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幼馴染は聖女らしい。  作者: PARO
第1部 幼馴染は聖女らしい。
28/77

27話 やりにくい。

「こんな少女が、娘を襲っていたと言うのか」

「はい。私も信じられませんが、本人がそう言っており、嘘はない様です」

「君は、誰かに操られたりして居たのかな?」

「いいえ。全て、私の意志で行ったことです」

「うむ、信じられんが、そうなのだろう。君に嘘をついている兆候はない」


仮面の少女と クラム、セレシア、聖王のパーシヴァル、そしてアリス。5人が集まった王城の一室での会話である。学園の闘技祭は、ライバルのいなくなったアリスが一人勝ちしたらしい。


「私の娘を襲ったと言うことは到底許すわけにいかないが、かと言って何か娘が傷を負ったかと言うと、そうでもない。セレシア殿の件でも、死者はおろか怪我人すら出て居ない始末だ。…これでは裁きようがない」


未遂罪なんてものは聖王国の刑法になはい。あったとしても、この件で死刑にはならないだろう。


「うーん。確かに、私を襲ったからと言っても、こんな可愛い子に刑罰を課すのはちょっとねぇ…」

「本当に、申し訳ございませんでした」


こう謝れては、いくら厳格な王であろうが沙汰を下せないと言うものだ。


このままでは話が進まない。ーーその時ふと名案が浮かんだクラムは、


「恐れながら陛下。誰も死んで無いとは言え、私は彼女の起こした儀式に巻き込まれ、危うく『死にかけ』ました。私には彼女を裁く権利があると思います」


こんなことを言い出した。


「ほう、それは確かに、そうかも知れん。…それで君は彼女に、どんな罰を課すのかね?」


この場全員の視線がクラムに集まる中、


「暫くの間、私の元へ預からせていただきたい。奴隷ではありませんが、召使いとして。…彼女には特殊な才能があり、鍛えようによっては貴重な『戦力』になります。一度私の師に会わせて、彼女をどう『教育』すべきか、教えを請うつもりです」


彼はそんなことを言い出した。それに対しパーシヴァルは、


「ほう?成る程、なかなか面白いことを考える。…良かろう。確かに今回の件は、君に沙汰を下す優先権がある。それと、彼女と共に暮らすのならば寮では不便そうだから、一戸建ての家を与えよう。今回の件の褒賞としてな」

「ありがとうございます」


それについて許しを与えた。


「ど、どう言うことでしょうか、クラム様」


セレシアが困惑した表情でクラムに問いかけるが、


「あぁ別に、可愛いから愛でようとかそう言う狙いでは無いよ。ただな、『救いを与える』と言うのが俺の使命だから」


ーー仮面の少女も救わねばならない。彼の右手に刻まれた紋様が、彼に救済せよと告げていた。



「良いのですか?ご主人様。セレシア様に浮気を疑われますよ?」

「随分と生意気な召使いだ。首輪でもつけた方が良かっただろうか?」

「どうぞ、ご自由に」

「…冗談だ」


さすが王家。別荘などいくらでもある様で、学園にほど近く、そこそこの大きさのある家を下さった。


クラムとセレシアと名乗る仮面の少女の新生活が始まるわけだが、


「そうだ、召使い。セレシアとは呼びたく無いから、お前に新しい名前をつけようと思うのだが」

「名前、ですか。…どの様な?」

「『アリシア』だ。まぁ、適当だが」

「アリシア、ですか。王女様と聖女様のお名前が、半分ずつ入っていますね」

「お前のしでかした罪は消えない。未遂と言うことにはなっているが、俺は確かに一度死んだからな。ーーさて、これからは召使いとして、友人の代わりに朝に起こして貰わなければ」

「…その位ならば。お任せください」


罪には、然るべき償いを持って救済を与える。

クラムとアリシア、そしてのちにセレシアが暮らす事になる『賢者の館』は、新たな主人を迎えようと、その門を開くのだった。




お気付きの方もいらっしゃるでしょうが、主人公やヒロインには彼らに力を貸す者たちの『思念』などが入り込むことによって、少々人格に変化が生じたりします。『あれ、こいついきなりキャラ変わったぞ』と思った方は、『あぁ、そう言う設定なのか』と思いながら読んでいただけると幸いです。

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