鉄腕海賊団
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-小惑星帯ヴェスタ-
「お頭!反応出やした!!」
探査要員のカロスが濁声を上げた。
直後昼寝にいそしむクルーが頭を上げる。
「でかしたカロス!」
連邦軍払い下げの巡洋艦ガーヘルト。海賊ロバート・クック率いる鉄腕海賊団である。
艦長にして頭目の、通称鉄腕クックは、コンソールに投げ出していた足を振り降ろし、マントを払って颯爽と立ち上がる。
「場所は!?」
「第三惑星の北半球っす!」
「動力炉の反応は!?」
「ネガティブ!動力源、推進機関共にファイルなし!!」
クックは曖昧な返答に苛立ち、左腕の精巧な義手で金属的な音を立てた。
「結論は!?」
「全長推定52m。奴ですぜ!」
ブリッジ総勢6名の当直クルーが一斉にクックを振り向いた。
「やっぱりあそこに居やがったか……。ジョーカーのエステールをつけて正解だったな。ウォードン!」
「へい!」
航宙士が振り向いた。
「距離!」
「19,21天文単位(AU)っす!」
「跳べるか!?」
「こいつじゃ無理っす。質量がありすぎて惑星と干渉しちまいます。最大戦速でも3日っすね」
クックが舌を打つ。
「土着民の幼稚な衛星潰して衛星軌道離れたのが痛ぇな。ゲン!」
「へい!」
操舵手だ。
「てめぇ、今日はメシ抜き」
「あ、お頭そりゃひでぇっすよ!」
「やかましい!てめぇが当てなきゃ動かずに済んだんだろぉが!」
「悪いの俺だけかよ……」
「お頭……」
砲撃管制のガリーが割り入った。
「様子見やすか?」
「アホぉ!んなことやってっと、オリオン腕中の同業者が集まっちまう。それに、当然ジョーカーも気付いているだろうぜ……」
するとその時、ブリッジのハッチがスライドした。
「クック、何やってんだい!」
「ルー!」
ブロンドのストレートロング。切れ長な目元涼やかな女性が入室した。
ガーヘルトのNo.2、鷹の目ルーテシアだ。
「おい、ここは女の来る場所じゃねぇぜ」
しかしルーテシアはクック尻をつねり上げた。
「いでででっ!何しやがる!!」
「グズ!ウォードン、シャトルならどうなの!?」
あ……とばかりに計測。
「シャトルならワンジャンプ、行けまっせ!」
クックとルーテシアが視線を交わした。
「ルー、頼めるか?」
ルーテシアはクックに艶やかな笑みを送る。
「野暮なこと訊かないでよ」
「おっしゃ、プック、クレシダ、テスデモーナを預けた。軌道は無視しろ。うまく直で大気圏に放り込め。しくじって素粒子分解されんなよ。クレシダの野郎共は降下、デスデモーナとプックは上空より地上制圧。……かかれ!!」
クルーの返事と共に、40000トン級巡洋艦ガーヘルトのブリッジは騒然た沸き立ち始めた。