あなたの日常生活にも、いつか不可思議な出来事が
黄昏のバスには誰が乗っているの?
世の中には、説明のつかない現象が、しばしば起こります。
これからお話することは、すべてわたくしが実際に体験した、不可思議な出来事です。
その一 坂の上のバス
ある日の夕方のことです。
私は出先の町で、駅まで行くバスを待っていました。
バス停は、坂道を下ったところにありました。
細い県道の夕暮れ時。それなりに行きかう車もある時間。
ですが、バスを待っている間は、不思議と車は一台も通らなかったのです。
チカチカと坂の上の方に、光が見えました。
坂の頂点に、バスの行先の表示が浮かびます。
私はほっとすると同時に、あれっと思いました。
見えた行先表示の色が、薄い朱色だったからです。
それは最終バスを表す色です。
夕方の六時前に、もう終バスなのか、と。
ともかく、小銭を確認し、バスの到着を待ちました。
待ちましたが……
バスは来ません。
一分たち、二分たち、まてどくらせど、バスは坂を降りて来ませんでした。
夕焼けが消えかかります。
叫ぶような鳴き声で、カラスが飛んで行きます。
その瞬間。
ごおおっと風が吹き、大きなエンジンの音が目の前を通り過ぎました。
音だけでした。
でも、私は見たような気がするのです。
風にあおられ、細めた目の片隅に、うすぼんやりとした灰色の、車体が走っていく後姿を。
そして車体の後ろの窓に、いくつか浮かんでいた、手のような黒い影を。
世の中には、説明のつかない現象が、しばしば起こっているようです。