32話 手合わせしてみる。
「じゃぁ、始めようか?」
「あぁ、頼む」
酒の席(片方は飲んでいない)が発端で始まったこの戦い。…と言っても口論の末の喧嘩ではなく、クラムがバールの魔法銃を見てみたいと言った結果である。
「んじゃ、たっぷり味わってくれ」
魔法銃の掃射が始まる。それを炎の防壁で防いだクラムは、
「確かに、威力は高いな」
お馴染みの炸裂型トラップを起爆させた。
「無駄だ!『ブロック』、『パージ』!」
どうやらバールには通じないらしく、魔力防壁を炸裂させ、全方位からの攻撃を防御した。
視界が悪くなる。その中を突っ切ってくる弾丸。
「そちらも無駄なんだが」
「それはどうかな?」
煙の中からバールが飛び出してくる。…銃の掃射はまだ続いているのに、だ。
「おらぁっ!」
彼のナイフが伸びる。…魔力で刀身を形成したのだろうか。
「くっ…」
炎の剣で受け止める。クラムの悪い癖で、防戦一方である。
「やるな…」
「まぁな!学園でのんびりしてたやつとは鍛え方が」
「だが、それはどうかな」
神炎の波動でバールが吹き飛ばされる。
「慢心したなバール。…終わりだ」
太陽が灼熱する。それに対しバールは、高速機動により高価範囲内から回避する。
「あっぶねぇ…なんて威力だよ、それ」
「あまり使いたくはないがな…俺の力ではないから」
何処ぞの龍から力をもらったせいで、魔法の威力と安定性が完全におかしくなっているクラム。
「さて、どうにも締まらん。今度こそ終わりにしようか?」
膨大な数の炎槍が現出する。対しバールは絶望するでもなく、
「へっ、『手数』でコイツに勝てるやつはいねぇなぁ!」
銃を構えて不敵な笑みを浮かべる。どうやら彼は、戦場でだいぶ勇ましくなったらしい。
魔法銃に初めて、魔法陣が浮かぶ。否、視認できるほどの長い時間、魔法の起動が行われる。
「コード『フェンリル』!喰らい尽くせ!」
およそ1000を優に超える炎槍に対し、バールは引き金を一回。それだけで、槍が全て撃ち落とされた。
「…随分やるじゃないか。こちらも出し惜しみはしてられないということか」
「どちらも修行期間一年にしては強くなりすぎだが、まぁそういうこったな!」
クラムが作り出した炎の剣から、黄金の神炎が噴出する。
「さて、これで終いだろうか。」
「神の、力か…⁉︎」
今度こそバールは驚愕した様だ。
「らしい。死にはしないから安心してくれ」
「全く信用できねぇな、それ」
バールも銃を構えた。ーーと思いきや、
「コード『フェンリル』、トランスフォーム」
何と、バールの手にした銃が変形し、大剣となった。
「…面白い」
「ロマンの塊だろ?まぁ、それだけではないんだが」
「受け止める気か。じゃぁ、やって見せろ」
神炎の裁きが下る。対しバールは、
「リアクター、オーバーリミット。コード『フェンリル』、『ラグナロクバースト』‼︎」
手にした大剣から膨大なエネルギーを放出し、その神を撃ち落とさんとする。
威力は明らかに、クラムの方が大きい。ーーしかしそのパワーバランスは、数秒で覆った。
「神の力ってのは好都合だ。喰らえ、フェンリル!」
在ろう事か、神炎のエネルギーがバールの大剣側に吸収されていく。次第に出力がクラムのそれよりも上回ったバールの『フェンリル』は、その名の如く神に襲いかかり、その牙を立てたーー!
「ぐあ、っ」
「まぁ、死にはしねぇから安心しろ。こっちの銃にも安全装置は付いてるからな」
傷はすぐに治る。しかしそれでも、膨大な衝撃にはクラムでも耐えきれず、クラム対バールの戦いは、初めてクラムの黒星で終わった。
「ーー普通に負けたな」
「『慣れ』だな。まだコイツと出会って浅い方だが、お前、その力を滅多につかわねぇだろ」
「…人から貰った力だ。試す気になれん」
「そうか。…それじゃぁ、セレシアは守れないぜ」
先頭が終わり。珍しくクラムは、バールに諭されていた。
「戦場ではいつも命懸けだ。貰い物だなんだと、気にしてる場合じゃねぇ。ここは平和だからそこまで気にする必要はねぇかもしれんがな、いざという時にその力を使いこなせなければ、お前はきっと後悔するぞ?」
「ーーっ」
「少しの間だが、本物の戦場を見てきた俺がいうんだ、間違いない。お前のその『拘り』は、きっといつか、お前の足を引っ張る。そんなもん捨てちまえ。持っている力は全て、完璧にマスターしておくんだ」
「ーーいや、お前に諭されるとはな」
クラムの心が変わった様だ。自分でも少し、『馬鹿らしい』と思ったのだろうか。
「ーーもう少し慣らしておきたい。付き合ってもらえないだろうか」
「あざ、いいぜ。お前の力が尽きない限り、こっちの力も尽きないみたいだしな」
持つべきものは友人也。
その後も彼らは腕を競い合い、休日いっぱいを使いきり各々の居場所へ帰ったという。
こっからどうするか決まってないので、次回は少し更新が遅くなります。ご了承をー




