お盆の黄昏
実家は旧暦で盂蘭盆会の供養を行うが、この辺りは七月になると、お盆用の花が並ぶ。
殆どの身内が彼岸へ渡っている現在、この季節、思い出したように仏壇に線香を供える。
あれも、丁度今頃。
交差点の向こうに佇む、祖母を見たのは。
銀色の髪を結った、着物姿の祖母。
見た瞬間、この世のものでないことはわかった。
祖母の回忌供養を、終えたばかりだったから。
私と目が合うと、祖母は微笑み手を振った。
すると、私の横をすうっと通り抜け、少女が一人、祖母へ向かって走っていった。
二人は手を取り、夕陽に向かって歩いて行った。
翌年、新盆を迎えた親族のために、私は実家へ戻った。
祖母によく似た伯母と会い、そういえば、と交差点での出来事を話した。
伯母は驚くこともなく、「ああ」と言った。
祖母は、祖父と結婚する前に、ある男性と駆け落ちしたことがあった。
子どもが一人産まれたのだが、その子は小学校に入る前に、亡くなったそうだ。
祖母が駆け落ちして暮らしていたのは、私が現在住んでいる、場所の近くであったという。
連載は終了いたします。
何か思い出したら、今後は短編で書かせていただきます。
お読みくださいました皆様に、厚く御礼申し上げます。