エルセレシアの備忘録③ バールとヨミ
バールとヨミ編、そして少量のイチャつき要素。500年たってるのによくやるよこいつら。
…では。
「そう言えば、バールは帝国から『英雄』と称えられていたな」
「なんたって、大陸の危機を時期皇帝とともに救った英雄だからね。しかも、国民の目の前で」
「ヨミが主力じゃなかったのか?」
「ヨミちゃんは専ら、被害を無くす方に専念していたわね。バール君に力を渡したみたいだけど、実質彼一人で竜を倒したものだもの」
「あぁ、あの『刀』とか言う武器でか。あれは斬撃の速度が異常なまでに早くなるが、俺にはあまり使いこなせなかったな」
「そうそう。魔法銃と刀の二刀流で竜を狩る姿は、多くの民衆の心を鷲掴みにした様よ。お陰で彼のいた傭兵団は新入希望が殺到して、人事部が過労でぶっ倒れたみたいね」
「そこまで人気が出るとはな…」
「平民からの出世というのもあって、民衆の支持が凄かったのよ」
「いい女がいないとか言っておいて、人の妹と早々にくっつきやがったがな、あいつ」
「元々ヨミちゃんは『私を倒せる男以外とは結婚しない』と宣言していたからね」
「そこで颯爽と現れたあいつが決闘でヨミを下して『じゃぁ、俺とならいいのかな?』と言いやがった。あれほどキザな奴だったとは」
「みんなが祝福していたし、相性も良かったからいいじゃない。元々バール君は平民の出でありながら異常なほどの才能を持ち合わせていたから。私たちの様に魔法の才能ではなく、戦闘の才能をね」
「たしかに、決闘では殆ど、奴には勝てなかったな」
「最後にはヘイロウさんもホナミさんも抜いてたね。『超克』の魔法特性は伊達ではなかったみたい」
「兄貴分の『死神』は生きるという強い意志で物ともせず、ボスの『無法空間』は逆にバールの独擅場だったからな」
「最後は3人のうち、誰が格闘線に秀でているかの勝負になっていてて笑えたわ。ホナミさんはともかく、二人は魔法使いなのに」
「いや、彼らは兵士だ。兵士に決まった型なんてないからな、あれでいいのだろう」
「そうかしらね?…近接戦闘を鍛えてみても、分からずじまいだわ」
「近接か。…またやるか?エルフレアの杖術をマスターしたんだろう?」
「えぇ。私なりのアレンジも済んでるわ。…さて、やってやろうじゃないの。言っとくけど、負けるつもりはないから」
「それは俺もだ。場所を変えるぞ」
そう言って、庭へ出る。例の花畑を模したものとなっているが、花は踏み潰しても元に戻る優れものである。ここを作った際に、そう言った機能をつけた。
ここはクラムとセレシア、アリシア、そしてアリスが住んでいた館を模してクラムの隔離空間に作り上げた屋敷である。誰からの侵入も受けない、完璧な防護が敷かれている。アリシアは夕食を作っている最中だろう。…そう言えば彼女は、漸くメイドというにふさわしい、女性にしては高めの慎重に成長、もとい調整した様だ。「背が低いとやはり不便」らしい。
「さて、先制させて貰うわよ!」
「どうぞどうぞ」
軽い気持ちで構えていたが、舐めてるとこうなる。ということがよくわかったクラムだった。首元に魔力刃が迫っている。
「反応出来てないけど?」
「…速過ぎだろう」
なんだか様になってるなぁとほんわかしていた隙をつかれた様だ。セレシアとしてはクラムの戦う姿などいくらでもみたので、見惚れないための対策は完璧である。…要は経験不足だ。
「あら、もしかして見惚れちゃった?」
「…そんな所だ」
「あらあら。500越えるのに元気ねー」
「不老不死に年は関係ないだろう」
「精神年齢よ」
「…」
そう言われると、どうしようもない。セレシアこそ低いと思われがちだが、彼女は陽気であると同時に、常に策を見て動いていたりもしている。100歳を超え隠居し、暇を持て余した彼女は3人の魔女に師事し彼女らの技術をほぼ全て、奪うことに成功した様だ。・それにはおよそ、150年ほどかかっていたが。
とは言え、負けは負けだ。この夫婦には、勝負に負けた方が言う言葉がある。
「ーー愛しているよ、セレシア。これからもずっと、永遠に」
「ーーえぇ、私もよ、クラム。たとえ何度だって、
私は愛を囁くわ」
若いカップルが言う歯の浮いた言葉であるが、彼らはこれを500年以上にわたり続けている。…まさに『永遠』なのだ。言葉の重みが違う。
そうやってまた、花畑で影が重なった。
花々は又かと呆れつつも、彼らを祝福する様に咲き誇るのだったーー。
バールとヨミ編。今度また書きますけど、この二人のラブコメはクラムのそれより面白いと思っていますよ。この次に書くのでお楽しみに。




