15話 奮い立つ。
「それでは、グラムス王国とアストレア聖王国の魔法使いによる親善大会を開始する」
色々と長いお話が続いたが、いよいよ本番である。
本大会はブロック戦方式になっており、一人最低3戦はできる仕組みになっている。
フローラ、クラム、グレイスの三人が登場するのは午前の部。今回は個人戦であり、一人一人の実力が試される。
最初に出番が回ってきたのはグレイス。相手は水属性魔法の使い手。――全くの鴨である。
「両者、始め」
グレイスの初戦が始まる。ブロック戦であるため、『手の内を隠す』という行動も重要になってくる。
「――ふっ」
黒炎が一閃する。相手は水魔法で防壁を作るが、グレイスの魔法にそれは通じない。
当たり前のように炎弾が防壁を貫通し、水魔法使いが瞬殺される。――なお、死んではいない。魔法使いは自分の魔法が相手に与える影響をコントロールする事ができ、こういった大会ではどんな攻撃が直撃しようが人は死なない。精神や生命力そのものにダメージを与えるのであって、肉体に損傷を負わせるわけではないのだ。最も、戦場では当たり前のように人が魔法で殺されるが。
聖王国側からは歓声が。クラムは感心し、フローラは何の関心も示していない。
次はフローラである。相手は火属性。――苦手な属性だが、どうということはない。
フローラの上級生にあたる相手だが、水魔法と混合させた『水蒸気』相手に『炎』は無力であり、じわじわと魔力を削られていった相手は10分ほどで降伏する。
最後はクラム。ちなみに、三人はそれぞれ違うブロックだ。彼の相手はモノフィー。土属性使いである。
「よろしくお願いします」
「えぇ、よろしくお願いします」
戦闘開始。堅牢なゴーレムがクラムに迫るが、関節の各所が爆発し直ぐに機能停止に陥った。
ただ、動かぬ木偶と化したゴーレムは『視界を塞ぐ』という重要な仕事をして、クラムの相手の次の魔法が完成するまでの間を生み出した。
「邪魔だな、これ」
ゴーレムを吹き飛ばす。そのクラムの足元から、無数の杭が生えてきた。
高速移動で回避するクラムだが、それを追って杭がどんどん生えてくる。さらに、進行方向には巨大なゴーレムの鉄拳が。万事休すかと思われたが、
「――っ」
一瞬にしてゴーレムがばらばらに切り裂かれる。足元の杭はなぜか溶解し、彼の元へ届いていない。
「ふぅ、危ない」
ただ、それで終わるのならば話は早いだろう。
「『天の槍』」
空中に浮遊していたゴーレムの岩塊が無数の槍となってクラムに襲い掛かる。上からの攻撃に対応する為に剣を振るったクラムに、下から杭が襲い掛かる。それを防いだクラムに、横から土で象どられた竜爪が襲い掛かる。
「中々やるな、彼は」
「だが流石に、彼女には敵わないのでは?」
観客はクラムの腕前に感心しているが、当の彼には珍しく余裕がない。
三段構えの攻撃にはクラムも苦戦し、高速移動でギリギリ回避する。その彼にゴーレム達が四方から攻撃を仕掛け、彼はそれを全て切り裂く。彼は防戦一方で攻撃が一度もできておらず、ここまで見ただけではクラムのほうが劣勢に見えるがーー
「…これは」
「えぇ、『詰み』です」
ようやくクラムの攻撃が開始され、炎の槍が少女に殺到する。それをゴーレムの盾で防いだ彼女は、いつの間にか散布されていた『誘爆式』の炎属性魔法の餌食となり、実質『一撃』で敗北を喫した。
「俺が一番危なかったな…」
生徒会の優しい先輩にも、全くもって容赦のないクラムだった。完全な外道である。
クラムの対戦相手の少女、モノフィーはクラムのブロックにおいて優勝候補とされていた王国側の上級生であり、それを下したクラムには多方面から注目が集まったのだが、観客達はまだ、彼の全力を目にしてはいなかった。




