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幼馴染は聖女らしい。  作者: PARO
第1部 幼馴染は聖女らしい。
27/77

26話 ぶち壊しだ。

「フフフ、これで漸く、かの楽園がーー」

「悪いな仮面。その願いは叶えられない」


燃え盛る炎の中から出てきたクラムに、仮面の男が驚愕する。


「ば、馬鹿な。確かに死んだはずでは」

「恨むぞ仮面。貴様のおかげで俺は、永劫に死ぬことができなくなったらしい」

「なにっ!ーーその紋様、まさか、『辿り着いた』のか⁉︎」

「ん?ーーあぁ、お前はあの場所を目指していたのか。思ったより殺風景だったぞ。凄まじくでかい龍を除いて、本当に何も無かった」


右手には炎の環ーーではなく、謎の紋様が現れていた。いい感じにアストレアの神紋と共存しているその紋様は、何やら神々しさに満ちていた。


「龍…。そうですか。私では無かったが、楽園を見たものを、本当に生み出せるとは。…ある意味、私の目的は達せられたという事でしょうか」

「貴様はあの龍を呼び出すのでは無かったのか?てっきりその力を使って、世界を滅ぼすとかその様な事を考えているのかと思ったが」

「そんなはずはないでしょう。私はあなたが見た場所への鍵を探していただけ。それでウロボロスを呼び出し、世界の最深部への扉を開こうと考えていたわけです」

「じゃぁ何故、王女殿下を襲ったのだ」

「アリス王女ですか?聖王国の女神、アストレアの現し身が現れたという情報が入ってきましたので、一先ず王家の血が流れた女性の中で最も可能性のある、彼女を狙った訳ですよ。女神様ならまぁ、鍵を持っていてもおかしくはないでしょう?」

「そんな要求が通るわけがないだろうに」

「通りますよ。そのための準備もしていました。ーー全て無駄骨でしたが」

「それで?現し身とやらを見つけようとしたら、その女神に選ばれた平民を見つけて。さらにそいつが思いがけないものを持っていたから、計画を変更したと」

「そういうことです。まぁ、この結末は想定外でしたが」

仮面が笑う。

「そうか。一応断罪する前に聞いておくが、これから悪事を行うつもりは?」

「無いですねぇ。それに、私はこの一連の犯行で誰も殺してませんし、罪に問われることもないと思うので、トンズラでもしようかなと」

「いや待て。セレシアを殺しかけた挙句、何回もアリス殿下を狙った罪は消えないぞ。それにお前、『我ら』といつか言っていたではないか。他の仲間はいないのか?」

「え?居ませんよ?我らというのは、私の分身が複数いたからです」


飛んだ肩透かしである。確かに目的はくだらないものではないとは思うが、もっと大きな組織とかなんとか、あるのではないだろうか?


「うーん、罪は消えませんか。となるとやはり、首を飛ばされるしかないのでしょうか?」

「当たり前だろう。…そう言えば、その前に仮面を脱いでもらおうか?」

「あ、はい。わかりました」


そう言って仮面は、あっさりとその仮面を脱いだ。…なんだろうか。色々とぶち壊しである。


非常に肩透かしを食らったクラムの目が、大きく見開かれた。


仮面の内側には、それこそ『絶世の美少女』と言っても差支えがない程の顔が隠れて居たからだ。


「どうでしょう?首を飛ばすというのなら仕方ありませんが、この顔に免じて減刑して頂けませんか?」


この女、小さい癖に中々のものだ。自分の背丈よりも小さい少女にうるっとした目で懇願されれば、刃を振り下ろす手も止まるというものだ。


丁度その時、

「クラム様!」


セレシアがやってきた。


「セレシア、無事だったか」

「お陰様で。…そこの少女は?」

「あぁこいつか?お前を攫ってきた仮面だ」

「…え?」

「まぁそうなるよな。はっきり言って俺もそう言う気持ちだ」


仮面を被り、俺たちの敵として立ちはだかって居た時とは、外見、雰囲気、声の何もかもが違う。厳密には、俺が蘇った後から、だが。それに、こんな美少女が一連の犯行を行なっていたとは、とても思えない。


「…ご冗談ですよね?」

「だそうだ。何か言ったらどうだ?仮面」

「はい、私です。その節は本当に、申し訳ありませんでした」

「…本当なのですか?」

「はい、本当です」

「…嘘はついて居ない様です。いまだに信じられませんが」

「さて、どうしようか?こいつを王女を度々襲った極悪人と言って処刑場に突き出しても、この美貌だ。減刑を申し出る民がいるに違いないし、殺しでもしたら、むしろ国にとって悪影響が出るに違いない」


『美しきとは罪なり』とはよく言ったものだ。これではおちおち処刑もできない。内密にやるとしても、見届け人が顔を悪くするだけだ。


「そうですね…教会で罪を告白し、懺悔させるしかありませんね」

「その方が『寛大な王女だ』といって、王室の評価も上がるだろうな。…いや、俺たちだけで判断するのは早計だ。聖王陛下に審議してもらおう」

「そうですね。これだけ長話をしても逃げる気は無い様ですし、死をもって償わせるのは少し可哀想に思えてきました」

「あぁ。一度殺されたというのに、如何しても憎しみが抱けない。…くそ、貴様が男だったなら万事滞りなく行ったというのに」

「い、一度殺された⁉︎」

「あぁ、長くなるならその話は後で。それで仮面。逃げなくても良かったのか?」

「少しでも助かる方法があるなら、それを選択するわけですよ。逃げたら即殺されるでしょうし、さっきまではどうしようもありませんでしたからね」


少女があっけらかんと言う。


「あぁ、そう言えば、お前の名前は?」

「私ですか?うーんと、ある人から受け継いだ名前なので、私個人の名と言うものはないのですが」


クラムに問いに少女は、

「『セレシア』と言います。聖女様と名前がかぶって居ますので、今まで通り仮面で良いですよ」


そう言って、再度二人を驚愕させたのだった。



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