11話 寮生活も楽しい。
「おい、起きろ、クラム」
ルームメイトのグレイスに起こされて、ようやくクラムは目を覚ます。彼の朝は遅いほうなのだ、村では毎日セレシアに起こされていた。
「あぁ、すまないな毎日」
「まったくだ。自覚しているのなら直せ」
「無理な相談だな、それは…」
身支度を整え、食堂へ。朝食を済ませ、授業へ向かう。無駄知識を放出しなくなったクラムは、的確な回答で先生の授業を円滑に進める。
生徒会の仕事も同様で、6人分の仕事はできるようになった。とにかく効率が異常なほどに高いのだ。お陰で彼の姉(と自称しているが血は繋がっていない)のアリスはとても嬉しそうだ。
それが終わると喫茶店へ。コーヒーをがぶがぶ飲み、食堂で夕食をとる。清掃を行ってから入浴し、授業の予習・復習を行ってから就寝だ。規則正しい生活を送り、能力の向上に努める。
「おい、起きろ、クラム」
次の日もグレイスに起こされる。一向に改善する気配がないので、グレイスはもう諦めていた。
グレイスの日課と言えば、日の昇前に起きて走り込み、素振り、精神統一と一通り行ってから魔導書を読み込むという、なんとも勤勉なものだ。もう彼が首席でいいだろうと思うが、本で得た知識と実践してみて得た知識では雲泥の差、越えられない壁があるのだ。
「朝早く起きてそんなことをやってるのか、俺には真似できんな」
「この位普通だ。体がなまってしまったら、いざという時にどうしようもない」
「…む、それはそうだな」
クラムの弱点は寝起きなのではないか?とグレイスは疑う。なるほど確かに、この状態のクラムになら、グレイスでも勝てるかもしれない。――もっとも、クラムの寝ぼけは朝の1分程度だけだが。
「…そういえばお前、何時も夜に何をやっているのだ。俺より明らかに寝るのが遅いだろう」
グレイスは朝だが、クラムには夜の日課がある。――やましいものではない、決して。
自身の記憶の中に潜り、授業を追体験し得た知識を定着させる。魔法があってこそできる芸当だ。
彼はもともと予習が不要なほどに知識をため込んでおり、得た知識もこの方法で完全に定着する。
他にも精神統一や魔力回路の清掃などを行っている。回路のメンテナンス…と言うより改良(回路の効率化、性能強化など)は思いのほか時間がかかり、いつも寝る時間が遅くなるのだ。
「…回路の強化、だと。俺にもできるか、それは」
「まぁ、できないことはない。才能がないと慣れるまでに時間がかかるが」
「教えてくれ。頼む」
「分かった。人に教えるのは悪い事ではないからな」
幸運ながらグレイスには才能があり、彼の寝る時間はそれまでより少し遅くなったが、彼は全く体調を崩すことなく、寧ろその能力を順調に伸ばしていったのだった。
後に『魔剣士』と呼ばれる彼の能力の源泉の一つは、この魔力回路の大改造にあるのかもしれない。




