表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染は聖女らしい。  作者: PARO
第1部 幼馴染は聖女らしい。
31/77

30話 ようやく、言えた。

「さて、と。俺からお前に、伝えなければならない事があってだな」

「…はい」


クラムの目をまっすぐに見据えるセレシア。それだけでクラムは、かなりやりづらくなるのだがーー


「初めてあった時からかな。何だか放って置けなかった」

「…そうだったのですか」

「あぁ。その感情は物心着いてからも続いて、10年前くらいか。ここで恥ずかしい約束なんてものをしたな」

「えぇ。あの時は、本当に嬉しかった」

「その後も平和な日々が続いて。でも、お前は聖女に選ばれた」

「…」


黙ってクラムの言葉を促すセレシア。


「正直、自分の気持ちに折り合いをつけた。あいつは平民の俺とは一緒になれない。もっと崇高な、素晴らしい人と結ばれるのだと。君の告白はとても嬉しかったが、受けることはできなかった」

「やはり…そう、だったのですね」


やはり、セレシアはわかっていた様だ。その上での、『諦めない』だったのだろう。


「それでも何だか、君に会いたくなってな。先生に頼んで、王都の魔法学院の入学試験を受けさせてもらった。あの時は必死に勉強したよ。一生に一度だけのチャンスだったから」

「…わざわざ追いかけてきて下さって、ありがとうございます」


セレシアが頭を下げる。「いいんだ」とクラムは頭をあげさせた。


「王都で君と再会した。ーー別人の様に美しくなって、何もかもが生まれ変わった様で。…正直、見惚れてしまった」

「…あの時はからかい甲斐があって、私も楽しかったですよ」


セレシアがクスクスと笑う。クラムは少し恥ずかしくなった。


「君の声があったから、親善大会では優勝まで行けた。恐らくあの、凄まじい力をくれたのは君なのだろう。何となくわかったよ」

「えぇ。私の中にいる女神様にお願いして、力を貸して頂きました」


1段階目のあれは生まれ持ったウロボロスの力によるものだが、2段階目のあれは完全にセレシアの助けだったのだ。思えば、1段階目のトリガーを引いたのも彼女である。


「君におめでとうと言ってもらえて、誇らしいと言われて、初めて自分で自分を褒める事ができた」

「思わず涙が出てしまったのですよ。恥ずかしいので拭き取りましたが」


そんな事があったのか、とクラムは思った。


「祭壇では君を魔の手から守ることも出来たし、俺は相当、運に恵まれているらしい」

「命まで助けて頂き、本当にありがとうございました」


再度頭を下げようとするセレシアを、クラムが制止する。


「だからその、なんだ。月並みな言葉ではあるんだがなーー」

「…はい」


クラムが殊更に大きく、何度も深呼吸をする。ーーそして、


「君を、愛している。何よりも、君だけを。この想いは未来永劫消えることはない。例えどんな事があろうと、例え君の体が朽ち果てても、君だけを愛し続けると誓うよ」


十年越し。恋情から愛情に育ったそれを、告げる。


「ーーはい」


セレシアの目から、涙がこぼれ落ちる。


「何故でしょう。一年前のように振られたわけでもないのに、涙が、止まりません」


こんな声は初めて聞いたな、とクラムは思った。


「はい、私も、私も愛しております。クラム様とならば、例え永遠の時を過ごそうとも、決して飽きることはございません。あなたを想うだけで、私はいつでも、幸福を感じる事ができます」


セレシアがクラムに告げる。


「ーーそうか。…やはり両想いだったといことか、俺たちは」

「えぇ、そうですね。何処にいようと、何があろうと、変わる事など、消える事などなかったのです」


セレシアの涙が止まった。二人で笑い合う。

その後にセレシアは、


「我が女神アストレア様。どうか一時だけ、私が聖女セレシアではなく、一人の女性、セレシアである事をお許しくださいーー」


そう言って、


「ーーっ」

「ーーふふっ。ファーストなんちゃらね。頂いたわ!」


少女は笑う。まるで、10年前の続きをする様に。


「いきなりはないだろう。もっと何か言ってくれ」

「言ったってあんたからはしてくれないじゃない!こんだけいいムード出してるのに、まぁヘタレなこと」

「ーーこちらからする予定だったのだが」

「あらそう?じゃぁ、もう一回してもらおうかしら」


そう言って目を閉じるセレシア。…ちょって待ってほしい。心の準備ができていない。


「今更だが、口調が粗野に戻ったな…。まぁ、こっちの方も似合っているからいいが」

「こっちの方『も』?」

「あぁ、聖女セレシアも、良いものだと思う」

「あら、そうですか。ではこちらの方がいいかしら、ですか?」

「混ぜるな。それでは訳がわからん」

「ーーまぁ、アストレア様と繋がってない私なんてこんなものよ。大聖堂のおばさまたちに仕込まれたのもあるけど、何より貴方に恥ずかしくない様にしたかったから」


なるほど、それで口調を変えていたのか。ーー全く、考える事は同じというわけだ。


「そうか。…準備完了だ、では、まぁ。こちらから」

「えぇ、待ちくたびれたわ。早くしなさい!」


ったく。最後までこれか。 まぁ、急かされるのも、悪くないかもしれないな…。


思い出の花畑で、二つの影が、重なったーー。






一応、一部完。だがしかし、話はまだ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ