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幼馴染は聖女らしい。  作者: PARO
第N章 閑話集 〜その時、彼らは〜
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48話 フローラ編① 地面が崩壊した様な気持ちです

フローラ編だぜ。失恋してころっと他の男に惚れるのって、有るらしいよねー。(童貞の妄想)

「おい、大丈夫か」

「何ですか、貴方の助けなどいりません」

「馬鹿者、そんな状態で人の助けがいらないわけがあるか。家まで送ってやる」

「いらないと言ったでしょう」

「うるさい!お前のような病人を見捨てては、俺の家の名に傷がつくのだ!大人しく介抱されろ!」


学園を出てすぐ、グレイスと出会いました。どうしてもこの人には、君を付けたくありません。


クラム君と二人きりで居たいのに、いつも邪魔してくるグレイス。はっきり言って要らない。そんなに強くないし。


「貴方の家の事情など関係ありません。目障りですからどいてください。体調が悪化します」

「なっ…」


そう言って歩き出します…いえ、歩き出したつもりでした。

でも実際にはその場で倒れ込んでしまったようで。意識も朦朧として来ました。


「…おい!」

「…クラム君?」

「大丈夫か!声が聞こえるか!」

「うん、聞こえるよ、クラム君…」


大好きなクラム君の声が聞こえたような気がしたので、私はそこで、安心して眠ってしまいました。



「…ここは」

「起きたようだな、フローラ」

「…お父様」


眼が覚めると、私の父であるローグ伯爵が居ました。

自室のベットに寝かされて居たようです。…でも、誰が?


「グレイス殿には感謝せねばならんな。お前を家まで送り届けてくれた」

「…グレイスが?」

「そうだ。『どうやら俺のことが嫌いなようだから、俺の手が触れたこの服は取っ替えて、寝巻きでも着せてやってくれ』と言って居たな。お前が寝るときにネグリジェを着ていると言ったら彼は驚きながら、『なら、体を締め付けない服を』と言って、早々に帰ってしまったよ」


一瞬、思考が停止した。

彼が私を送り届けてくれた。なのに在ろう事か、このクソ親父は私の寝巻きの種類をバラしやがった。


「…そうですか。ネグリジェの話は言わなくてよかったのでは?」

「サービスというものだよ。お前を抱えて両手が塞がりながら、刺客らしき複数の集団を制圧してみせた彼の、ね」

「…なっ」

「狙いはお前だったようだから、地面に置いて戦うこともできない。そもそも女性だからなおさらだ。彼は随分傷だらけだったが、君には微塵も傷がなかった。そのくらいなら報酬としてあげてもいいのでは無いかな?」

「傷だらけとは、どの様な」

「全身の切創は勿論のこと、右眼を失明していたな。言わないでくれとは言われて居たが、隠すことも無いだろうに」

「…そんな」


彼は私のために、そこまでしてくれたのか。

後から気づきましたが、失恋で弱って居た私の心は、この事実でなびいてしまったようです。


「まぁ、な。近く我が家から正式に、グレイス君の家に感謝の意を伝えなくてはならない。後継ぎの片目に釣り合うような、然るべき慰謝料も込めてな」

「…そうですね」

「…嫁にでも行くか?」

「えっ、それは」

「あながち冗談でも無い。君を守るためにそれくらいのことをしてくれたのだ。金ではいくらかけても釣り合わないだろう」

「…そうですね」

「まぁ、お前の婚約相手をそろそろ決めようかと思って居たところだから、丁度いい。今度此方側から申し出てみることにする」

「…はい」


昨日の私なら『気をしっかり持って!』と言いそうですが、今日の私にはそんなことはできません。


言い訳のようですが、心が失恋によりとても弱って居たのです。初恋なのだからなおさらです。


でも、未来の私は、それを後悔などして居ません。むしろ、ここで失恋してよかったと、そう思えるほどでした。


そう思えたのは、10年ほど後になりますが。


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