43話 バール編③ 隠密任務らしい。
「いいか、わかっていると思うが、絶対に見つかるなよ」
「了解です。…でもなんで、俺がこれを?」
「ボスに全て任せるわけにも行かん。後続の育成も行なわなければ。…比較的簡単な仕事だ。殺しでも誘拐もない、諜報なのだから」
バールは今、帝国の現政権の親聖王国政策に反対し、聖王国との戦争を勃発させようと企む一派の根城に潜入していた。
魔法で姿を隠してはいるが、何が原因で見つかるかなど分かりはしない。最新の注意を払う。
「では、誰を始末するのですか」
「聖王国からやってきた留学生とやらだ。噂によると王国の王子に勝ったらしいが、やつは平民だそうだ。おそらくデマだろう」
「成る程、それなら簡単そうですね」
「あぁ。少なくともこれで、皇帝は聖王国側から訴求を受けることになる。両国の関係は緊張するだろうな」
「第一歩、ですね」
「その後も工作を続ければ、戦争の火蓋は確実切って落とされる。…そうなれば」
「我が帝国が聖王国の領土を手に入れ、大陸全土を支配するエレスハイム大帝国復活に近づく、ですね」
「今夜にも刺客を送り込む。ターゲットは学生、赤子の手をひねるが如く、簡単に始末できるだろう」
「留学生を始末…か」
取り敢えずバールは、その勢力の動向を探ることができたため、サブリーダーの元へ帰ることにした。
「…成る程、唯の空想屋では無いようだな」
「そうみたいですね。留学生の警護は」
「必要ないな」
「…え?」
「聖王国の留学生というのは、君の友人だ」
「…クラムが?」
「あぁ。先程、調べがついた。聖王国で育ち、彼の国の特務部隊の末席に加わりながら、現皇帝と皇妃の間に生まれた、正当な第一皇子」
「あいつ、皇子だったんですか?」
「あぁ、母親が例の魔女に眠らされた時に、息子に危害が及ばぬよう他国に隠したのだろう」
「初耳ですね。…クラムなら、大丈夫そうだ」
「例え寝込みだろうが、殺しても蘇る奴など俺ですら始末できん。刺客は確実に返り討ちに遭い、皇帝には彼ら一派を処分する口実ができる」
「…問題なさそうですね」
「あぁ。元々、銃があるからといって聖王国に勝てるなどと考える方が甘えなのだ。確実に勝てる戦いなど存在しないというのに」
「そうですね。…次はどうします?」
「翌日、また話を聞きにいってこい。お前レベルの侵入に気付かないのなら、次も大丈夫だろう」
「…はい、分かりました」
その日の夜。クラムの元に何やら刺客らしき人物が忍び寄ったらしいが、クラムの元にたどり着くことなく、アリシアに始末されたそうだ。




