12話 行事に出ることになった。
「グラムス王国との親善大会?」
「えぇ、毎年各学年から数名を選び、決闘方式で競い合う行事よ。弟君の学年だと弟君、フローラさん、グレイス君辺りかしら」
「…見知った顔ぶれですね」
「学年内トップ集団だものね、貴方たち。グレイス君の黒い炎は属性関係を無視しちゃうし、フローラさんの風魔法は鉄壁過ぎて炎属性魔法でも全然破れないし、弟君に至っては魔法の発動が速すぎる上に見えないトラップ群の前に手も足も出ないし」
「会長の聖属性魔法だって、どんな攻撃も寄せ付けない、まさに『最強』と言える物ではないですか。私たちなどまだまだですよ」
「そう?ふふっ、弟君がそう言うなら、私も頑張っちゃおーっと」
どうやらクラム、グレイス、フローラの三人は学年内でもトップの実力を持っていたようだ。模擬戦闘訓練などで、それは大いに証明されている。(尚、序列としてはクラム、フローラ、グレイスの順である。グレイスはフローラに刃を向けることができず、フローラの防壁はクラムによって綺麗に剥がされた)
他にも水属性の使い手であるウォルターや、雷魔法の使い手であるゴルドなど猛者はたくさんいるのだが、それらを押しのけての三すくみである。
下のクラスとはそもそもやっていることが違うらしい。クラム達は落ちる危険性がないので気にする必要もないが。
すぐに出るわけではないが、2週間後とかなり日程が迫っている。大会用に色々と準備が必要だろう。
『作戦会議でもしようか』と思っていたクラムへ、
「今回は個人戦だけど、今後団体戦とかに出ることもありそうだから、作戦会議でもしてみたらどうかしら」
ドンピシャな言葉が降ってきた。
「えぇ。丁度、それについて考えていました」
「おっ、やるなぁ弟君!お姉さんは嬉しいよ!」
随分と陽気な王女である。もっとも、実力はクラムの言う通り『最強』と言えるが。
アリス=ノベル=アストレア。聖王国きっての聖属性魔法の使い手で、領域魔法を自在に操りどんな攻撃も寄せ付けないことから『不可侵の王女』などと呼ばれている。このことからわかる通り、クラムを護衛として連れて王城まで行く必要は全くなく、彼をただ試していただけだったのである。…若干、彼女の欲望が混ざっていたが。
「…仕事終わりです」
「お疲れさまー。皆、今日はもう帰っていいよー」
会長の一言で、生徒会室を出ていく役員の面々。今日もなんだか嫌な予感がしたクラムは、毎日誘われるようになったアリスが王城に着くまでの随伴、もといデートに付き添うことにした。いくら恋愛感情を持たないといったって、アリスは王族である。いたづらに撥ねつけることもできないし、危険を感じたら守るのは当然である。――そのせいで会計のモノフィー先輩に「会長とクラム君ってもしかして、付き合ってるんですか?」などと聞かれる羽目になろうが、仕方のない事である。指輪は寛大であり、こう言った事なら許してくれるようだ。
物騒な雰囲気がしたので『また暗殺者か』と身構えたが、
「――クラム君、下がって」
突然立ち止まり、珍しく真剣にアリスが指示を出す。すると歩いていた地面、眺めていた風景が一瞬にして変化し、
「ようこそお二方、我らが理想郷へ」
白い仮面をつけた魔法使いが、こちらを見て嗤っていた。




