47話 アリス編③ うーん、君はお呼びじゃないかなぁ
「そう言えば会長、結婚相手が決まったとか」
「あらモノフィーちゃん、情報が早いわねぇ」
いつもの三倍のペースで仕事が進んでいるアリスに、モノフィーが話しかけた。
「どのような方なのですか?」
「弟君だよ」
「…はい?」
「弟君、クラム君なんだよ!あのクソ親父も、たまにはいいことしてくれるじゃない!」
満面の笑みを浮かべて、アリスが叫ぶ。一応『予定』なのだが、妹との協定で彼女の脳内では決定事項となっている。
正妻も側室もない。姉妹揃って結婚式も悪くないかもしれない!と、彼女はウキウキしていたのだが。
「…っ」
それを聞いて一人、手が止まる人間がいた。… そう、クラムのクラスメート、フローラである。
「うん?どうしたのフローラちゃん?」
「いえ、何でもありません」
「顔色が悪いですよ、保健室に行きましょう!」
モノフィーがフローラを保健室に連れて行こうとするが、
「何でもないです、大丈夫ですから」
「でも、体調が」
「大丈夫だと言っているでしょう!」
初めてと言っていいほど、フローラから大きな声が出た。
モノフィーが一歩後ずさる。それをみてアリスは、
「落ち着いてフローラちゃん。上級生に使う言葉じゃないよ」
「…っ、すみません、モノフィー先輩」
「いえ、大丈夫ですよ。ちょっとびっくりしちゃっただけです」
フローラが冷静になる。だが、顔色は晴れない。
「すみません、会長。体調が悪いので、今日はこれで失礼させていただいてよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ。帰って良し!」
「…はい、失礼します」
自分の体調をみて無理しないと言う魔法使いの鉄則を、フローラは身につけていたようだ。退室するフローラを見送り、アリスはさらに仕事のペースを上げる。
「送らなくて大丈夫だったのでしょうか」
「うーん、大丈夫でしょ。原因は私みたいだし?」
「…どう言うことでしょう」
「弟君のことが好きだったんだろうね。フローラちゃん。ここに来た時も『クラム君のため』って言ってたし。…でもね、フローラちゃんには悪いけど、弟君を渡す気は無いんだ。君はお呼びじゃ無いよ、ってね」
「…それは」
「まるで悪女でしょ?私。普段は優しくするけど、恋の話になったらこうなっちゃうみたいなのよねー。まぁ初恋だから、慣れているわけでは無いんだけど」
「そう、なのですか」
「モノフィーちゃんには好きな人とかいないの?」
「えっ、それは」
モノフィーがあからさまに恥ずかしがる。
「居るんだー。まぁ、弟君じゃ無さそうだから追求はしないけど、貴族の恋はこーなる事もあるって、覚えておいた方がいいんじゃ無いかな?」
「…はい」
モノフィーが何とも言えない表情になる。
「さて、仕事仕事。モノフィーちゃん、フローラちゃんの分まで頑張ってね!」
「わ、分かりました…」
その後、モノフィーとアリスだけで8人分の仕事をこなし、疲れ切った彼女らは二人で最近王都にできた『ラーメン屋』なるものに行き、そこの絶品ラーメンに舌鼓を打ったのだが、それはまた別の話である。
アリス編終了です。次はフローラ編。この話に続きます。




