18話 縁談は困る。
「…と言うわけだ。本当に困ったものだよ」
「返す言葉もございません」
アストレア聖王国の現国王、パーシヴァル=ノベル=アストレアの『愚痴』を、クラムは平謝りしながら聞いていた。
「まぁ、聖王国としては嬉しいことではあるのだが。アリスに『神剣の譲渡』ができることも分かったし、悪い事だけでもないんだがね」
王宮の一室。
今まで散々愚痴を吐いてきた王は、
「そうだ、君に言わなければならないことがあったんだ」
ふと、 何かを思い出した。
「言わなければならないこと、ですか」
「あぁ、そうだ。君は我らが女神の力を使える、数少ない人間だ。アリスですらまぁ、あそこまではいかないだろう。…『声』は聞いたのかい?」
「はい。『王国に負けるのは気に入らないから力を貸す』と」
「女神様がそのようなことを…くくく、神もただの木偶ではないと言うことか。あぁ、今の言葉は忘れてくれよ?神罰が下る」
「は、はぁ…」
付いていけないのは親譲りだったようだ。『この王あってあの王女あり』である。
「それで、だ。王家としては出来れば、君の『血』を取り込みたいのだがーー」
「ーーそれは、『命令』でございますか」
「いや、これは『提案』だ。なんせ言ってしまえば一平民に公爵の地位を与えると言うことだからね。こう考えると問題しかないし、本人の意思も尊重せねば神罰が下る」
何のことか、クラムは大体予想がついた。
「アリスと結婚して、王家に入ってくれないか?君の存在があれば、王家一優秀なアリスを女王にすることもできるんだ」
「申し訳ございませんが、その縁談、お断りさせていただきます」
国王相手にこの物言い。礼節をわきまえぬ平民だと言われても仕方がないが、彼にはセレシア以外に妻を娶る気はないのだ。
「想い人でもいるのかね?ーーといっても、わかりきってはいるんだが」
「ご想像の通りでございます、陛下」
「聖女セレシア、か。いや、それなら好都合か」
「…陛下?」
「いや、こちらの話だ。君が『セレシア君』と結婚してくれると言うのなら、こちらとしても都合がいい結果になりそうだ、というね。どう言うことかはまだ言えないけど、それだったらさっきの縁談、無かったことにしよう」
「…ありがとうございます」
どうやら危機は去ったようで、クラムはホッとした。この世の終わりが訪れる所だった。
「あぁそれと。貴族連中が君を我が物にしようと躍起になってるようでね。鬱陶しいから君を、宮廷所属の特務部隊の末席に加えておくよ」
「ーーえっ」
「とはいっても名ばかりだ。君はまだ学生。所属だけはさせておくが任務は与えない。取り敢えずは学業に専念して、学園を卒業したら国のために働いてくれたまえ」
「ーー」
「君には十分な素質がある。それは特務部隊の隊長エルフレアも、娘のアリスも、そして私も認める所だ」
「ーー特務部隊に入る事は、私の夢でした」
「そうなのか、ーーおめでとう。君の夢を叶えられた事を、とても嬉しく思うよ」
『この王、悪魔かと思えば神だった様だ』と、クラムは内心とても不敬な評価の変更を行った。
『 15にして特務部隊に入った』と言う事実は、クラムの人生に大きな影響を与えるのだが、今の彼には、そんな事は知る由もなかった。




