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紅蓮の挑戦者  作者: 水谷 空
魔女編
39/45

38 地下Ⅱ

更新が遅くなり大変申し訳ありません。

こんな私ですが、今後とも『紅蓮の挑戦者』をよろしくお願いします。


 ──ミカミとの試合が始まって約三十分が経過した。

 ここまで各々(おのおの)武器や魔法を振るい、ミカミに一撃を加えようとするも未だ有効打はなし。いくら攻撃しても攻撃そのものが逸らされたり、『衝波』という技で魔法が無効化されたりしてしまう。


 また、原因はそれだけでなく……。


「おい邪魔だ! 退けっ!!」

「貴方こそ前に出ないでよ」

「ふ、二人共喧嘩しないで……」

「うるせぇっ! てめぇは口を出すな、この役立ず!」


 面倒なことに、Aクラス内での内紛も起き始めていた。

 今もリリーと連携していたハルカと、単独で先行するドルガとの間で言い争いが起きている。

 俺からしたらとてもどうでも良いことだが、こう一々揉められていては邪魔で仕方ない。


「はぁぁあっ!」


 その横ではカイトが『紙剣』を振るい、一人でミカミに肉薄していた。

 ヒットアンドアウェイの形をとり、鋭い突きと紙の槍で巧みに攻めるカイト。しかし、ミカミは手慣れたようにカイトの攻撃を逸らし、隙あらば足技を繰り出していく。


「くっ……」


 カイトはミカミの蹴りを避けるべく後方に跳躍。勢いを殺しつつ、俺の近くに着地した。


「なかなか決まりませんね」

「そうだな」

「リュウヤはもう降参ですか?」

「違う。ただやる気がないだけだ」

「やる気、ですか」


 始めは俺も『紅葉』で応戦していたのだが、徐々に攻撃するやる気が失せてしまった。

 最初の一発を除いて、ミカミは防衛以外で攻撃を加えてくることもなく、様子見の姿勢を貫いている。それに加えて、俺が動かなくとも他の奴らが攻めてくれるのだ。こんな状況下では、積極的に攻めようとはならない。


「ふむ。そろそろか」


 ミカミはポツリと言葉を漏らしてから、懐から丸めた鞭を取り出した。


「諸君らに伝えておく。今から私は積極的に攻撃していく。手加減はしてやるが、甘く考えていると痛い目を見るぞ」


 ミカミは言い終わるや否や、手にした鞭を伸ばし、俺とカイトに向けて横一線に振るった。

 しかし、俺たちとミカミの間にはまだ距離がある。直接鞭が当たることはな──


 ──油断したその時、しなる鞭から魔力が放たれた!


「ぐっ……『紅葉狩り』……!」


 咄嗟に『紅葉』の固有スキル『紅葉狩り』を発動させ、魔力を消滅させる。


「助かりました、リュウヤ」


 近くにいるカイトが礼を述べたが、別に助けたかった訳ではないので返答はしない。

 それよりも今は今の技だ。

 見た感じとしては、入学式のエピデンドラムが放った『波』に似ていた。

 鞭の先端から魔力を放出しているのだろうか……。


「おい、そこ。いつまで揉めている」


 間を置くことなく、ミカミは未だに睨み合っているドルガとハルカに向けて鞭を打った。今度は横にではなく、素早く打ち、すぐに引く形でだ。

 すると、魔力はまるで魔力弾のような状態で打ち出された。それどころか、普通の魔力弾に比べて鋭い一撃だ。


「チッ……!」

「リリー、避けるわよ!」

「え、えっ……! ああっ!!」


 ドルガはバックステップで、ハルカはリリーの襟首を掴み上げ、跳躍して攻撃を回避した。

 魔力はそのまま直進し、壁を少し凹ました。


 なんて威力だよ……。


「……っとと……」


 そうこう観察していると、また魔力がこちらに放たれた。

 今度は難なく足を使って避ける。

 それからミカミは手を緩めることなく、鞭を振るい、俺たちに魔力を飛ばし始めた。

 魔力の軌道は鞭の動きを見ていれば大体予測できるのだが、これでは距離を縮めれない。それに避けるのが面倒だ。


「『模倣コピー』発動」


 手の『印』に意識を集中させ、『模倣コピー』を発動。空いている左手に『テトラブレイク』の一方のみを生成する。

 銃口をミカミに向け、引き金を引く。三発の『土弾ブレット』が勢いよく放たれる。


「はあぁぁあ!」

「『紙剣シケン』!」


 それに合わせるかのように、ハルカが『火弾ファイアボール』を四発、カイトが紙の槍を二つ撃った。

 合計九発がミカミに迫る。


「そう来たか。ならば……」


 ミカミは鞭を操り、紙の槍を除いた七発の弾丸を順に触れていった。

 それらの弾丸の軌道はぐにゃりと曲がり、『土弾ブレット』はハルカへ、『火弾ファイアボール』はカイトへ向かう。二人はそれぞれの武器で弾丸を相殺した。

 残った紙の槍には横から鞭打ち、無理矢理に軌道変更。部屋の天井と床に一本ずつ槍が刺さった。


「おらぁあぁ……ッ!」


 鞭でのガードを優先したため、ミカミにほんの少し隙が見られた。そこを狙ってドルガがミカミに接近し、『業腕ごうわん』を振り抜く。

 狙われたミカミは慌てることなく、鞭で前方の地面を叩いた。すると、ミカミの身体は後方へと飛んだ。遅れてドルガの拳が何も無い空をきった。


「『付与・電雷スパーク』!」


 ドルガはそこで諦めることなく、『業腕ごうわん』に電撃を纏わせて追撃をかける。


「『衝波』」


 ミカミもミカミで、『衝波』で電撃を消してから、振るわれる拳一撃一撃を鞭で払って対処していく。


「リュウヤ、少しいいですか」


 二人の攻防を眺めていると、カイトが声をかけてきた。


「なんだ、カイト」

「少し協力して頂けませんか。私と、あとハルカ、タンポポ、リリーと」

「…………? どういうことだ?」


 一応、カイトから協力の話について耳打ちしてもらう。それはとある作戦の話だった。


「どうですか、リュウヤ」

「……悪くない。だが、やるメリットはなんだ?」

「何もしないよりは……良くないですか?」

「…………一理はある」

「やってもらえますか?」

「やってやるんじゃない。俺がやるだけだ」

「そうですか」


 カイトははにかみながら答え、残りの三人を呼んだ。

 キサラギは何故かこちらに来なかった。


「あら、リュウヤも一枚噛むのね」

「まあな」

「どうやったんですか、カイトさん」

「特に何もしてませんよ」

「無駄話はいい。やるならさっさとやるぞ」

「そうね」「はい!」


 まずは第一段階。俺とリリーの遠距離からの射撃だ。


「ド、ドルガさん……! すみません、そこを空けて下さい!」


 リリーがミカミに攻め続けているドルガに呼びかけた。


「はぁあ?! 何言って…………って、おい!!」


 リリーはドルガが退避する前に発砲開始。俺もそれに合わせて『テトラブレイク』の『炎』と『水』を交互に撃っていく。

 ミカミはドルガの相手を止め、鞭で俺たちの射撃に対応し始めた。弾をはじき返したり、軌道を曲げたりしていく。

 それでもなお、俺とリリーは休むことなく撃ち続ける。向かってくる弾に関しては、カイトとハルカが対応していく。

 

「あっ! 危ない!」


 その最中、壁にもたれかかり端末を見ているマリーゴールドの方へ一発の魔力弾が流れた。撃った本人のリリーが声を上げて、注意する。


「チッ……」


 嫌そうな顔を浮かべるマリーゴールドは、舌打ちをしてから歩いてその場を離れた。魔力弾は壁に被弾し、マリーゴールドに被害はなかった。


「チッ……。『テリター』ONオン


 マリーゴールドはもう一度舌打ちをして、ミカミに向けて一つの魔法を発動させた。

 地面にミカミを中心とした正方形の線が引かれ、取り囲むように結界が貼られた。結界の壁の高さは、ミカミの背丈より少し高いぐらいだ。

 結界に俺とリリーの弾丸が触れると、それらは結界を超えることなく、壁に触れるとすぐに消滅してしまった。


「……なるほど。魔力遮断か」


 ミカミは内から結界を破ろうとするも、全く歯が立たない様子だ。どうやらミカミの言う通り、外からだけでなく、家からの魔力を絶つ結界らしい。

 どうにかして結界から逃げ出そうと、移動したり壁を飛び越えたり試みているが、ミカミの動きに合わせて結界も移動しまう有様だ。これでは作戦が遂行できない。


「リリー。手を緩めるなよ」

「え……。ちょっ、リュウヤさん!?」


 射撃をリリーに任せ、俺は結界へと近づくことにした。

 移動しながら武器を『テトラブレイク』から『紅葉』へと換装する。


「『紅葉狩り』!」


 ここは力づくで結界を破壊することに決定し、『紅葉』で結界に切りつけた。鈍い感触があった後、結界はキィインと音を立てて砕けた。


「やるな、クサナギ・リュウヤ」


 俺は返答することなく、ミカミの近くから離脱。『テトラブレイク』を生成し、再度銃撃を仕掛ける。


「『衝波』」


 そして銃撃に耐えかねたミカミが、ついに例の技を発動させた。

 ミカミに迫っていた魔力弾や『炎』が一斉に消え失せ、それを合図にハルカが『アポロン』を抜いた。


「『炎雨ファイアレイン』!」


 『アポロン』を掲げ、初めて聞く技名を発声。変化はすぐに起きる。

 ミカミの頭上に無数の炎の塊がどこからとも無く現れ、ミカミへ降りそそぐ。


「……『衝波』」


 ミカミは避けることをせず、連続する形で『衝波』を使った。『炎雨ファイアレイン』は消えるも、予定通り次にカイトとキサラギが動き出す。


「『紙吹雪の壁コンフェーティウォール』!」

「『空気束縛エアリアルバインド』!」


 『紙剣』を指揮棒のように動かして紙吹雪の集団を操り、ぐるりと円状にミカミを取り囲んだ。同時にキサラギがミカミの鞭に対して拘束系の魔法を掛けた。


「…………ほう……」


 カイトの予想通り、ミカミは『衝波』を使ってこない。いや、使()()()()という方が正しいかもしれない。


「タンポポ! リュウヤ!」

「了解よ! 『空気段ステップ』!」

「『探索サーチ』」


 キサラギが目に見えない空気の足場を複数設置し、それを『探索サーチ』により認識。出来た足場を利用し、『紅葉』を手にして開いている紙吹雪の上部へと駆け上がる。


「『炎纏ファイアエンチャント」』!」


 ハルカが俺の『紅葉』の刀身に真っ赤な炎を纏わせる。


 これで……!


 足場を踏み切り、ミカミの頭上から斬り掛か─────


「────だァめぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!」


 俺が踏み切ったところで突然、リリーが大声で叫んだ。

 そして大砲に変形した『銃』を構え、俺に向けて発砲した……!?


次回、トラウマ。そして、試合決着。


次回の更新は、12/3(日)朝7:00を予定しています。


 次回の更新も遅くなりそうなので、前もって報告しておきます。次回は11/27(月)以降となります。決まり次第、後書きには追記します。

 そこで、今週と来週は今までの文章の誤字脱字などの改稿を行いたいと考えています。ストーリー自体には手を触れず、あくまで『読みやすく』をモットーに行っていきます。その際、大変おこがましいのですが、何か改稿にあたりご指摘やアドバイスなど御座いましたら、未熟な私めにご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします。

 読者の皆様に物語を楽しんでいただけるよう、精進します。


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