58話 閑話 エルフレアとカーロン
1話だけなので章は変えない。
「やっぱり拒んだぞ、パーシヴァル」
「そうか。予想はしていたことだが」
予定通りの回答に、パーシヴァルは苦心する。
「我が国の慣習が、こうも事態をややこしくするとはな…」
「仕方があるまい。今まではこんな例など無かったのだから。さて、私からの説得は失敗だ。恐らく君でも無理。…となると」
「彼女たちに任せるしかあるまい。流石のクラム君も、鬱陶しいからといってアリスに危害は加えないだろう」
「多分、嫌いではないと思うんだよなぁ。あとは奴が心の中の拘りに、どう折り合いをつけるかだ」
「事態が好転することを願おう。…近々例の件の公表を行い、クラム君を呼び戻すことにする」
「奥方には話をつけたのか?」
「思い切り呆れられたがな」
「なら良し。後は、世間がどう出るかだが」
「既に噂話は流している。かなり受け入れられているようだ」
「たしかに、両方の顔を知る人間なら疑って当然だからな。なら上手くいきそうか」
「あぁ。恐らく」
「私もそうなることを願おう。…さて」
「どこへ行くというのだ?」
「弟子の元へ。数年振りだがね」
「あら、師匠ではありませんか」
「あぁ、久しぶりだな」
「如何なさいました?」
「お前の弟子に負けた」
「…クラム君も、ずいぶん成長したようですね」
「まぁな。恒星の墜落を無傷で耐えるときた。まるでお前と戦っているようだったよ」
「彼と僕は、どこか戦闘スタイルが似ていますからね。師匠が苦手なのも致し方ありませんよ」
「如何にもなぁ。お前らの戦い方って、対策のしようがないんだよ」
場所は移って、ヴィンテック村。
「あ、学園長。お久しぶりです」
「おお、モニカ君か。いい加減こいつはゲット出来たのか?」
「いえいえ、そんな」
「何ですか師匠。私を捕まえて何をする気ですか」
「あのなぁ、お前もそろそろ腹を括ったらどうだ?モニカ君と付き合って早10年だろう。全く、師弟揃って頑固なのだから、こっちは困ったものだよ」
「私の件に関してはコメントを控えさせていただきますが、クラム君もですか?」
「あぁ。聖女と結婚するのはいいが、併せて王女と結婚するのは嫌だと」
「昔の私ですね」
「今もだろう!年に一度は相談に来られるぞ!」
「ちょっと学園長!言わないで下さいよ!」
「相談、ねぇ…。モニカちゃん、時々際どい服を着たり、献身的になったり、乱暴になったりするのは、僕を籠絡するためであったのだね」
「い、いや、その…」
「別にそんなことをしなくても、モニカちゃんはそのままで十分良いよ。ありのままが一番だ」
「…そう、ですか」
「全く、お前という奴は…」
「ただまぁ、モニカちゃんは美人だからね。できれば私のような死に損ないではなく、他の人を選んで欲しいんだけど」
「…いえ、結構です」
「…これなんだよねぇ」
「もう普通に貰っていいだろう…。別に競争相手がいるわけでもないんだから」
カーロンの相変わらずな頑固さに、エルフレアが呆れる。モニカと言えば、愛くるしい目でカーロンを見つめている。こうなるとカーロンは答えに困るのだ。
彼にはもう、クラムのように進み続ける理由がない。しかし、セレシアを裏切ることも出来ない。…どうしたものかなぁと、彼はいつも悩み、
「また王都に行こうか。これで勘弁してくれないかな?」
「…まぁ、仕方ありませんね」
「おいお前、頻繁に来てたのか⁉︎」
こういう答えを変えすのだった。モニカとしても彼と一緒に街を歩けるならばそれでよく、この提案はいつも快諾している。
「それで師匠、御用件は?」
「あぁ。久しぶりに修行をしようかなと思って」
「…はぁ。準備しますので、お待ち下さい」
今日は休日。生徒たちは学校に来ていない。
例の結界が崩壊寸前になるまで、数分も掛からなかったという。




