44話 バール編④ 始末するのは俺らしい。
「…と言うわけだ。汚れ仕事だが」
「大丈夫です。クラムのためですから」
「あぁ。話をしっかり聞いてから、感想と銃弾をプレゼントしてこい」
「了解しました」
刺客の話は皇帝に届いたようで、こっちに処理が回されてきた。手を汚したくないのだろう。
また根城に侵入する。とある部屋から声が聞こえた。
「くそっ、刺客が処理された」
「彼の付き人の仕業のようです」
「平民の癖に使用人など侍らせおって…!こうなったら我ら直々に」
「それはまずいのでは?表立って事を荒だてては」
「うるさい!我らの工作が平民に邪魔されるなど、あってはならんのだ!」
「…しかし!」
「奴を狙えるタイミングを探せ!即刻始末する!」
「…おっと、そろそろいいかな?」
忍者のように天井の上から話を聞いていたバールだが、頃合いを見計らい部屋に降り立つ。
「…誰だ、貴様!」
「あんたが始末しようとしてる奴の友人だよ」
「なんだと!」
「話すことはもうないから、消えてもらうよ」
そう言って、魔法銃を二発。携帯できる小型だ。
魔法障壁で防御しようとした相手は、いともたやすくそれを貫通した銃弾に驚愕しながら 、その命を落とした。
死体は炎魔法で灰に帰す。痕跡など残りはしない。
「ふぅ、仕事終わり…と」
殺人に躊躇を感じない。
バールの天性の才能を、ヘイロウは見抜いていた。
「ご苦労だった。ボーナスで女でも侍らせてこい」
「ありがとうございます。…それよりも特訓がしたいですが」
「若いうちくらいだぞ、それ程遊べるのは。上司命令だ」
「…はい、分かりました」
「それにしてもお前」
「何でしょう?」
「殺人に抵抗はないのか?」
「兵士は人を殺す職業だと言ったのはヘイロウさんでしょう」
「そうだ。だがお前は、最初の戦闘から何人も敵を殺し、しかもそれで一切動揺してなかった。…正直な話、お前の先輩にはそんなやつはいなかった」
「何かしら動揺していた、と?」
「吐く奴が半分、引き金が引けない奴が少し、気を失う奴すらいた」
「性格の問題じゃないですか?」
「才能の問題だ。引き金を引いたら人の命が消えるとわかっていて、尚も的当てのように照準を合わせられる精神。新人のうちからそれができるというのは、一つの才能だ」
「チェスの駒が一つ消えたからと言って、泣いたり吐いたりはできませんよ」
「…そうか」
ヘイロウ自身、始めての殺人には少しばかり抵抗があった。狙いが定まらなかったのを覚えている。
バールは、今後どのような兵士に成長するのだろうか…と、ヘイロウは部下の将来に想いを馳せた。
それから程無くして、バールはクラムと再会する。
その時、物語は加速するーー。
バール編終わり。次アリス編。




