺が答えると彼女はルーに視線を向けた。


「ふむ。この娘も相当強そうだ。おそらく火の神の祝福持ちであろう?」


「わかるのですか?」


 ルーは目をみはる。


「それくらいはな。だから最初はおまえと戦いたかったのだが、フランに見事に敗れたわけだ」


 スーは明るく笑った。

 俺との戦いで負けたことをまったく気にしていないらしい。


 さすがドラゴンと言いたくなるほどの大物感をただよわせている。

 

「機会があればおまえとも戦いたいな」


「ルーが戦うと周囲への被害が大きいからダメだ」


 本当ならルー本人が決めるべきで、俺が口出すのはおかしいと思う。

 だけどこれだけは明言しておきたかった。


「……まあそういうことなら仕方ないかな」


 スーは意外とあっさりと引き下がる。


「ごめんね」


 勝手に断ったことをルーに謝ると彼女は首を振って微笑む。


「いえ、どうやって断ろうかと思ったので、とてもありがたいです。フランさんはいつも頼りになります」


 彼女が不愉快な思いをしなかったのなら何よりだ。

 街の外に出たところでルーがベンちゃんを呼び出す。


 するとベンちゃんは警戒するような視線をスーに向ける。


「ほう、フェニックス、それも成体じゃないか」


 スーは目を輝かせた。

 強者が好きなのなら、フェニックスも好きなんだろうなと納得する。


「これはおまえが従えているのか?」


「ええ」


 スーに聞かれたルーがうなずくと、彼女は笑った。


「期待以上だな。これは楽しみだ」


 スーが冒険したいのはもしかしたら、強敵との邂逅と戦闘を臨んでいるからじゃないのか。


 そう思わざるをえない反応だった。


 もっとも彼女が俺たちの仲間として戦ってくれるなら非常に心強いので、文句を言うわけにもいかないんだが。


「ひとまずこいつに乗っていくのだろうが、わたしもか? わたしは空を飛べるぞ?」


 スーの申し出はわからなくもないので答える。


「アイオーンドラゴンが空を飛んで皇都に行ったらパニックが起こるだろうから、俺たちの一緒に乗ってくれ」


「なるほど、そういうものか」


 あっさり納得してくれたので助かった。


 やっぱりと言うか人間がどう感じるのか、という点についてはさっぱりなんだな。


 ドラゴンとして生まれ暮らして、人間とまったく接点がなかったのだから当然のことだけどね。


 ルー、俺、スーの順にベンちゃんに乗るとプルとベンちゃんの体が震える。

 まさかと思うが重いなんてことは……二人は女子なので言えないが。


「わたしに怯えているのか? フェニックスとあろう者が?」


 スーががっかりしたような声を出す。

 ああ、スーが自分の体に触れたという恐怖みたいな感じだったのか。


 ベンちゃんが震えたのは一瞬で、すぐに立ち直って力強く羽ばたく。

 俺はルーに捕まるのだが、スーはと言うと俺に捕まらなくても平気らしい。


 後ろに目をついていないから何をやっているのかわからないが、機嫌がよさそうな鼻歌が聞こえてくるしまつだった。

 

 この高速飛行で余裕たっぷりなあたり、アイオーンドラゴンはさすがだね。


 馬だったらどれくらいかかるのかわからない距離をベンちゃんは楽々と飛び越え、俺たちは皇都セリオンへと到着する。


「あれが皇都とやらか?」


「だろうね」


 スーの質問には俺が答えた。

 

 皇都セリオンは白い城壁に囲まれた大きな都市で、もしかしたら王都よりも大きいかもしれない。


 ここから見ただけじゃ断言はできないんだけど。

 俺たちはベンちゃんからおりて城門へ近づくと、兵士に呼び止められる。


「通行手形を見せてもらおう」


 ソルトレー領主からもらった分と一緒に冒険者ライセンスを提示した。


「これはソルトレー領主の?」


 都の兵士だけあって領主の分をすぐに見分けられることができるらしい。


「話は聞いているが……今日の今日で都に到着したというのか?」


 ソルトレー領主から皇都に別途連絡がいったものの、それだけに移動時間という点で疑問を持たれてしまったようだった。


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