46話 アリス編② 友人は妹で、恋敵だった
「聖女、セレシアさん」
「えぇ、セレシアでございます。国王様に呼ばれましたので、今そちらに向かおうと思っていたのですが」
「…そう。なら、早く言ったら如何かしら?」
「…如何されたのですか?いつもの王女様らしくありませんよ?」
「…っ、ちょっと、如何しようか迷っていて」
「迷える人間を導くのは聖女の役目です。…どうかその話、お聞かせ願えませんか」
初めてアリスは、この慈母のような微笑みを、憎いと思った。
「…成る程。それは、自分の恋を推し進めていいのではないでしょうか」
「聖女である貴方が、そう言われるのですか」
「だって、アリス様は王女様ですから。ご自身を優先して構わないと、私は思いますよ」
「…そうね」
そうだ、私は王女だ。少しくらいのわがままなら、通るくらいの力を持っている。
そう言うと悪い感じがするが、元々彼には迷惑をかけていると自分でも思う。今更だろう。
多分、目の前の友人は自分の異母妹で、そして恋敵だ。しかも相手は両想い。横恋慕は私の方だ。
…でも、決めた。
例え望みが薄くとも、初恋くらい頑張らなきゃ。
「じゃぁ、あなたなら如何するの?もし貴方の恋人が、誰かと結婚しなくてはならなかったら?」
「私の恋人が、ですか」
「そうよ。貴方は聖女だから、ある程度自分のことは捨てて、他人に尽くさなければならないのではないかしら」
「…そうですね」
セレシアが一呼吸を置く。
「そんな事はないでしょうね。いや、他人から強制される事はあるのかもしれませんが、恐らく彼は、何があろうと跳ね除けるはず。例え世界を敵に回してでも。私の想い人は、そう言う人ですから。…あ、この話は一応、内緒でお願いしますね?王女様」
思いつきで聞いてみた結果、初めから心意気がくじけることになってしまった。
当たり前のことなのだろうが、アリスには「誰にも負けることなんてないわ」と、セレシアに言われた気がした。
「 …やってやろうじゃないの」
「…え?」
「貴方の想い人って、クラム君でしょ?」
「…なぜ、それを」
「私は王女よ。それくらい知っていてもおかしくないでしょう。それで、私の想い人も彼なの」
「…そうですか」
「うん、そう。それでね、貴方はどうやら、私の妹らしいのよ」
「…ご冗談を。私は生まれも分からぬ平民でございますよ」
「その分からなかった生まれが、私の父である聖王なのよ、恐らく間違いないわ」
「…私が、王女」
「うん。だから貴方とは、姉妹でもあり、ライバルでもあるってこと」
「…っ」
そうして私も、一呼吸置いて。
「私、負けないから。何が何でもクラム君は私の伴侶にする。その指輪なんて外させてあげるわ」
宣言する。それにセレシアは、
「アストレア様、宜しいでしょうか…?」
何やら、目を閉じて神にお願いをしているようだ。過ぐに彼女の目は開かれ、
「あー。そうなのね、姉さん。確かにクラムはかっこいいから欲しくなるのもわかるけど、私とクラムは既に結ばれてるんだから、それを引き裂いたりするのはやめて欲しいわ。確かに私は聖女だけど、それとこれとは別問題よ」
いきなり、セレシアの人が、否、中身が変わった。
「貴方、その口調は」
「聖女モード解除ってこと。実の姉に畏まってもしょうがないじゃない。…そうね、クラムが貴方を側室に迎えると言うのなら、是非歓迎するわ」
「…正妻の座は譲らないと?」
「譲るも何も、籍を入れてないだけで実質結婚したようなものだもの、私たち。私が聖女だから公表出来ないだけで、任期が終われば同棲するつもりよ」
衝撃の発言だ。指輪は格好付けではなかったと言うらしい。
「聖女の、任期?」
「ババァが聖女やっても仕方ないじゃない?20歳にもなれば私もお役御免よ。そうなったら、盛大に結婚式でもあげようかしら」
「…勝ちを確信しているようね」
「だから。勝つ負けるじゃなくて、もう終わってるのよ。貴方がクラムを自分のものにするのはいいけど、正妻の座は既に埋まっている。クラムは素敵な人だから、側室の一人や二人いてもいいと思うの。だから、側室になりたいと言うなら歓迎するけど、私を差し置いて正妻の座を奪おうとするのなら、容赦はしない」
「…へぇ。今の貴方は聖女だけど、その身分は平民よ。貴方に何ができるのかしら?」
「宗教の力を甘くみないで欲しいわ。聖女から想い人そ奪った悪女と、聖王国中で言いふらされては堪らないのではなくて?」
「くっ…。どうやら貴方、性格まで私に似ているようじゃない?」
「姉妹なんでしょ?当たり前よ。そう言えば、初めて会った時からそんな気はしてたのよね」
「あら、同感だわ。そう言えばそうね」
バチバチと火花が舞うようだ。…が。
「…ふふっ」
「…ふふふっ」
ここまで来て何故か、二人とも笑いが止まらなくなった。なんだかばからしくなって来たからだ。
「あーやめやめ。なんかあほらしくなって来たわ。仲良く行きましょ、姉さん」
「そうね。…ぶっちゃけ、正妻も側室も無いものね」
もしアリスが姉でなかったなら、セレシアはアリスを認めはしなかったかもしれない。
もしセレシアが妹ではなかったなら、アリスは正妻の座に拘ったかもしれない。
「そうよね、私達は姉妹だもの。二人で誘惑でもしたら、クラムはどんな顔をするかしら?見ものだわ」
「あら、いいこと思いつくじゃない。さすがは私の妹ね!」
何やら企み出す二人。時間を忘れて話していた彼女らは、セレシアを探しにやって来たパーシヴァルに、軽く叱られてしまったようだ。
韓国人の方、すみません。どうやら貴方に言った言葉が、嘘になってしまいそうです。
こっちの方が面白そうなんで、失望せずにみてください。両手に花状態はハーレムじゃないですよね!読者の皆様!(洗脳)
あ、アリス編は次で終了です。




