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パーティー結成とS級認定クエスト

「そうです。よくご存じですね」


 と応じたルーの口調には嫌味はない。


「この圧倒的な存在感見りゃ、普通はピンとくるよ」


 ギルドマスターは冷や汗をダラダラかきながら声を絞り出すように返事する。


「私は合格でしょうか?」


 ルーは落ち着いた様子で彼女に問いかけた。


「ああ。SS級のフェニックスを完全にコントロールしてるなら、充分すぎるさ」


「ベンちゃん、お帰り」


 ギルドマスターの答えを聞いてルーはベンちゃんを帰還させる。


「本来なら今のだけでS級認定してもいいくらいなんだけど……」


 というギルドマスターの歯切れはよくなかった。


「規則的には認定クエストを受けてもらわないと厳しいね」


 どうするか視線でルーに問いかける。


「もちろん受けます」


 彼女は即答した。


「そうかい。融通が利かなくてすまないね」


 ギルドマスターの態度がすっかり変わったのは、彼女の実力を認めたからだろう。


「下に戻ってパーティー結成の手続きをするとしようか。ゼフたちもご苦労だった」


「あ、はい」


 ゼフたちはまだ腰が抜けたまま立ち直れていなかった。


 下の階に降りるとギルドマスターは先ほどの受付嬢を呼び、手続きを指示して奥へと引っ込む。


「パーティー結成とのことですが、名前はお決まりでしょうか?」


 受付嬢が少し緊張した面持ちでたずねた。


「凍焔でお願いします」


 と俺は言ってからルーを見る。


「何か意見はあるか?」


「いえ、凍焔はいい名前だと思います」


 彼女は微笑んで賛成した。

 

「それではあなたに冒険者ライセンスを発行いたしますね」


 と受付嬢がルーにA級とAA級用である銀色のライセンスカードを差し出す。


「あなたはAA級として認定されました。S級認定クエストのためにお持ちください」


 すぐにグレードアップされることになるだろうが、ライセンスを持っていない人間がS級認定クエストを受けられない決まりだから仕方ない。

 

「お名前をうかがってもいいですか?」


「ルーです」


 受付嬢に聞かれてルーは答える。

 名前を告げるよりも先にライセンスが発行されるというのもすごい話だ。


 おそらく今回みたいな展開じゃない限りはありえないだろう。

 

「S級認定クエストについてはギルドマスターからお話があるので、しばらくお待ちください」


 そう言われてルーと二人でうなずいたところ、ギルドマスターが一枚の紙を持って姿を見せる。


「あんたら向きのクエストを何とか見つけたよ」


 そう言って彼女は紙を俺たちに差し出した。


「内容はメタルタートルの鱗甲とりだ」


「メタルタートルか」

 

 金属のように頑丈な甲羅を持った亀モンスターで、その鱗は鋼よりも硬いと言われている。


 強靭な防具を作る際の素材として鱗甲は人気だった。


 攻撃力とスピードはともかく、耐久力が高いのでS級だって一人だと鱗甲とりは簡単じゃないかもしれない。

 

「ここから馬で三日の距離にあるルーメ川に存在が確認されている。まああんたらなら生きて帰ってくるのは難しくないだろう」


 メタルタートルに返り討ちにされるAA級冒険者もいるって話だから、ギルドマスターの発言は脅しじゃないだろう。


「期限は七日だ。それまでに鱗甲を一定量持ち帰らないと失敗扱いになるから気をつけな」


 ギルドマスターの説明が終わったところで俺は質問した。


「メタルタートルを討伐してしまった場合はどうなります?」


 場合によっては体の一部をとってくるだけで、討伐してはいけないという条件が課せられることもある。


 ルーの火力だとメタルタールを殺さないのはけっこう難しいだろうから、今回はどうなっているのかたしかめておきたかった。


「討伐してもいいよ」


 ギルドマスターはそう答えながらにやりと笑う。


「ただしあくまでも成功条件は鱗甲をとってきたらだ。討伐しただけだと失敗だよ」


 つまりルーはうっかりメタルタートルを蒸発させないように注する必要があるということだ。

 

「はい」


 彼女もそれに気づいたようで、真剣な面持ちで首を上下に動かす。

 まあ火力過剰以外に心配する点はないだろう。


 フェニックスならルーメ川までひとっ飛びだしな。

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