35話 絶好のチャンスだ。
サブタイトルにのび◯ザのネタを入れて見ました。あぁ、大物ユー◯ューバーの話は無しで。
「待っていたよ、クラム君」
「わざわざありがとうございます、皇帝陛下」
「いやいや、そんなに畏まらなくてもいいよ。何たって君は」
「その話は、出来れば静かなところでしたいですね」
帝国の首都 エルセレシアに着いたはいいが、この皇帝である。どうにもやりづらいし、隠してた事をいきなり暴露されても困る。
「そうかそうか、では長旅疲れていると思うが、ついて来てくれたまえ」
と言われて、王城の一室である。
「さて、早速だが」
「皇帝陛下。最初に言っておきますが、私は聖王国の人間です。どんな事情があれ帝国側についたりはいたしませんので、ご了承を」
「…出鼻をくじかれてしまったようだ。それに、君はもう気付いているようだね」
「母上はどこですか?」
「今は安静にしている。何しろ少し前まで約十六年もの間眠り続けたのだ、体の衰えが著しい」
「…それが、俺を『捨てた』理由ですか。少し前にお亡くなりになられたあなたの奥方と、関係がありそうですね」
「…まぁ、そんなところだ。今更言えることもないが、取り敢えず無事でよかったとだけ伝えておこう」
つまりはそう言うことだ。どうやらこの皇帝、正妻戦争の最中に正妻を眠らされてしまったらしい。恐らく俺もその対象だったが、母親が守ってくれた、と言ったところだろうか。
「やれやれ、徒らに女性を囲うとどうなるのか、本当に身に染みたよ」
「…反応に困りますね」
「君はそんなこと」
「しません。陛下とご一緒になさらないでください」
俺はセレシア一筋なのだ。他の女性など見るに値しない。例えどんなに魅力的であろうが、『俺の知るセレシアでない』と言う時点でアウトだ。
女子が主人公のギャルゲーであれば攻略困難というか、攻略不可能キャラに当たるクラム。T◯S先生でも不可能だろう。だって0%だから。…いや、『セレシア』判定をバグでパスすればワンチ(ry
さて、そのようなことはどうでもいいのだ。問題はクラムの出自が明らかになったことである。
まぁ、予想はしていたが。
どうやら俺は、王子様らしい。
だからと言ってどうする気もないクラムは、留学が終わったら本気で帰るつもりだった。
「あぁそうだ、クラム」
「何ですか、陛下」
「これからは、『父上』と呼んでくれ」
「…拒否権は?」
「ない」
「…了解しました、父上」
この皇帝、捨てたくせに随分と態度が良いものである。…何か事情があるのだろうが。
「君に紹介したい『結婚相手』がいるのだが」
「拒否します」
「いや、拒否権はない。我が国において重要な外交政策なのだからな」
「…政略結婚ですか」
「そうだ。まぁまだ予定だが、恐らくそうなると思っていてくれ」
いざとなれば逃げ出せば良いだけである。もとより従う気などなかったのだが、
「相手はアストレア聖王国第一王女、アリス=ノベル=アストレア殿だ。アストレア聖王国の王族ならはっきり言って誰でも良いんだが、あちらはどうやら娘が一人だけだというからな、自然と相手は決まるものだ」
そら来た。何となくわかっていたが。
「…その話、先方はどうと」
「快諾してくれるだろう。非公式の会談だがだいぶ感触がよさそうだったからな」
「…そうですか」
はぁ。セレシアが王族の娘だったら良かったのに。そうしたら親公認で、セレシアと結婚できるのだがーー⁉︎
その時クラムは、会心の返し手を見つけた。
「皇帝陛下。その話ですが」
「ん?何だ?」
「もし仮に聖王国に王女が二人いて、そのうちの片方が私の意中の相手であった場合、その方に結婚相手を変更させていただくことは可能ですか?」
「…ほう?息子よ。何やら面白い情報でも掴んでいるのか?」
「いえ。ただまぁ、二人目の王女がいるかもしれないという情報が入りましてね」
「可能だな。こちら側としては王家の女性ならば構わんのだから、妾の子だろうが何だろうが好きにすると良い」
「…そうですか」
未だ分からないセレシアの出自…と言いたいところだが、もう大体の見当はついている。
あちらもこちらと同じような事情があったのだろうか…とは言え、チャンスはまだ残っているということだ。
「何かするつもりならば頑張れ。だがまぁ、留学生なのだから、ここでたくさんのことを学んでいくと良い」
「承知致しました、父上」
まぁ、敬うのもやぶさかではない。もし上手くいけば、セレシアとの人生を保証する、強力な後ろ盾がつくことになる。
フローラはもちろん、アリスだろうが『元聖女の伴侶を奪い取った』とか言う悪評は付けられないだろう。…これは勝ったのではないだろうか?
一人皮算用をしていた俺だが、事態はクラムの思うように進んでくれるのだろうか?
それはまだ、誰も知らない。




