不可思議な出来事は、魂とともに
少しばかり、フェイク込みです。
その二 脱皮
介護のお仕事をしていた時のお話です。
長年、弊社をご利用されていた方の訃報が届き、ケアマネージャーと共に、お通夜に伺いました。
寝たきりの状態でしたが、大きなお屋敷の、一番日当たりの良いお部屋で過ごしていた男性。
九十台という年齢よりも、お若く見えた方でした。
ただ、年齢相応というか、お肌が少し弱く、シーツを交換するときには、はがれた皮膚がパラパラと落ちていました。
ひっそりとしたお通夜の席で、お身内の方、お孫さんでしょうか、こんなことを語っていらっしゃいました。
誰も気づかないうちに、息を引き取られたこと。
腕の皮膚が、少しはがれていたこと。
「それでね、部屋の上の方から、ドーンドーンと音が聞こえたの。気になって屋根と屋根裏を見に行ったのよ」
屋根には何もなかったそうです。
「屋根裏にね、蛇がいたのよ」
「青大将かしら、大きな蛇」
「その蛇が、のたうち回っている音だったのね」
蛇は脱皮の途中だったようで、からだ半分に抜けがらが絡みついていたそうです。
「蛇はそのまま、お外に逃がしたけどね」
夜も更けてきたので、おいとますることにいたしました。
「ありがとう。父が大変お世話になりました」
お孫さんではなく、お嬢さんだった女性がお見送りして下さいました。
その指先の皮膚が少し、はがれていらっしゃいました。