31話 懐かしい顔だ。
「お、クラムじゃないか、久し振りだな!」
「おぉ、バールか。一年ぶりだな」
村に戻ると、懐かしい友人がいた。どうやら彼も帰省してきた様だ。
「セレシアもか。…さてはクラムのやつ、ようやく男を見せたか」
「まぁ、そんな所です」
照れ臭そうにセレシアが答える。『少女モード』は数分前に終わった。
「驚いた。完全に口調が変わってやがる」
「大聖堂の皆様にみっちり仕込まれましたので」
「お疲れさん。クラムはどうだ?学院では元気にやってるか?」
「まぁな。いろいろあったが」
「そうか。こっちは大変だったぜ?何回死ぬかと思ったか。傭兵稼業を完全に舐めてた」
確かに、傷だらけの様だ。どうやらバールも、戦場にみっちり仕込まれたらしい。
「そうか。俺もまぁ、儀式に巻き込まれて死にかけたが」
「そんな事があったのか。まぁ、積もる話は酒場でどうだ?」
「酒場?おまえ、酒は飲んだっけか」
「あっちで慣れた。傭兵たるもの、戦いの後は酒と…いや、なんでもない」
「女か。まぁ悪くはないが、漸く一歩目を踏み出した俺らにとっては早い話だな」
「いや、それはお前がヘタレなのが悪いんだろうが」
「えぇ、全くです。聖女に選ばれる前なら、どうにでもなったものを」
「聖女は傷モノだったらなれないだろう…というか、その話はいい。セレシア、アリシアの所へ行ってやってくれ」
「はい、わかりました。それでは、ごゆっくり」
そう言って、セレシアは村の学校へ。俺たちは酒場へ向かった。
「それでな?うちのボスが化け物でなぁ?一個小隊を一人で撃破して、かすり傷おわねぇで帰ってくるんだ。最初は驚いたよ、まったく」
「それは凄い人だな。道理で、優秀な人材が集まるわけだ」
「まぁな、この俺もこの『魔法銃』には才能があったみてぇで、先輩方に負けないくらいには活躍出来てるってこった」
酔いのせいか、若干言葉付きが荒くなっているバール。まぁこれも『ワイルド』でいいのかもしれない。女子からすれば。
「銃か。帝国で出回っている獲物らしいが、それほど強力なのか」
「おおとも!バカな魔法使いが詠唱なんてしてたら、これの引き金を引くだけで即、死亡だ。おかげで帝国では魔法使いは皆、法式記憶で瞬時に魔法を発動させるのが常識になってるんだぜ」
「今まさに戦場になっている国は違うな」
「そこなんだよなぁ。帝国の領土は何と言ってもでかい。有り余る領土の中で、色々な種族が独立だなんだと騒ぎ出している。これは最近急に増え始めたものでな、おかげでどこもかしこも内戦だ。まぁ大体政府側が勝つから、そっちに付いてる俺たちがガッポガッポ儲かるわけさ」
「成る程。お前も羽振りが良さそうだな」
「そうでもねぇよ?金を持ちすぎると慢心を生むとか言って、ボスはあまり給料を上げてくれねぇんだ。まぁ殆ど毎日戦場にいる様なもんだし、家族もいねぇから使い道もないけどな」
「お前、恋人の一つもいないのか」
「あんまりいい人がいねぇんだよなぁ。気持ちよーくしてくれるおねぇさんは沢山いるんだが」
「随分と遊んでる様だな」
「悪いことではないだろ?あっちも合意の上だし、ちゃんと適正な額の金も払ってる」
「随分と義理堅いな」
「ボスの名を汚すわけにはいかねぇんだ。どんな些細な行動でも、ボスの名に傷がつく様な行動はしたくねぇ」
「…いいリーダーなのだろうな、そのボスは」
「あぁ。ボスは最高だ。あの人以外について行く気はねぇよ」
バールは酒が入り、随分と長話だ。一方クラムといえば、牛乳を飲んでいるだけで酒には手をつけていない。酒を飲んで酔っ払って、あの魅力溢れるセレシアの前に出てみろ。理性が持つわけが無いーーと、クラムは思っている様だ。愛してるとは言ったものの、セレシアから聖女の身分を剥奪してしまう様な行いは避けたいらしい。
昼間に酒場に入ったのだが、夜になるまでずっと、クラムはバースの話を聞いているのだった。はっきり言って、これだけ飲んでゲロの一つも吐かないバースに、クラムは少し感心した。




