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幼馴染は聖女らしい。  作者: PARO
第1部 幼馴染は聖女らしい。
14/77

13話 変な人と戦うことになった。

今回は長文です。

「いきなり招待されても困ります。しかるべき段取りを経てから、お願いしたいのですが」

「そういわれると弱いですねぇ。一刻も早くお呼びしたくて、ついついすっぽかしてしまいました。――さて、それではごゆるりと、永遠にお楽しみください」

「この何もない、花畑を、ですか?生憎とこういうものは見飽きているのです。もっと他のものはありませんか?」


 仮面の魔法使いとアリスの会話。クラムは仮面のかすかな動きを察知し、臨戦態勢に入る。


「申し訳ありません、これしかないのですよ。『完成された理想郷』は」

「そうですか。ならば結構です、帰してください」

「生憎と、そうはいかないんですよねぇ。いやぁ申し訳ない」

「――アストレア聖王国第一王女として命令します。ここから出しなさい」

「『断る』――と、申し上げましたよ」

「もう一度だけ言いますが」

「くどいですねぇ」

「…っ、そうですか。では、『王族の命に背いた者の抹殺』という大義名分のもと――

 『デート邪魔されたのが気に入らないので』あなたをここで処刑します、名も知れぬ魔法使い」

「あらまぁ、こわいですねぇ。まぁ、やれるものならやってみやがれ、と言いたいところですが」


 なんだその理由は――と思いながらも、クラムは脳内から魔法を呼び出す。

 先手はクラムだ。仮面の周囲から無数の炎弾が殺到する。


「そんなもの、効きませんよぉ」

「そうか。では、これで」


 炎弾の爆風は仮面にダメージを与えられず。クラムは次の手に打って出た。啖呵を切ったアリスと言えば、自身が戦うつもりだったのだが『かわいい弟』が頑張ってくれるそうなので、現在のところは静観している。


 炎の色が変わる。青白い揺らめきを見た仮面は微かに表情を変え、

「ほう?あなた、なかなかやりますね」

「はぁ、先生からいただいた魔法は本当に役に立つな」


炎を纏ったクラムの右手が仮面を指し示し、仮面が青白い炎に包まれる。

「ぐ…っ」

「ダメージは負わせられるようだな。この『霊炎』では。避けられない様だし、早々にして詰みか?」


 だがしかし、こういった悪役との戦闘がそう簡単に行くはずもなく、

「まぁ、無駄ですがねぇ」

クラムの背後から仮面が現れる。――無傷で。

 

 霊炎のトラップが起動し、仮面が吹き飛んだ。

「無駄ではないだろう。少しづつ削れているのがわかるぞ、道化」

「――くっ、随分と頭の回る小僧だ」

「邪魔して失礼したな。悪いが王女殿下には指一本触れさせない」


 霊魂にダメージを与えられているため、表面上は無傷に見えても、このまま削れば残り数分だ。

その後も仮面は消えて現れてを繰り返すが、未来予知のように設置されたトラップに引っかかってダメージを負い続けた。

 銀色の剣で切りかかってきたりもしたが、炎の剣で受け止め反撃を見舞う。相手もなかなかのものだがクラムには及ばない。


「くっ、このままではっ…」

「あぁ、終わりだ。大人しく降参したらどうだ?」


動けば動くほど消耗するが、止まると大打撃を見舞われる。動きは完全に読まれ、戦況は完全に掌握されている。

 

 しかし。仮面の悪夢のような、明らかな『詰み』の状況を変えたのは、あろうことかアリスだった。


「――うーん。何だか任せっきりというのもねぇ。…弟君、交代。今度は私の出番!」

「え?…いやいや会長」

「弟君にかっこいい所見せたくなっちゃった。特等席(そこ)で見ててね♪」

「え、えぇ…」

「お姉さん命令」

「は、はい…」


 予想外の事態が起こり、王女(アリス)が出張ることとなった。


「トラップは解除していいよ」

「はぁ、わかりました」

「よしよし、じゃぁ、お姉ちゃん頑張っちゃおーっと」

「――黙ってみていれば、随分と舐められたもの」

「はいそこ。黙ろうか?」

「なっ――」


 話の途中で仮面が吹き飛ばされる。聖属性はこういった敵への対処に長けているため、恐らくは戦いにならないだろう。慌てて態勢を整えた仮面の周りに、領域魔法が顕現する。


「いたぶってもいいけど、弟君の前だからねー。パパっと決めちゃおうかな?」

「くそっ、こんな、容易く…」

「ちょっとこちらの戦力を甘く見すぎじゃないかな?自分の結界に誘い込んだからと言って、勝利が確定するわけじゃないんだよ?」

「ぐっ…」

「じゃぁそろそろ、処断の時間だよ。よーく悔い改めて、来世では頑張ってね」

「くそっ…我ら、『探索者』は、理想郷へと――」

「『浄滅領域』」


 静電気が迸るような音がして、仮面の魔法使いが消滅する。

 そこにある存在をすべて消されては、霊体だろうがどうしようもないのだ。

 あまりにも呆気ないと言えば呆気ないが、彼は内心ひやひやしていた。――というのも、仮面が最後に、呪いや何やらのようなものを放って消えたからだ。

 解除せず残しておいた霊炎トラップ(非炸裂型)に阻まれ影響はなかったが、おっかないとはこの事だ。


「何だったんでしょうね、あの仮面。咬ませ犬にしては道化が過ぎる」

「――『探索者』、ねぇ。一種の偵察かな、これは」


 何か事情を知っていそうなアリスだが、聞いても答えてくれなさそうなので『探索者』については保留にしておく。

 取り敢えず、少しの間彼女を送ることは日課になりそうだった。セレシアへの言い訳を考えておく必要がありそうだ――と、彼は考えていた。

 

 これだけのことがあっても全く心がぶれないというところは、クラムの長所でもあり短所でもあった。百戦錬磨の『つり橋効果』も彼には無力であるようだ。

 姉の恋路はかなり、遠く険しいものになりそうである――という言葉は、危険な目にあった後には不謹慎であるかもしれない。


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