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「凍神フラン」

「どういう状況ですか?」


 俺の問いに兵士の一人が答える。


「ビッグボアの群れがこっちに来てるんだ。数はおそらく100前後」


「ビッグボアが100?」


 たしかに変なので思わず聞き返す。


 ビッグボアはイノシシのようなモンスターで群れを作って暮らすが、一度にそんなたくさんが行動するという話は聞いたことがない。


「大型のものが多いし、数が多いとなると戦力がかなり必要になってくるわけだ」


 だから緊急警報を鳴らしたんだと説明される。


「俺たちが迎撃に出て、討ち漏らした分をみなさんで対処してもらうという作戦はどうでしょうか?」


 討ち漏らさない自信はあるけど、一応上手くいかなかった時のことも考えないと。

 兵士たちはお互いの顔を見て、一番年長の男性が口を開く。


「こっちからそれをお願いできたらいいと思っていたんだ」


「では出撃します」


 願ったりかなったりなので目でルーに合図を送り、さっそく出ようとしたら呼び止められる。


「あ、いや、敵の様子をまずは見たほうがいいんじゃないか」


 兵士たちがちょっと困惑していたが、大丈夫だからと断って俺たちは街の外に出た。


「ビッグボア100頭だけなら、一人でも充分だと考えられますね」


 ルーの意見はもっともだ。

 サラマンダーや火の精霊のほうがずっと手強いんだから。


「ビッグボアは素材のために毛皮と頭部のどちらかは残しておきたいけど、ルーは手加減できるか?」


 今は資金にゆとりはあると言え、素材はできるだけ集める癖をつけておいたほうがいいと思う。


 特にルーは火力過多の傾向があるからね。


「自信はまったくありません」


 ルーは神妙な顔をして首を横にふった。


「跡形もなく焼き尽くすほうなら問題なくできると思いますけど」


「それは困る」


「ですよね」


 苦笑して言うとルーはわかっていたとしょんぼりと肩を落とす。

 そんな彼女の肩を優しく叩いて俺は言った。


「ここは俺に任せてくれ」


 そう言って俺たちは前方を進んでいくと、大きな砂ぼこりが舞い上がっているのが見えてくる。


「どうやら接近してきたようだな」


「ええ」


 一体一体が大きく、すごい勢いで街を目指して走っていて迫力があった。

 

「あれじゃ戦力が整ってない街だとひとたまりもないですね」


 ルーがぽつりと感想を言うが、俺も同意見かな。

 

「その通りだね。早く倒して安心させてあげよう」


 それもまた冒険者の務めだ。


「さあ、凍れ!」


 俺がスキルによって冷気を放つと殺到してきていたビッグボアたちの全身が一気に凍りつく。


「ふう、終わったな」


 大した相手じゃなかったがひとまずこれで安心だ。


「さすが、一瞬ですね」


 ルーのまぶしい笑顔を見ながら俺は踵を返す。

 報告のために街に入ると、わっという歓声が迎える。


「すげえな、あんたら!」


「見てたぜ! 一瞬だった!」


「信じられねえな!」


「あれがS級冒険者の実力なんだな!!」


 笑顔で、あるいは興奮で真っ赤になった人たちに囲まれ、様々な称賛を浴びせられた。


「あんたら名前は!?」


「フランとルー、凍焔という名前のパーティーです」


 びっくりして固まってるルーにかわって俺が答える。


「フランだったな。あんたの異名は【凍神】で決まりじゃないか!?」


「え、はい」


 異名がいきなりつけられて反射的に答えた。

 別にこだわりはないので、あまり変なものじゃなければかまわない。


「【凍神】フラン! いい名前じゃないか!」


「あんなにすごい魔法? スキル? を使えるんだものな!」


「ありがとう、街を救った英雄よ!」


 当事者を置き去りにして盛り上がっている感じは否めないけど、それだけ不安だったんだということだろう。


 助かった喜びが爆発して、俺たちに対する感謝の気持ちがあふれかえっているのかもしれない。


 なんて思いながら俺はS級として初めての仕事をし終えた。

 

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