22話 まだ、早い。
「おめでとうございます。さすがはクラム様ですね」
「…あぁ、ありがとう。それにしてもだいぶ強制されたな、お前」
時系列は遡り、親善大会直後。クラムとセレシアの会話である。
「えぇ。昔の口調に戻そうにも、なぜか出来なくてですね」
「いや、今のお前には、そっちの方が似合ってるよ」
「ふふっ、そうですか。ありがとうございます」
動じない、動じない…と念じていたクラムだが、
「あらあら。もう2回目ですのに、まだ慣れないのですか?」
「…お前、分かってやってるだろ」
確信した。こいつ、笑顔に『魅了』の魔法をかけてやがる。
クラムは忌々しげにセレシアの顔を見るが、
「まぁまぁ。それにしても、王女様だけではなく王子様まで倒してしまわれるとは、私もなんだか誇らしいです」
「…っ、そうか。そう言ってもらえると、頑張った甲斐がある」
「えぇ、本当に誇らしいです。まるで自分のことの様に」
突然の、聖女からの抱擁。
そんな事やっていいのかと思いつつ、疲れた体が完全に癒される感じがした。恐らくだが、『ハイヒール』でのかけてくれたのだろう。
「…む?これは、王女様の匂いでしょうか」
「鼻が良いな、お前。言っておくが『何もなかった』ぞ」
「えぇ、信じておりますよ。最も、指輪がある限りそんなことにはならないと思いますが」
「まぁな、そんな意思もないし、そんな事実もない。恥ずかしくて言いづらいが、他の女性に興味などないよ」
「まぁ、遠回しな言い方ですこと。殿方ならもっとこう、直接的に愛を語って見てはどうですか?」
村でクラムが振った理由も、その本心も全て見抜いているからこその、セレシアの言葉。
「まだ、早いかな。君の隣に立てるほど、俺には足場が整っていない」
「むぅ。そんなこと如何にでもなりますのに。…でも、分かりました。きっといつか、貴方の口から聞かせて下さいよ」
「あぁ、いつか、な」
「…待つとは言いましたが、あまり後回しにしないで下さいね」
「…考えておく」
クラムの遠回しな『返事』に、セレシアは頬を膨らませながらも、幾分か満足した様だ。
願わくば、この選択を後悔することがないよう。クラムは心の奥底で、そう願った。
『現し身よ。如何やら彼は随分と、臆病なようですね』
「まぁまぁ、そう言わないで下さい。ああいう人だからこそ、離れていても想い続けられるのですから」
『あなたに危機が迫っています。もしかしたら、「言葉」は聞けなくなるかもしれませんよ』
彼女に宿りし神からの『警告』。それを、
「いえ。そのようなことはございません。私に危機が訪れたならば、たとえ時空を超えてでも、彼は助けにきてくれますから」
『指輪の力ですか。あの男、自らの後悔を弟子に押し付けるとは』
「私たちはそれで助かっているのですから、文句はありませんよ」
セレシアが力強く突っぱねる。神は彼女と、その伴侶の未来を憂い、
『世界よ、二人に祝福をーー』
彼女らの幸福な未来を、願った。




