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幼馴染は聖女らしい。  作者: PARO
第2部(前編)どうやら俺は王子らしい。
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39話 お世辞は嫌いだ。

遅れて申し訳ない

「まぁ、クラム様は随分と踊りがお上手のようで」

「それほどでもございませんよ。ですが、ナーシャ様に厳しく教えていただきましたので」

「良ければ、今度屋敷にお越しにならない?」

「ありがとうございます。何分平民上がりの身ですが、機会があれば是非」

「今度は、私と頼みますわ」

「はい、私などで良ければ、よろしくお願いします」


次から次へと大忙しのクラム。この会場にいるほぼ全員と話をしたと言っても過言ではない。ついでに、そのうちの同年代の女性とはほぼ全員踊ったという結果である。…といっても、彼は顔に疲労など浮かべはしないが。


舞踏会が終わり、入浴を済ませ、就寝。明日は休日である。何かする事…王城の書庫にでも行こうか?


朝になった。朝食を済ませ、当たり前のように許可をもらい、王城の書庫に入る。流石に禁書庫はダメだったが。

この国の魔術や技術について、少しでも調べようと思った次第である。途中から母親であるアカネもやってきて、二人で読書する事になった。


「16年もしたから、かなり未消化の本が増えているわね…出来れば1週間以内に読み切りたいところだけれど」

「皇妃殿下、それは本当に読んでいらっしゃるのですか?」

「えぇ、勿論よ?流してるわけじゃないもの」


数十冊の本に同時に目を通し、数秒も経たずに全て取り替える。一分間に500冊は優に読んでいるだろう。新しい本はどこからか転送されて来る。


「大分技術も進歩したわね。経済も安定してきた。もう工房にこもる事もしなくて良さそうね」

「母上は技術者だったのですか?」



この質問にアカネは、

「そうね。芸術家でもあり、魔法使いでもあり、技術者でもあり、学者でもあるわ。ダ=ヴィンチと同じよ、『万能』って事」

と答えた。


「…ダ=ヴィンチ?」

「あぁ、そういえば此処の人には通じなかったわね。私が前にいた世界にいた、超がつくほどの天才の事よ」

「…そんな人が」

「彼の活躍は伝聞でしか知らないけど、本当に凄いものばかりだったわ。クラム、あなたはそんな風じゃないの?」

「殿下のような事はできませんよ。あくまで平民、それが運良く力を得ただけです」


これがクラムの自己評価だ。決して間違ってはいないはずだが…


「むー。まぁ、あなたもまだ16歳。年齢が3桁を超えたら、見えて来る世界もあるのよ」

「俺は別に、そんなに長く生きなくてもいいんですけどね…龍によると、死ぬ事は許されないそうで」

「あら、ウロボロスと逢ったの?という事は、一回死んでしまったのね」

「えぇ、まぁ。今そこに控えてるアリシアの所為で」


アリシアは帝国に来てから、クラムの部屋の整備とか、城のメイドに混じって勉強とか、色々やっていた。彼女なりの贖罪なのだろうが、それにしては生き生きとしすぎである。只々やりたいだけなのではないだろうか?


「その節は、誠に申し訳ございませんでした」

「いや、過ぎた事はいい」

「アリシアちゃん?えーと」

「前は『セレシア』と名乗っておりましたが」

「あぁそう!セレシアちゃんね!久しぶりだわ!」

「…何処かでお会い致しましたか?」

「…あれ?そう言われると私も、ピンと来ないわね。でも何故か、何処かであった気が」

「未来視と過去を混同されては困りますよ、殿下」

「そ、そうね。いつもは大体みんな成長するからそれでわかるんだけど、姿形が変わらない人を見ているとすぐこれだわ…」


母親の欠点を、クラムは発見した。どうやら彼女は、容姿が長期間変わらない人と会話すると、初対面なのに久しぶり、と感じてしまうようだ。


「読書に戻りましょう、殿下。まだ残っているのでしょう?」

「えぇ、そうね。気合い入れて読まなくちゃ!」


結局その日、アカネはクラムの何千倍もの本を読み、満足した顔で書庫を後にしたのだった。



その日の夜。とある2人の王が、どこかで密談していたなどとは、クラムは知る由もなかった。






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