約束の花嫁
幸せの日々があっという間に過ぎ
隆と夏帆が再開してから1年が過ぎたある日
隆は書き物をしていた
何かの応募の様だ
「何してるの?隆さん♪」
「ううん 何でもないよ」
「夏帆ちゃん 今日ディナー行こっか」
「うん やった!」
隆と夏帆はディナーへ行った
高層ビルの屋上の料理店
それも超が付くほど
高級で有名な料理店
お金持ちの隆と付き合っていた夏帆は
慣れたせいか別に何も思わなかったが
隆の様子が変だ
「隆さんどうしたの?もぞもぞして」
「べ、別になんでもないよ」
「何か隠してますね〜」
隠し事に気付かれた隆
「た、食べ終わったし お会計するね」
ほっぺたをぷくっと膨らませて
怒る夏帆
会計を済ませて
ビルからの綺麗な眺めを堪能する隆
怒ったままの夏帆が隆の横にきて
景色を見ていた
「ねぇ 夏帆ちゃん」
「ん何?」
機嫌の悪い夏帆の目の前にいき
ポケットから小さな箱を両手で差し出した
箱を開ける隆
箱の中には指輪が入っていた
「こんな僕ですが…僕と結婚して下さい」
夏帆はびっくりした
不器用な隆が意表を突いて
告白してきたからだ
しかし心から嬉しかった夏帆は
泣いて喜んだ
「はい こちらこそ宜しくお願いします」
パチパチッ
周りにいた人達から拍手が送られた
その帰り道
手を繋ぐ2人
夏帆はこれ以上にない幸せを感じていた
隆の、絵描きの大きな温かい手を握って
「ねぇ 夏帆ちゃん 明日 一緒に婚姻届を貰いに行こっか」
「うん」
隆に寄り添う夏帆
二人は家へ帰って行った
そして次の日
手を繋ぎながら婚姻届を取りに行く二人
夏帆はうきうきしながら隆を引っ張る様に歩いた
「歩くの早いよ夏帆ちゃん」
「隆さん!結婚するんだし
夏帆ちゃんじゃなくて
か・ほ って呼んで」
「う、か 夏帆」
「それでよろしぃ」
相変わらず尻に敷かれる隆
そんな二人を後ろからずっと付いてくる一人の男
途中、隆はその事に気付いた
「夏帆!走るよ」
「えっ、どうしたんですか?運動嫌いな隆さんが」
「いいから!」
逃げる様に走る二人
しかしその男性も走って追いかけてきた
夏帆もその男性に気付いた
「えっ!」
「まだ追いかけてくる!人混みがありそうな方へ逃げよう!」
「うん!」
しかし逃げた先にも人は居ない
そして男に追いつかれる二人
「えっ!」
夏帆はその男に見覚えがある
「久しぶりだな」
「お…父さん?」
なんとその男性は夏帆の父親だった
「お前を探していた…」
「えっ?」
男はそう言いながら近づいてくる
「夏帆ちゃん!」
隆は夏帆の前に立ち、盾になった
「お前だよ!お前!」
父親は夏帆でなく隆に用があるみたいだ
ポケットからナイフを出してきた
「えっ」
「お前のせいで俺の人生が終わったんだ
お前のせいで!」
男はナイフを突き立てて向かってきた
隆は自分が狙われていたが
大の字になり、夏帆を庇った
男は隆の腹部にナイフを刺し、逃亡した
隆は腹部から血を流し倒れ込んだ
「隆さん!!」
夏帆が隆へ駆け寄るが隆は多量の血を流し
瀕死の状態だった
「きゅ、救急車を…」
手を震わせながら携帯で電話しようとする夏帆
隆はそんな夏帆の手を血だらけになりながらも握り、ニコッと笑った
そして血だらけの手で夏帆の頰に手を置き
そしてそのまま息を引き取った
数日後
犯人の父親は殺人罪で逮捕された
隆は有名な画家だった為
新聞やニュースで大きく報道された
「あいつののせいで俺の人生はめちゃくちゃになったんだ、死んで当たり前だ」
と供述する犯人
どうやら昔の事の逆恨みだった様だ
夏帆は隆の葬式に来ていた
夏帆は悲しすぎて無表情で座っていた
そんな夏帆の元へ一人の女性が来た
「夏帆さん…ですね」
そう言い夏帆の横に座る
「隆から聞いてましたよ、絵を描く事しか出来ないこんな俺に心から愛せる人が出来たんだ、出会えたんだ 母さん…って」
それを聞き夏帆は顔を上げて隆の写真を見つめた
「隆が死んだのは貴方のせいじゃない、
だから貴方はこれから新しい人生を歩んで下さい。隆も…そう望んでるはずです。」
泣きながら そう言い立ち去った母親だった
「隆さん…どうして…」
夏帆は大泣きし、ずっとその場に居た
親族や友人達が帰った後もずっと…
その数日後
新聞に大きく書かれていた
◯◯賞入社
宮下 隆
題名
「約束の花嫁」
1人の若い、美しい女性のヌード画が入賞していた