19話 頭痛が消えた。
「そう言えば、頭痛が消えていたな…」
戦闘中は極度の集中で気がつかなかったが、謎の炎環の紋様が右手の甲に現れてから、どうも頭痛がしなくなった。
現在は学園長のエルフレア校長(入学式から最近に至るまで全く姿を見ていなかった)の許可をもらい、学園の禁書庫でこの現象について調査していた。
エルフレア=フォン=スカーレッド(本当はこれよりずっと長いのだが、今回は省略する)。聖王国立魔法学院校長にして、宮廷所属特務部隊隊長。彼女の談によると、『優秀な人材を面倒な手続きなしで引き抜ける』と言う理由があり兼任しているそうだ。…若干、学園の方がおざなりになっているが。
「あった。ーーこれか」
どうやら彼女はクラムの身に起こった現象について詳しく知っているらしく、答えが記されている本の在り処を教えてくれていた。
その本によると、クラムの身に起こった現象は『全く新しい魔力回路の形成』だそうだ。王族でも一部の人間のみが発症する物らしく、彼は自分の出自にほんの少し『興味』を持った。恐らくあの炎環の出現が関連しているのだろう。その文様についての情報は、この本には載っていなかったが。
(まぁ、どんな理由かは知らんが、『居てはいけない』から放逐されたのだろう。カーロン先生がいて助かった)
因みにカーロンとクラムの出会いは10年も前に遡るが、カーロンはその時から姿形が全く変わっていない。彼は不老不死か何かなのだろうか?と、クラムは疑う。
「それと…ん?『エレスハイム帝国の歴代王の一部に見られる不老不死の傾向』、だと?」
カーロン先生は元王族か何かなのだろうか?そう言えば彼は、自分の過去については『色々恥ずかしい事だらけだから秘密で』と言っており、これについてはクラムがいくらせがんでも教えてくれなかった。
エルフレアから渡された書物の在り処のメモは2枚。もう一つの本に書いてあった情報により、彼女が『選択するのは君だ』と言っていた意味が、ようやくわかってきた。
「選択するも何も、追放された国に行ってもいい事はないだろうに」
クラムは即決した。ーー即ち、『帝国になど行かない』と言うことを。
これは聖王からの『要請』によるものも多い。
「もし君が自分の出自を知って、その国か、この国かどちらかを選ばねばならなくなった時。私としてはできれば、こちらを選んでほしい」
別れ際に告げられた一言。クラムにとってはまだ見ぬ帝国などよりも、慣れ親しんだ聖王国の方がよほど大事なのである。
(何より、セレシアの近くを離れるつもりはない)
そう思った彼の指輪が、赤く輝いた気がした。




