14話 特訓する。
「個人戦と言っても、具体的には何を鍛えればよいのでしょうか」
王国との親善大会に出ることになったフローラ、クラム、グレイスの三人だが、フローラは実戦経験が乏しいらしく、色々と困るところがあるようだ。
「そうだな…フローラの戦い方と言えば、鉄壁の守りを維持しながらじわじわと相手を削っていく方法だから、防壁の強化や相手の攻撃への対応とか、そういうところを鍛えればいいんじゃないかな」
「それもそうだが、攻撃面も強化しなければ、押し切れなくて敗北するかもしれん」
しっかりとアドバイスを挟むグレイス。フローラはさらに首を傾げて、
「と、言われましても。うーん。どんな訓練方法がありますか?」
「模擬戦闘しかないのではないか、それは」
「全方位からの攻撃を耐える訓練とか、防御しながら攻撃する訓練とかいろいろあるだろう…」
実戦厨のクラム氏。グレイスのほうがよほど冷静で、的確なアドバイスをフローラに与えている。
「…そうか。まぁ、時間もない。思い付いたら、すぐにやってみようか」
「そうですね。あと一週間ですし」
「おい待て。具体的な目標もなしにやっても、大した結果は出んぞ!」
天才肌のクラムには、『計画』というものが存在しない。それにフローラが触発されては、取り返しのつかないことになる。
「えぇ…うーん、そうですね。目標としては、『一回くらいは勝ちたい』と言ったところでしょうか」
「ブロック戦だしな、これ」
「あぁ。一度負けてもすぐに敗退というわけではない。そこがこの大会の長所だ。
それで、具体的な訓練方法だが…。まずは、自分がどこまでできるか把握するところから、だだろうか」
会話の主導権が完全にグレイスに移った。実力的にはクラムのほうが上だが、『教える』という点に関してはグレイスのほうが達者である。
場所を移し、闘技場へ。
「対戦相手の指標がわからない以上、取り敢えずは『クラムの魔法をどこまで耐えられるか』というところで実力を測ってみようか」
「はい。よろしくお願いします、クラム君」
フローラとしてはグレイスが口をはさんできたことに内心むっとしていたが、クラムが一緒に訓練してくれるなら別にいいらしく、困惑した顔は元通りになっていた。なお、グレイスに対しての回答は何一つないのだが。(彼女の言葉はすべてクラムに向けられたものだ)
「あぁ、クラム。最初は軽く、徐々に威力や手数を増やしてみてくれ」
「分かった。…お前のほうが教師に向いてそうだな」
「お前のやり方がおかしいだけだ。全く、これだから天才は」
クラムもセレシアも天才肌であり、その二人がともに切磋琢磨したということは、つまりそういうことなのである。普通の人には追い付けるはずがない。
それはさておき、クラムとグレイスによるフローラの特訓は順調に進行し、いよいよ大会当日になった。
王国と聖王国の交流戦。一年に一度の大きな行事が、その幕を上げる――




