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紅蓮の挑戦者  作者: 水谷 空
トーナメント編
21/45

20 開会

バトルシーンの表現、まだまだ全然拙いです。


「司会進行は私、キャシー・シューフルールが勤めさせていただきます。どうぞ、よろしくおねがいしまーす!」

「えっ、キャシーちゃん! えー!! 生キャシーちゃんだ!」


 司会のシューフルールが自己紹介すると、俺の隣に座っているリリーが興奮したように声を上げた。


「なんだ。有名人か?」

「リュウヤさん知らないの……!? キャシー・シューフルールといえばこの『学園』の人気者だよ! その人気から『学園』のアイドルとも言われているし、実力も『学園』の上位十名の一人!

 うわー、すごい。すごいよ!」

「ふーん……」


 『学園』の上位十名がどれほど強いのか分からないが、リリーの話を聞いて少し興味が湧いてきた。

 いつか戦ってみたいものだ。


「開会式を始める前に、まずはモニターを出します。あ、そうそう。初見の人は注意してくださいねー。テロとかではないので、ご心配なく」


 シューフルールがそう言うと、ヴーーーーと低い音が聞こえ始めた。それと同時に、俺の手の甲にある『印』も輝いた。


 ……何をする気だ?


 俺が少し身構えたその時――――――。


 突然ボンッ、と音がして、それぞれのステージ上空にかなり大きめの黒い立方体が現れた。


 俺は何事かと思い、懐に隠している『紅葉』に手をかけた。


「リュウヤ、大丈夫よ。大人しく見てなさい」


 警戒する俺を見たハルカが、声をかけてきた。

 ハルカの様子はとても落ち着いており、危険などないと諭すかのようだ。


「…………分かった」


 ここはハルカの言葉を信じることにして、俺は静かに座り直した。しかし、危険がないとまだ判断出来ないため、警戒は怠らない。


「はーい、ではではモニターを点けますね! ポチッと!」


 シューフルールの声に合わせて、謎の立方体の側面が光った。すると、どこかの部屋の中と一人の女性が映し出された。

 金髪のツインテールに、青色の目。スラリとした体型をしており、手にはマイクを持っている。一番目を引くポイントとしては、その服装。『学園』の制服ではなく、フリルが多い淡いピンク色のドレス。スカートの丈はかなり短く、靴も踵が高い。


「キャシーちゃん、可愛いー! キャー!」


 何やらリリーが盛り上がっているが、無視するとしよう。


「えー、改めまして、キャシー・シューフルールです。皆さん、私のことみえていますかー?」

「はーーーーーい!!」


 シューフルールが手を振ると、リリーが激しく反応した。

 いい加減、五月蝿うるさい。


「では、モニターの準備もできたところで、早速『開会式』始めちゃいます!」


 シューフルールは、コホンと咳払いをして、司会を再開させた。


「『開会式』といっても、やることは二つ。一つ目は、ルールの確認と諸注意。二つ目は、エキシビションマッチです」


 一つ目は分かるけど…………なんだエキシビションマッチって?


「それでは、ルールの確認から始めていきます。ルールに関しては事前に端末に送信されていると思いますが、確認と一つ追加ルー

ルがあるのでよーく聞いておいてくださいね」

「はーい」


 リリーがしなくていい返事を小さく口にした。

 チラッとリリーを見てみると、その目は爛々としており、ジッと映像を見ていた。

 それほどまでに、シューフルールのことが好きなのか……?


「形式はトーナメント形式の一対一。試合時間と武器につきましては、無制限としています。ですが、魔法は一試合につき一人三種類までです。事前に『受付』にて、次の試合で使う予定の魔法を登録してください。もしも、登録外の魔法を試合中に検知した際は、失格となりますのでご注意を。……あっ、試合ごとに魔法の種類を変えることは大丈夫です! もちろん、その時は『受付』での登録、よろしくね」


 「よろしくね」を言う時にシューフルールがパチッとウインクをした。

 その演出は必要なのだろうか……。


「それと、魔法と魔法を組み合わせて使う合成魔法については、登録している魔法内であれば問題ありません。例えば、私がこの『火花』と『発光フラッシュ』を登録しているとして」


 シューフルールはモニター越しで実演を始めた。右手でパチパチと火花を出し、マイクを持つ左手は明るく発光している。


「こうやって、やるとっ!」


 シューフルールが両手を空に向かって勢いよく振り上げた。

 火花と光はシューフルールの手から離れ、空へ向かって発射。真っ直ぐ打ち上げられた二つは、徐々に近づき合い、パァアン!と音を鳴らして衝突した。

 衝突した二つは分解され、キラキラと光の雨を会場に降らした。


「こんな感じの合成魔法は、登録の魔法にカウントされないので安心してください!」


 シューフルールはニコリと笑みを浮かべた。


「綺麗な魔法ね」

「うん、綺麗。わたしも、こんなの、やってみたい」

「さすがキャシーちゃん!」


 俺としては、さっさと説明を終えてほしい。


「はーい。ちゅうもーく。次の説明に移ります! 次は勝敗判定についてです。ここで追加ルールあります! 端末には『行動不能または自分の意思による降参宣言』と書かれてましたが、2回戦までは『ステージからの落下』も負けとします。明日あすに行う準決勝と決勝にはこのルールは適応されません」


 つまり『場外に出れば負け』か。


「いいですか? わたし、ちゃんと説明しましたよ。場外負けで『そんな話聞いていない』と言われても知りませんからね!」


 ビシッとシューフルールは、こちら側に向けて指を差した。念押しがすごい。


「はい、以上、ルール確認でした。残りは諸注意です。試合に出る時は、『受付』で貰ったバッチを必ず左胸につけてください。バッチは生命活動をモニタリングしています。怪しいものではありません。もしバッチをつけていないと試合には出れません。大切に管理してください」


 最後の『管理』という言葉から察するに、盗難の可能性もあるということだろう。気をつけておこう。


「それと、試合開始三十分以内にステージ上に現れない場合は、不参加となります。この場合は、シード枠となり、ステージ上にいた方は次の試合へ進み、現れなかった方は元からいなかったこととされます。気をつけてください!」


 表現が回りくどいな。普通に『負けとなる』とかでいいだろう。


「それで最後に…………試合中の『殺し』について」


 シューフルールの声が先ほどとは打って変わって、一気に低くなった。殺気も感じる。

 それにより、会場の空気が張り詰めた。


「……意図した『殺し』、不必要な『殺し』に関しては、『学園追放』となります。審議が必要な場合は、後日呼び出します。『学園追放』や審議の内容は、端末で確認ください。…………はい! じゃあ、私からの諸注意はここまででーす! ありがとうございました!」


 脅しのような説明が終わり、シューフルールはコロリと元のテンションに戻った。

 どうやら、シューフルールに対する見方を変える必要があるらしい。かなり厄介そうだ。


「といっても、『開会式』はあと一つ残っています! 続きましては、エキシビションマッチです! その前に、エキシビションマッチを行っていただく二名をお呼びします。お二人共、どうぞ!」


 パチパチとシューフルールが拍手すると、モニターの映像にとある二人が映り込んできた。


「はーい、どうもー。おはよー!」

「…………どうも」


 映し出されたのは、入学式でステージに立っていたミカ・エピテンドラムとハンナ・バーベナル生徒会長だった。

 服装はエピデンドラムは『学園』載せ服、腰にはレイピアが収められた鞘。バーベナル生徒会長は、昨日とほぼ同じドレス姿だ。


「みんな昨日ぶりだし、知ってるとは思うけど一応名乗っとくね。あたしはミカ・エピデンドラム。こっちのちっこいのはハンナ・バーベナル。この『学園』の生徒会長様だ」

「……よろしく」


 自己紹介の内容は、入学式の時のとほぼ一緒だった。


 いったい、何しに来たんだ?


「なーんか、あたし達よく分かんないままキャシーに呼ばれたんだけどさ。なあ、キャシー。今から何すんの? あたし達、そこまで暇じゃないんだけど」


 おいおい、本人達も知らないのかよ。


「すみませーん。このお礼はまた次の機会に必ずしますので! 今回は何卒よろしくお願いします!」

「いやまあ、それはいいんだけどさ。何すればいいの?」

「えっとですね――――――」


 そこから三人は耳打ちで話しだし、何を話しているかこちらには分からなくなった。


 打ち合わせぐらい先に済ませておいてほしいものだ……。


「――――オッケー。その話、乗った」

「……任せて」


 三人が離れた。どうやら打ち合わせは終わったらしい。


「みなさん、お待たせしました! これよりエキシビションマッチを始めます! 内容はこちらのお二人によるトーナメントルールに乗っ取った、三十秒の試合です! こんなの滅多に見られませんよ!!」


 なんかシューフルールのテンション、高くなってないか?


「んじゃ、そっち行くわ」


 エピデンドラムはそう言うと、パチンっと指を鳴らした。すると、映像からエピデンドラムとバーベナル生徒会長の姿が消えた。


 何が起きた……?


「おーい、こっちだこっち」


 エピデンドラムの声が、スピーカーからではなくステージあたりから聞こえてきた。モニターから目を離し、ステージを見てみる。そこには、映像から消えた二人が、それぞれステージ端に立っていた。


 …………気づかなかった。いや、気づ()()かった。


「そんじゃ、始めるとするか」

「…………キャシー。……合図、よろしく」

「はい! それでは…………スタート!」


 シューフルールの合図と共に、エピデンドラムは素早く動きだした。レイピアを抜き、あの入学式で見せた『波』を打ち出す。


「……『障壁シールド』」


 バーベナル生徒会長は魔法名を口にし、じっとその場で『波』を受けた。『波』がぶつかる衝撃が、会場の空気を揺らした。

 エピデンドラムは追い打ちをかけるようにレイピアを何度も振り、『波』を連続で打ち出し続ける。『波』がバーベナル生徒会長の方に衝突する度に、振動が会場に伝わる。


 『波』のせいで砂埃が舞い、バーベナル生徒会長の姿が見えない。……っと、思いきや。砂埃の中から無傷のバーベナル生徒会長が姿を現した。

 エピデンドラムに突っ込むように進んでいく。


「『直線ストレート』」


 エピデンドラムはレイピアを降るのを止め、まだ距離のあるバーベナル生徒会長に向けて踏み込み、レイピアを突き出した。その剣先から、直線の『光』が打ち出される。


 速い。それに、凄い魔力量だ。


 『光』は豪速で進み、バーベナル生徒会長の頬をかすめた。その際、パリンっと何か割れる音もした。


「『直線ストレート』」

「……『障壁シールド三重トリプル』」


 同じようにエピデンドラムが『光』を打ち出す。

 しかし、今度はバーベナル生徒会長の周囲に現れた青い『膜』のようなものに防がれた。


 …………魔力障壁、か?


「……『障壁シールド拡張エクスペンション』」


 バーベナル生徒会長がエピデンドラムを指差す。『膜』がエピデンドラムに向かって伸びていく。


 エピデンドラムはそれを体で受け止めるも、ズズズー……っと少しずつ後退していく。


 あのままではステージから追い出されてしまう。


「そうゆうことか……!『屈折リフレクション』!」


 エピデンドラムが魔法を発動させると、『膜』は上へと伸びていった。

 『膜』から開放されたエピデンドラムは、レイピアを構え直し、バーベナル生徒会長へ攻める。


「……『解除』『障壁シールド三重トリプル領域テリトリー』『振動バイブレーション』」


 バーベナル生徒会長は今ある『膜』を消し、再度『膜』を自分を覆うように半球状に展開。今回は、エピデンドラムに向けてではなく、半球の領域をそのまま全体的に拡大させていく。

 そして、それに合わせてステージの地面が揺れだした。まるで地震のようだ。


「わっわっ! こうなれば……『空間図案スペースデザイン』!」


 不安定な地面に足を取られかけたエピデンドラムは、また別の魔法を発動。先ほどの映像と同じようにパッと姿を消した。


「『直線ストレート』!」

「―――ッ!! 『障壁シールド曲線カーブ』!」


 バーベナル生徒会長の背後に現れたエピデンドラムは、『光』を発射。それを見たバーベナル生徒会長は、咄嗟に魔法を発動。『膜』がユーの字のように現れる。

 それにより、『光』はバーベナル生徒会長に向かわず、『膜』に誘導されるように流れていき、エピデンドラムへ戻っていく。


「『屈折リフレクション』!」


 エピデンドラムは返された『光』を手で払った。『光』はまた方向を変えて、地面へ衝突した。


「『インパ―――』」

「……『プレ―――』」


「はい!! そこまででーーーーす!!! 終わりーー!!」


 レイピアの剣先がバーベナル生徒会長に狙い定め、バーベナル生徒会長が手をレイピアに向けたところで、シューフルールのアナウンスが大音量で流れた。


 その声を聞いて、二人はピタリと動きを止めた。


「お二人共、終わりです! 試合終了です!」

「えっ、もう終わり?」

「…………勝てそうだったのに」

「時間はほんの少しありましたが、このままだとステージが持たないのでおしまいです!」

「あー、それは……確かに」


 エピデンドラムが苦笑いして、頬を少し掻いた。

 今のところステージは壊れていないが、あの様子だと、ステージが壊れるほどのことをしようとしていたのだろう。


 それに加え、二人共息一つ上がっていない。……なんて『力』だ。


 もしこの二人と戦うとなった時、俺は、勝てるだろうか…………。


「はい! ということで、ミカ・エピデンドラムさんとハンナ・バーベナル生徒会長によるエキシビションマッチでした! お二人、ありがとうございました!」

「おう。みんな、頑張ってな」

「…………またどこかで会いましょう」


 バーベナル生徒会長が手を振り、エピデンドラムが指を鳴すと、二人は忽然と姿を消した。


「はい! これにて『開会式』は終了です! みなさん、トーナメント頑張って下さい!」


 こうして、想像よりも激しい『開会式』が終わり、トーナメントの幕が上がった。



次回、1回戦開始。


前回の後書きで1回戦始まると言っておいて、今回書けなくてすみません。次回は必ず1回戦から始まります。


次回の更新は、6/30(金)を予定しています。


6/29 誤字訂正・後書き追記

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