20話 最早恒例だ。
「いやぁ、これからは毎日弟君と一緒できるとはねぇ!」
「任務ですから。そうでなければ」
「つれないなぁ。そう言えば弟君、私との結婚話断ったそうじゃない?どうしてー?」
「どうしてって。ーー俺には他に相手がいてですね」
「振ったんでしょ?その人のこと」
「…なんで知ってるんですか」
「知り合いだから!」
「えぇ…」
最早当たり前となった、アリスの城までの護衛。エルフレアから正式に任務として命令されては断りようがない。
「あ、そうそう。私、『諦めないから』ね!」
「ーーっ」
何故だろうか。今一瞬、アリスがセレシアの様に見えた。そう言えば、彼女は姿形も、その声も、魔法も何処と無くセレシアに似ている。
(いや、まさか、な)
幻想だろう、とクラムは断じる。しかし思えば、アリスがベタベタ張り付いてくるのには、彼はさほど嫌悪感を抱いていなかった(それにクラムは気づいていないのだが)。
「 うふふふー♪」
「離れて下さい。護衛ではあってもデートではないのですよ」
「え、違うの?」
「違います。任務です」
「えー。…あ、そうだ!じゃぁ、あなたに『第一王女として』任務を与えます!『私とデートしなさい』!」
(な、なんて横暴なんだ…)
色恋沙汰に身分の力を持ち込んでくる姉貴分。どうしたものかと思っていたクラムだが、いい返しを思いついた。
「そうですか。分かりましたが、まさか俺の姉を名乗っている人物が、『弟の感情を完璧に無視する様な酷い人』であったとは…」
「…ちょっと待って、今の無しで」
「いえいえ、大丈夫ですよ?ただこれからは弟ではなく、クラムとおよび下さい」
「ちょっと待って弟君⁉︎悪かったから!私が悪かったからー!」
クラムがアリスを無視してスタスタ歩いていく。半べそをかきながら、それをアリスが追いかける。
ちゃんと警護はしている。何が起ころうが彼女を守る算段はできている。
「仕方有りませんね。今回は見逃します」
「あ、ありがとぉ…」
「もうしないで下さいよ」
完全に泣き顔になってる王女。その本人はポンコツの姉を見る様な優しい表情だったが、その顔から暖かさがスゥーっと消えて行った。
「今度は何だ、仮面。偵察が終わって襲撃にでもきたか」
「まぁその通りですよ。今度は前回の様にはーー⁉︎」
仮面が驚愕する。俺の右手を見てだろうか。
「まさか、それは」
「おいおい、ターゲットの成長くらい逐一記録しておかないのか?情けない」
悪役にあるまじく、敵対者の成長を関知していなかったらしい。
「素晴らしい!君こそまさに、我らが楽園の主に」
「なるものか。テロ組織のリーダーになど」
金色の炎が吹き上がり、仮面を一瞬で焼き払う。最早前回の邂逅の時の力とは別次元のものだ。
「ふふふ、これはこれは、計画を変更する必要がありますねぇ」
しかしながら。 仮面が残した一言が、クラムの心を妙にざわつかせた。




