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幼馴染は聖女らしい。  作者: PARO
蛇足の章 不死人達の備忘録
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詠神の備忘録① 兄さんの友人

ヨミとバール編。龍との戦いです。 ここも描写なかったんでね。ここで追加しときますー。

「…ふぅ」


生前退位を終えた私は、この世界での思い出を記すべく、備忘録を書くことにしました。

あまり過去を引きずるのも良くないとは思いますが、大切な人との思い出を、いつまでも忘れたくないから。こうやって文章に遺すのも、悪くないかなと思います。


さて。この備忘録は普通の形ではなくて、私の大切な人について、その人との思い出をまとめたものにしようと思います。まず一人目は兄さん、クラムハルト=ノベル=ユークリウス=ヴァルクラウド。…ではなく、その友人、バール君についてです。何故かって?読んでいればいずれ、わかることでしょう。恥ずかしいのであまり書きたくありません。察してください。




思えば、龍と人の決戦という一大事が、私達の出会いでした。運命的と言えば、そうなりますねーー。




「お義母さん、これは一人じゃ無理だよ…!」


とにかく手数が多い龍でした。

翼から放たれる無数の光剣。口から空中へ打ち上げ、雨の様に降ってくる光弾。一個一個を撃ち落とさないと帝都への被害が甚大なものになるので、慎重にならざるを得ませんでした。勿論、攻撃なんて出来ません。

そんな中、その状況を打破してくれたのがーー


「皇女サマ、大丈夫か?」


魔法銃で相手の攻撃を悉く相殺した少年、バールでした。


「え、えぇ。…あなたは?」

「皇子サマの友人ですよ。義妹を助けろと言われましてね」


後から聞くと、そんなことは言ってなかったそうです。助けに行く言い訳が欲しかっただけ。


「兄さんの?」

「はい。…おっと、敵さんはまだ元気だ。俺が止めますんで、皇女サマは攻撃を」

「は、はい」


こっちの体裁までしっかり考えてくれた様で、攻撃は私に任せてくれたのですが…


「はあっ!」


何万回と切りつけても、ビクともしません。次元断裂も効きませんでした。…となると、


「すみません、私では力不足です」

「うーん、意外と固いな…。わかりました。では攻守交替で」


そう言って彼は、当時は試作品だったという飛行用の魔法靴を使って、空へ飛び上がって行きました。空に逃げた龍を追うためです。


しばらくして、龍が落ちてきました。私は空間転移で落下位置を平原に移動し、私と彼も同時にこちらへ飛ばしました。


「取り敢えず翼は封じたかな。後は仕留めるだけだ」


私ではビクともしなかった龍の硬い鱗を、彼は容易く切り裂いたのでしょうか。


「…どうやって、傷を与えたのですか」

「『折った』んですよ」


…折った?と私は首を傾げました。


「翼なんて脆いですからね。魔法銃の出力を上げれば折ることくらいならできます。龍は魔法で飛行するそうですが、それは翼があって初めて機能するものですから」


どうやら、銃で撃ち落としたと、この人は言いたい様です。それにしては翼が随分と抉れてますが。


「翼を折る時に手間なんで、極小太陽弾を使って手っ取り早く破壊させてもらいました。…一瞬、空が明るくなったでしょう?」

「…たしかに」


話をしながら、彼は龍と相対しています。私は結界を張って、龍をこの平原から出さない様にしていますが、実際のところそれしか出来ていません。


光の剣も弾も。悉く撃ち落とし、近接攻撃はギリギリで回避してから反撃。極小太陽弾と言われたそれはたしかに強力で、硬いはずの龍の鱗など物ともせず、だんだんとダメージを蓄積させて行きます。


「チッ、翼が復活しそうだ。…すみません皇女サマ、ちょっとこいつの注意を引いておいてください!」

「は、はい!」


そう言って、彼の姿が消えました。気配を隠す魔法か何かを使ったのでしょう。龍の攻撃対象が私に変わります。活躍したかったこともあり、喜んで引き受けさせてもらいました。


「はああっ!」


切るのではなく、殴る、押しつぶすなどの攻撃を使います。剣ではなく、籠手で。どうやら頭への打撃は効くようで、注意を逸らしながら、ダメージを負わせられて行きます。


龍の翼が回復し、空へもう一度舞い上がろうとしたその時。


「何度でも落ちてもらうぞーー!」


太陽が何個も同時に炸裂し、両翼を完全に吹き飛ばしました。


「キャァァァァァ…」


龍が悲鳴をあげ落ちて行きます。バール君も戻ってきて、正面に構えます。


「そろそろかな」


何がですか、と聞こうとしたところで、龍の切り札が切られました。…そう、息吹です。光が龍の全体から満ち溢れ、それが全て口元に集まって行きます。


「あぁ、皇女サマ、これはお任せください。あっちの威力型かかれば高いほどいいんで、このままほっといてくださいね」

「…え?」

「そういうカラクリなんですよ。この『フェンリル』は」


そう言って、彼の銃が大剣に変形します。


「リアクター、オーバーリミット」


素人が見てもわかるほど、異常なまでに大剣の中で魔力が循環し始めます。


「キュァァァァァァァァ!」

「コード『フェンリル』、『ラグナロクバースト』!」



そして、龍の息吹と、体験から放たれた光線が激突します。…ですが、威力の差は歴然です。


なのに、バール君は笑っていました。


「喰らえ、『フェンリル』…!」


その時、目を疑う様なことが起きました。

最初は1:9だった威力が次第に2:8、3:7、4:6となり、遂に5:5、拮抗したのです。そして、その拮抗も崩壊し…


紫色の閃光が、広大な平原を照らし上げます。

後に残ったそこにはもう、龍の姿などありませんでした。全身全霊をかけて放った最大の一撃をほぼ『倍返し』された様で、実質的に龍は『自爆した』事になります。


「だから駄目なんだよなぁ。鬱陶しいからって必殺技ブッパしちゃあ。…こうなっちまうから」


しみじみとつぶやいている少年に、私は話しかけました。


「…凄いですね。あの龍をほぼ一撃で」

「あれはただの自爆ですよ。あっちがあそこまで威力を出してくれなければ、一撃で完全に消滅させられるなんてことはなかった。あっちがこっちの攻撃に負けない様にと威力を強めて言ったおかげで、こっちも威力がどんどん上昇していっただけです」

「…それでも、私には出来ませんでした」

「人には人のやるべきことがある。得意な事がある。それを活かせるか否かは自分次第です。俺の魔法特性『超克』は、『ラグナロクバースト』の技術的問題である「一定以上の威力を出すと剣が壊れる」と言う物を解決するのにちょうど良かったんですよ。『限界を超えて何かが出来る』ってね」

「…自分の、得意な事」

「あぁ、そうです」


そう言って、彼はこっちに向かって言いました。


「引きつけて頂いたり、周辺被害を防いで頂いたり、威力を収束させて頂いたりして、どうもありがとうございました」


…もう二度と忘れられない、満面の笑顔と共に。

そう言えば、『自分より強い相手以外とは結婚しない』と言い始めたのは、この直後からでしたね…。



バール君カッコ良すぎて草。

イラストに起こしたら絶対イケメンだぞ(イラスト描けないけど)

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