33話 留学するらしい。
「エレスハイム帝国に留学、ですか」
「あぁ。それとなくうちの王様が断ったそうだが、連中は君をご指名の様だ。何でも、皇帝が頭を下げたらしい」
「…一国の皇帝が頭を下げる、ですか」
「あぁ。よっぽど君を呼ぶことが重要なのだろうな。…まぁ、察しはついてるだろう?」
「はい。…と言っても、『帝国につけ』と言われたとしても知らん振りで帰るつもりですが」
学園長室での、エルフレアとクラムの会話だ。
「アリシアはどうします?連れて行きますか?」
「あぁ、かまわない。何たって君の召使いだ。置いておく理由がないだろう?」
「そうですね…後は、生徒会の仕事でしょうか」
「それなら、代理でフローラ君が務めてくれるそうだ。『クラム君のためならば』だと。罪深い男だな君は」
「それに関しては、全力で雪ぎたいですね」
諸問題は解決したが、クラムにはどうしてもお願いしたいことがあった。
「あぁ安心したまえ。聖女セレシア殿には私たちが全力で警備に着く。それになの必要ならばその指輪をいつどこで使っても構わん。『アストレア様の奇跡』ですべてカタがつくからな」
「…隊長には敵いませんね」
「まぁな。それに、ある意味私も、カーロンと一緒の立場だから」
「…一緒?」
クラムが聞き返す。
「あぁ、カーロンは私の弟子でね。まぁ彼は不老不死だが、私は時間を止めてるだけ。それに、前のセレシア殿を死なせてしまった原因の一端は、私にあるから」
「…それが、どの様な関係を?」
「もう、『セレシア』と言う女性が死ぬのを見たくない。そう言う点では彼と共通しているんだよ」
「…そうですか」
「あぁ。だから安心してくれ。彼女を何が何でも守ろうとしているのは、君だけじゃ無いんだ。カーロンも彼女に新しく細工を施したみたいだし、私達も全力で守る」
「…おかしいかもしれませんが、ありがとうございます」
「おかしく無いよ。伴侶を守ろうとする人に感謝するのは、妻帯者として当然の事だろう?」
「…まだ、結婚はしていないのですが」
「そうなのか?では意味有りげに左手の薬指につけてるその指輪は何だ?大聖堂の連中、如何あっても外せないと言ってごまかすのに大層困ったらしいぞ」
「幼き日の苦い思い出が、心の中から消えてくれないだけです」
「…そうか、君も色々と難儀だな」
どうやら色々と混み合った事情がありそうだ。…とここで、クラムは思いついたことを言ってみた。
「…時間を止めてるって、まさかアリシアは」
「私の娘だ。消息がないと思ったら、あんな事をしでかしていたとは」
「…父親は?」
「あぁ、それか?…言いづらいがまぁ、カーロンの髪の毛だ」
「…は?」
「もともとカーロンは、日本克人と言う名の異世界人でな。とっても若かった私は、興味本位で彼を呼び出したんだ」
「ーーっ」
「そのカーロンから『体細胞受精』なるものの話を聞いてな。よく考えていなかった私は、落ちていたカーロンの髪の毛から奴の子供を作り出した」
「…随分無鉄砲ですね」
「だろう?当時まだ17だからな、面白いことがあったらとりあえず試していた。カーロンを随分振り回していたよ」
「あれ、弟子では?」
「代わりに魔法やら何やらを教えたからな。これでも私は、帝国…いや、その前身たるセレス王国では一番の魔法使いだったから」
色々と衝撃のカミングアウトである。
「まぁそのせいでと言うべきか。セレシアは私の子供を庇って致命傷を負い、助からないと判った彼女は最後の力を振り絞って、自らを白銀の剣に変えた」
「…白銀の、剣?」
「聖女にだけ許された技だ。彼女らの想い人が握ることで、絶大な力を発揮する剣を生み出す。カーロンの場合は『不老不死』だったのだろう。彼女は死にかけだったから、おそらく自身の全てを消費したため、体ごと変換されると言う事態になったのだろう」
「そんな、事が」
「他にも色々事情はあるのだがな。まぁともかく、それで皆、色々とおかしくなっちまったと言うことさ」
自分を責める様につぶやくエルフレア。
「だがもう、過ぎた話だ。今度こそは守ってみせるから、安心したまえ」
「…まぁ、よろしくお願いします」
カーロン先生は、いったいどんな人生を送ってきたのだろうか…。
クラムは自らの師の半生に、少しだけ興味を持ったのだった。
所謂「恐るべき子供達計画」
私はメタル◯アの大ファンなので、そのネタを入れてみました。実はクラムの申し入れが通ったのも、エルフレアの力があってこそだったり。




