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幼馴染は聖女らしい。  作者: PARO
第1部 幼馴染は聖女らしい。
7/77

6話 鬱陶しい。

「--次は闘技場だ。生徒同士の決闘や実戦形式の訓練などで使う」


 担任のジャック先生が、クラム達新入生に向け学園内の設備を紹介していた。

 丁度闘技場に来た頃、ある生徒が先生に向かって請願した。


「早速使わせていただいていいですか、ここ。ヤツと決闘がしたい」

「…ヤツとは?」

「私のことでしょう。先日、机の下に『果たし状』のようなものが」


 グレイスに向けて放たれたジャックの質問に、クラムが答える。

 

「まぁ、いいが。受けるのか、この勝負」

「そうですね。逃げたといわれるのも嫌なので、ここで一度手合わせしておきたいなと」

「ほう、随分と余裕そうじゃないか。まぁ、数分後にはなくなっているだろうが」


 グレイスは自分の実力に、かなりの自信を持っているようだ。それに恐らく、クラムの実技を見ていなかったのだろう。相手の実力も把握できていないに違いない。


「では、早速だ。ほかの先生なら止めるだろうが、生憎私は好戦的な性格でね…両者、開始戦に移動してくれ」

 

 クラムとグレイスが、闘技場の中央へ移動し、いくらかの距離をとって、向かい合う。


「じゃぁ、始め」


 その一言で戦いは始まる。


「行くぞ! 焼き尽くせ――『黒炎槍』!!」

 先に仕掛けたのはグレイスだ。十数本の黒い炎の槍を一度に作り出し、目にもとまらぬ速度でクラムへと打ち出す。

 対しクラムと言えば、開始線から全く動いていない。真っ直ぐ相手の攻撃を見据え、


「詠唱、か」


 何かつぶやいたかと思えば、炎の槍が全て爆ぜて、かき消されていた。


「なっ――」

「これで終わらせるのもな。もう少し強い魔法はないのか」

「クソっ、舐めやがって!」


 グレイスが火球を生み出し、空へ打ち上げる。

「灰になって消えろ――『黒流星』!!」

 その火球は空中で爆散し、無数の流星となってクラムに襲い掛かった。だがそれに対してもクラムは何ら動くことはなく、


「隙が大きい」

グレイスに火球を見舞い、自身は炎の防壁で無傷。実力の差を見せつけた。


(あいつに会ったからだろうか?如何も力を誇示したくなっている)


 余りにも調子に乗りすぎな自分を、冷静になったクラムの頭が分析した。第一、戦場で突っ立っている馬鹿はいないだろう。


「お前相手にこれを使わされるとは…!」


 その一瞬の思考が、取り返しのつかない事態を招いた。

 たった一発でボロボロになったグレイスが作り出し、クラムの頭上に降臨した太陽。それが真っ直ぐに、彼に向かって落ちてくる。


(まずいな、これでは、戦場で友軍を守れない)


 どうやらまだ調子に乗っているクラムが、素っ頓狂なことを考え始めた。そのまま陽は堕ち、滅びの刻が到来する。

 

(いや、これなら)

 

 何やら思いついたようだ。クラムはこの戦いの中初めて手を伸ばし、銃のような形に構える。


「堕ちろ――『黒炎星』!!」

「『放射』、『包囲』」


グレイスの渾身の一撃を、か細い螺旋の炎が迎え撃つ。


「ハッ、そんなもので防げるわけが」

「――『収束』、『消滅』」


 その炎は、黒き星を膜のように囲い。

 次第に収束し、かの星を鎮め、ついには消え失せた。


「ふぅ…」

「甘い!」


だが、それだけでは終わらない。隙を見たのか、グレイスが黒い炎で剣を象どり、クラムに切りかかる。

しかし――


「ここらで終わりか」

「ク、ソ…」


 投げ倒され地面に打ち付けられたグレイスの首元に、炎の剣が添えられる。


「勝負あったな。――勝者、クラム」


 先生の審判が出るまで、グレイスは決して、負けを認めなかった。



 

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