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幼馴染は聖女らしい。  作者: PARO
第1部 幼馴染は聖女らしい。
25/77

24話 お祭り騒ぎだ。

「ほらほら弟君!次はこっちだよ!」

「あの、会長。引っ張らないで下さい…」


グレイス(仕方ないのでフローラも)と回りたかった学園祭なのだが、生徒会役員のフリー時間を見事に合わせてきたアリスにより、完璧に妨害されてしまった。

例の仮面のこともある。アリスを警護しなくてはならないため、必然的に友人と回ることはできないクラムは、少しばかり悲しみを背負った。


グレイスとフローラと言えばもちろん別行動。グレイスは妹と、フローラは弟とともに祭りを楽しんでいる様だ。


『不可侵』の王女と、女神に選ばれし少年。最早完全に周りからカップル認定された二人は、(アリスの方だけは)楽しそうに校内広場を歩き回っていった。


(着実に外堀を埋められている…)


「その様な平民と関わっては王家の名が汚れる」とは誰も言えない。何しろ女神アストレアに選ばれた少年だ。そこらの伯爵家の子息よりもよっぽど価値がある。


この状況でプロポーズでもされてみろ。断るなんて事は絶対にできない。もちろん、彼の心理としては絶対に受け入れられないのだが、物事には事情というものがあるのだ。


「どう?楽しい?」

「まぁ、そうですね」


しかしながら、祭り自体は楽しい。これほどのものなら是非、友人達と回りたかったものだ。…いや、それよりもセレシアと回りたかった。アリスの様に引っ張られながら、その優しさに包まれる。そんな楽園をーー


「ーー!!」

「ん、どうしたの?喉にでも詰まった?」

「…すみません会長、ちょっと用事ができました」

「え?…って、指輪が、光ってる?」

「はい。…彼女が危ない」


それ以上の会話は無用だ。人目のつかないところへ駆け出し、左手で赤く光る指輪を右手で包み込む。


「今行くぞ、セレシアーー」


そう言った直後、彼の姿が消えた。





「ーーというわけでして。貴方には生贄になって欲しいのですよ」

「応じなければ、そこの民達を代わりにすると」

「えぇ、その通り。まさかこの状況で、抵抗できるとは思っていませんよね?」

「はい、残念ながら。淫行が目的でなかっただけまし、と言ったところでしょうか」

「生憎とその様な下賎な欲望は捨てましたので。お望みなら相手をしますが?」

「いえ、結構です」


セレシアと、仮面の魔法使いの会話。


彼女を守る騎士達は全員気を失い、彼女は一人儀式の祭壇の様な場所へ移されていた。騎士達が殺されなかったのは彼女の要請である。


「それでは、どうぞ。殺すなら早くして下さいな」

「死に急ぐ必要はないでしょう?今準備をしていますので、少々お待ちを」


死の間際だというのに、セレシアはとても冷静で、その目には微塵も恐怖がない。


「さて、準備完了です。そこの魔法陣の中心にお立ち下さい」

「はい、分かりました」


スタスタ、と彼女は魔法陣へ移動。足元の魔法陣が起動しても、表情には一変の揺らぎもない。


「そういえば、仮面のお方」

「はい、何でしょう?」

「貴方は分身か何かですか?」

「いえ、珍しく本体が出張ってきていますよ。儀式の成果は是非、自分の目で見たいのです」

「そうですか。ーー好都合です」

「ほう、まだ抵抗する気がおありとは」

「いえ、私は何もしませんよ?ーー私は、ね」


今です、クラムーー。と、セレシアが心の中でつぶやく。

その瞬間、空間転移により駆けつけたクラムが、仮面の男を切り刻んだ。


魔法陣が失効する。クラムはセレシアのもとに駆け寄り、


「すまない、かなり遅れてしまった」

「いえ、大丈夫ですよ。助けに来てくださり、ありがとうございます」


ここまでならまぁ、喜劇で終わっただろうがーー。『賢者』の物語は、こんなつまらないものではない。


『そこを離れなさい、現し身よ!その魔法陣はまだ動いている!』


何ですって、とセレシアが神に聞き返した瞬間、クラムはカーロンに教えられていた、『奥の手』を起動する。

クラムに突き飛ばされたセレシアが、指輪の力によりその場から離脱する。行き先は学園。クラムが転移して来た場所だ。


「聖女だけは逃しましたか。ーーまぁいいでしょう。貴方だけでも十分、生贄は足りる様だ」


くっくっと、仮面が嗤う。


「そうか。それは助かった。これから何をするかは知らんが、セレシアを守れたならばまぁ、悔いはない」

「反吐がでる言葉ですねぇ。しかし、遺言ならば致し方ないでしょうか」

「遺言?あぁそうだ。言い忘れていた」


何を思ったのか、クラムは仮面に、


「奴に『愛している』とでも伝えといてくれ。出来れば紙の切れ端か何かでな」

「敵にそれを言いますか。全く面白いお方だ。…いいでしょう、お安いご用ですよ」

「あぁ、頼む。…夢は一応叶ったからな。悔いがないといえば、そうなるかもしれん」

「それは好都合だ。では、世界の輪廻を司る龍、ウロボロスの降臨のために、生贄になってもらいましょうかーー」


あぁ、結局後悔することになるとは…。


これは誤算である。

クラムの、 セレシアの、そして仮面の。

物語は、この誤算によって始まる。


否、この物語は、ようやく動き出す。




しゅじんこう は しんでしまった!

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