50話 フローラ編③ 立ち直りました。
フローラ編が終わったと言ったな。あれは嘘だ。
前回で終わりだとなんかしっくりこないから追加しました。ではどうぞ。
「聞きましたよフローラさん!婚約が決まったそうですね!」
「えぇ。失恋の直後にそれか、とも思いますが、いい機会だと思います」
「…素直に負けを認めちゃうんだ」
「そうですね。流石に王女様に出ばられては、どうしようもありませんもの。父もそれを知って、このような事をしたのでしょう」
ボソッとアリスが呟いた一言に、フローラがしっかりと反応する。
敗北を認めたというか、今近くに居ない人など関係ないと、心から思っているフローラ。一体彼女に何が起こったというのか。
「まぁそうかもね。じゃぁ蒸し返したりは」
「致しませんので、ご安心を」
「…そう。ライバルが減って助かるよー」
何故か煽っているアリスだが、フローラは何のダメージも負っていない。そして、
「会長、この仕事終わりました」
「おぉ、早いねぇ。お疲れー」
「まだ沢山ありますので、他の仕事に移らせていただきます」
「うん、頑張ってー」
雰囲気が普通に戻る。…『一見』普通に。
(まぁ、そこを言われてはどうしようもないですね。私の弱みの一つです。…会長は今度必ず、徹底的に料理して差し上げましょう)
(あれ?負けないぞ宣言とかしないんだ。意外だな。まぁ、邪魔者が減ったから良しとするか!)
「 全然良くないですよ会長」と、クラムならば言いそうである。アリスがフローラの中で死刑宣告を受けている中、
「本当に大丈夫なのですか?昨日はお休みしたそうですが」
「大丈夫ですよモノフィー先輩。先日は失礼致しました」
「いいえ、本当に大丈夫ですよ」
表面上は、今までと変わらない。当たり前だろう。彼女は貴族。外面と内面の隔離くらいは朝飯前だ。
(生理中に媚薬成分でも投与しましょうか。…いや、流石にやり過ぎですね、微量にしときましょう)
などと内面ではえげつない事を考えているが、外面は失恋から立ち直った少女そのものだ。「やり過ぎなら辞めろフローラ」とクラムならば言いそうだが、その言葉は最早、彼女に効果を及ぼさない。
完全に枷を失ったサディストが誕生したことに、婚約者たるグレイス以外は全く気付かなかった。以降腹が痛いだの異常に眠いだのと謎の被害が続出するのだが、それは彼女とは『あまり』関係のない事である。
「では、今日はこれで失礼します」
「気をつけてねー」
「はい、先日刺客に襲われたばかりですので、十分に警戒します」
「…え?襲われたの⁉︎」
「婚約者が守って下さったそうです。私は眠っていたので見ていませんが」
「そ、そう…。気をつけてね」
「はい、では失礼します」
元思い人が帰ってきたら決行しようと思いながら、フローラは帰途についた。
当然と言うべきかグレイスが校門で待っていたが、目はとっくに修復されたので、彼は眼帯をついぞつけることがなかった。
若干ながら恥ずかしいと思ったフローラは、悪口雑言をグレイスにぶつける事で、それを紛らわしたという。
彼女が後日、本当に例の計画を実行したかどうかは、本人しか知らない事である…。
次はグレイス編。ファブニールの試練へレッツゴーです。




