23話 祭りの季節だ。
「学園祭?」
「えぇ。毎年恒例。お祭り騒ぎよ。生徒同士が実力を競う、闘技祭でもあるけど」
毎日恒例、帰り道での会話である。
「いよいよですか」
「色々なお店が出張してくるし、王都の住人もやって来るわ。かなり大きなイベントだから、前もってしっかりと準備を進めなきゃね」
一応、チェックした書類の中にそのような内容のものがあったため大まかな内容な知っているが。王城が後援する一大行事のようだ。
「ここだけの話、前に会った人達もいるでしょう?何してくるかわからないから、警備を厳重にしなきゃいけないの。弟君にも指示が降るそうよ」
「そうなんですか。…学園長、いえ隊長からはまだ」
「明日にでも呼ばれるんじゃないかしら?どっちの部屋かは知らないけど」
因みに、クラムとエルフレアの初対面は学園の入学式で、その後は特務部隊長室、学園長室で顔を合わせている。
「そうですね。何やら計画を企ているようですし、気をつけなければ」
「うんうん!良い心意気だよ弟君!あ、でも、学園祭では負けないからね!」
「今度こそ負けそうですね…」
アリスの宣戦布告に弱腰で答えるクラム。
「全力でやってよ!私も今度は油断しない、最初から本気でやるから!」
「殺さないでいただけると助かります」
割と本気で。そう思いながら、この日は何事もなく、アリスを王城まで送り届けた。
「やっぱり、会長とクラム君って」
「いえ、何度も申し上げましたが「付き合ってるよー!」付き合ってません。会長、虚偽の情報を流さないで下さい」
「どっちなんですか…?」
「だから付き合ってるって」
「『姉上』、もう弟とは呼ばせませんよ?」
「…付き合ってません」
クラムの『姉上』サインは、「それ以上図にのるな」という、体のいい脅しである。流石にアリスもそれには逆らえず、大人しく訂正した様だ。
「…じゃぁ何で、一緒に帰ってるんですか?」
「よくわかりませんが、聖王陛下から命じられた事なので」
「そうなんですか。…もしかしたらいずれ、婚約とかの話になりそうですね」
「笑えない話ですね。いくらまぐれが重なったとしても、平民が王族と結ばれるなど」
「確かに例がありませんが、そもそも王族以外でアストレア様の力を使える存在にも前例がありませんよ。クラム君ならば特例だと、諸勢力も認めざるを得ないのではないでしょうか」
「…」
そう言われると如何しようもない。「どちらにしろ想い人がいるので無理」という言葉は、口が裂けても言えない。
彼らは貴族。王に仕えるものたちだ。その一人娘よりも想い人を優先する様な平民には、良い印象は持てないに違いない。
(会長には悪いが、そんなことにならない様に祈ろう)
クラムは別に鈍感というわけではなく、人の好意というものはしっかりと気づくことができる。知った上で拒絶しているのだ。「その想いは要らない」と。
それを理解しながらも、まだアリスは諦める気がない様だ。彼女にとっても初恋に当たるこの想いは、そう簡単には離す気になれないらしい。
報われぬ恋だと知っていても想い続ける者。報われぬと知らず想い続ける者。
クラムには彼女らを救う気はない。彼はセレシア以外を愛する気がないのだから。
願くば彼女らに、確かな救済と幸福を。
まるで他人事の様に、クラムは願うのだった。




