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雷撃の守護神

   -藤沢市上空-

 「艇長!亜空間モニタ、計測値越えやした!!」

 デスデモーナのソナー要員、ウエィンがヘッドセットを取って振り返る。

 「何が起きた!」

 艇長のディックが声を荒げた。

 「分かりゃしませんよ!ただ、地表にプラズマによるエネルギー反応感知しやした!!」

 「姐さんは!?」

 「連絡なし、ってぇか、反応消失しやした!」

 「んだとぉ!!」

 ディックは奥歯を噛み締め逡巡した。

 ……まさか姐さん。

 ならば、

 「ダン!」

 「へい!」

 砲撃管制のダンが振り返る。

 「対地砲撃準備は!?」

 「出来てやす!」

 「よぉし、プックに連絡!連携して対地砲撃開始!!」

 「待ってくださいよ!姐さんは……」

 「ぐだぐた言わずに掛かれ!!」


   -西富公園-

 「京子、京子!!」

 未だ砂塵の渦巻く中、雷は地に倒れる京子に駆け寄った。

 「くそっ!だから離れるなって……」

 抱き抱えると、

 「う……痛ぁい……」

 「京子?」

 京子は顔をしかめて起き上がる。

 「最低……。あいつ、思いっ切り背中蹴飛ばしたでしょ」

 「いや……銃で撃たれたんだけど……」

 雷はふと思いだす。

 「え、嘘でしょ」

 京子の羽織る、雷の制服。耐光、弾、刃仕様の特別製だ。

 「はっは、忘れてたぜ」

 安堵からか、取り乱した自分がやけに恥ずかしい。

 「ところで雷、今のって……」

 見渡すと、周囲が雷撃によって黒焦げだ。ルーテシアの陰もない。

 「あぁ、フェストの王族と、ゲィツに伝承される、古の魔術」

 故に連合国より恐れられ、迫害の道へ……。

 「焦ってやりすぎたぜ。オーバーヒートしちまった」

 「あ……」

 雷の右脚。踝付近がスパークしていた。

 「それ……」

 「気にするな。3年前に切断されて、義足になってる」

 「ちょっと、義足ってどぉいうことよ!」

 すると、京子の羽織る雷の制服のポケットより警告音が。

 「ちょっとかせ」

 京子は急いで携帯端末を雷に渡す。

 「……やべ」

 雷は上空を振り仰ぐ。

2機の強襲揚陸艇だ。

 「どうしたのよ」

 「エネルギー反応が増大してる。撃ってくる気だ!」

 「はい!?」

 「動くなよ!」

 雷は地面に円を描き、手を組んだ。

 「その名はイージス!我を守れ!!」

 円が発光。その中で京子の上に被さった。

 すると、上空に幾多もの光球が発生。轟音が光の柱と共に落下した。

 「きゃぁぁぁぁ!!」

 自分の発する悲鳴さえも聞こえない。

 『早く来て!』

 激震する中で、京子の頭に声が貫いた。

 「動ける訳ないでしょぉぉ!!」

 と、不意に静寂が訪れた。

 上に被さる雷の鼓動がやけに大きく耳に付く。

 「……シールド、保ったか?」

 雷が恐る恐る頭を上げる。

 「派手にまぁ……」

 もう、この場が公園なのか荒野なのか分からない。

 その砂煙の中、薄ぼんやりと青白い光が近寄った。

 「やってくれたわね、ライツくん」

 ルーテシアの声だ。光の球に守られ歩み寄る。

 「雷撃の守護神。故に閃光のライツ……だったわね」

 雷は塵を払って起立した。

 「ライト・シールドまで持っているとはなぁ。金遣い荒くないか?」

 「羨ましいなら、うちにいらっしゃいな」

 ルーテシアはシールドを解除して髪を掻き上げた。

 「勧誘しつこいと告発出来るんだぜ」

 しかし、ルーテシアは余裕の笑みだ。

 「ここから連絡して、もう少し出力上げて斉射しましょうか?魔法の盾は、今ので限界でなくて?」

 図星だ。

 「雷、あたしなぁんかあの人イヤ」

 ルーテシアのこめかみがヒクリと動く。

 「と……言っても、そろそろ俺にも打つ手なし」

 『だめ、ここに来て!』

 再び京子の脳裏を声が貫いた。

 「だれ?」

 「10数えるわ。その内に、投降か死を選びなさい」

 雷は大きく息を吐く。

 ……機会を待つか。

 「よし分かった」

 雷が手を挙げた、その時だ、

 『伏せんかバカ息子!京子も頭抱えてろ!!』

 英の声。雷の携帯端末からだ。

 雷は咄嗟に京子を突き飛ばし、自らも地に伏せた。

 すると、上空を圧していた揚陸艇を黒い影が横切り、鉄板のような爆圧が周囲に轟いた。

 「今度はなんなのよ!」

 「教えて!もう何言われても驚かないから!!」

 土で煙る中、袖で口許押さえた京子が、上になって庇う雷に詰問した。

 「フェーベ。エステールの第1シャトル。親父が乗ってる!」

 「だったらあのトンチキ親父に言って!あたしを巻き込むなって!!」

 「第二波来る」

 「……ぶっ」

 地面に顔を押しつけられた京子の耳朶を強く打つ爆音が上空より落下した。

 「こ……殺す気?」

 「逃げるぞ、今の内だ!」

 「……どこに!?」

 「どこだっていい!」

 『ここ、ここに来て、早く!』

 「何?どこなの!?」

 「京子?」

 雷は京子を怪訝な目で見詰めた。

 「聞こえるの。さっきから妙な声が」

 『足下、グランドだった所です』

 「うん、分かった。この際だから、あなたに懸ける!」

 覚悟を決めた京子は展望台に足を向けた。と……、

 「お待ちなさい!」

 「いやぁぁっ、雷ぁ!」

 雷が振り返ると、ルーテシアが京子の腕を掴んでいた。

 「あんたも諦め悪いな!」

 雷の手が一閃。ルーテシアの体がふわりと舞い、背中より地面に叩き付けられた。

 「くっ!」

 「悪く思うなよ。来い、京子!」

 京子の手を引き、今やむき出しとなった断崖へ駆け出した。

 「で、どうする気だ!?」

 「あの白いドームがあたしを呼んでるの!」

 「翔龍姫が!?」

 「何でもいいよ。とにかく……行く!」

 言うが早いか、今度は京子が雷の手を取り10m下方の白い物体に向け、断崖より飛び出していた。


 「うわぁぁぁぁぁぁっ!」

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