20 開会
バトルシーンの表現、まだまだ全然拙いです。
「司会進行は私、キャシー・シューフルールが勤めさせていただきます。どうぞ、よろしくおねがいしまーす!」
「えっ、キャシーちゃん! えー!! 生キャシーちゃんだ!」
司会のシューフルールが自己紹介すると、俺の隣に座っているリリーが興奮したように声を上げた。
「なんだ。有名人か?」
「リュウヤさん知らないの……!? キャシー・シューフルールといえばこの『学園』の人気者だよ! その人気から『学園』のアイドルとも言われているし、実力も『学園』の上位十名の一人!
うわー、すごい。すごいよ!」
「ふーん……」
『学園』の上位十名がどれほど強いのか分からないが、リリーの話を聞いて少し興味が湧いてきた。
いつか戦ってみたいものだ。
「開会式を始める前に、まずはモニターを出します。あ、そうそう。初見の人は注意してくださいねー。テロとかではないので、ご心配なく」
シューフルールがそう言うと、ヴーーーーと低い音が聞こえ始めた。それと同時に、俺の手の甲にある『印』も輝いた。
……何をする気だ?
俺が少し身構えたその時――――――。
突然ボンッ、と音がして、それぞれのステージ上空にかなり大きめの黒い立方体が現れた。
俺は何事かと思い、懐に隠している『紅葉』に手をかけた。
「リュウヤ、大丈夫よ。大人しく見てなさい」
警戒する俺を見たハルカが、声をかけてきた。
ハルカの様子はとても落ち着いており、危険などないと諭すかのようだ。
「…………分かった」
ここはハルカの言葉を信じることにして、俺は静かに座り直した。しかし、危険がないとまだ判断出来ないため、警戒は怠らない。
「はーい、ではではモニターを点けますね! ポチッと!」
シューフルールの声に合わせて、謎の立方体の側面が光った。すると、どこかの部屋の中と一人の女性が映し出された。
金髪のツインテールに、青色の目。スラリとした体型をしており、手にはマイクを持っている。一番目を引くポイントとしては、その服装。『学園』の制服ではなく、フリルが多い淡いピンク色のドレス。スカートの丈はかなり短く、靴も踵が高い。
「キャシーちゃん、可愛いー! キャー!」
何やらリリーが盛り上がっているが、無視するとしよう。
「えー、改めまして、キャシー・シューフルールです。皆さん、私のことみえていますかー?」
「はーーーーーい!!」
シューフルールが手を振ると、リリーが激しく反応した。
いい加減、五月蝿い。
「では、モニターの準備もできたところで、早速『開会式』始めちゃいます!」
シューフルールは、コホンと咳払いをして、司会を再開させた。
「『開会式』といっても、やることは二つ。一つ目は、ルールの確認と諸注意。二つ目は、エキシビションマッチです」
一つ目は分かるけど…………なんだエキシビションマッチって?
「それでは、ルールの確認から始めていきます。ルールに関しては事前に端末に送信されていると思いますが、確認と一つ追加ルー
ルがあるのでよーく聞いておいてくださいね」
「はーい」
リリーがしなくていい返事を小さく口にした。
チラッとリリーを見てみると、その目は爛々としており、ジッと映像を見ていた。
それほどまでに、シューフルールのことが好きなのか……?
「形式はトーナメント形式の一対一。試合時間と武器につきましては、無制限としています。ですが、魔法は一試合につき一人三種類までです。事前に『受付』にて、次の試合で使う予定の魔法を登録してください。もしも、登録外の魔法を試合中に検知した際は、失格となりますのでご注意を。……あっ、試合ごとに魔法の種類を変えることは大丈夫です! もちろん、その時は『受付』での登録、よろしくね」
「よろしくね」を言う時にシューフルールがパチッとウインクをした。
その演出は必要なのだろうか……。
「それと、魔法と魔法を組み合わせて使う合成魔法については、登録している魔法内であれば問題ありません。例えば、私がこの『火花』と『発光』を登録しているとして」
シューフルールはモニター越しで実演を始めた。右手でパチパチと火花を出し、マイクを持つ左手は明るく発光している。
「こうやって、やるとっ!」
シューフルールが両手を空に向かって勢いよく振り上げた。
火花と光はシューフルールの手から離れ、空へ向かって発射。真っ直ぐ打ち上げられた二つは、徐々に近づき合い、パァアン!と音を鳴らして衝突した。
衝突した二つは分解され、キラキラと光の雨を会場に降らした。
「こんな感じの合成魔法は、登録の魔法にカウントされないので安心してください!」
シューフルールはニコリと笑みを浮かべた。
「綺麗な魔法ね」
「うん、綺麗。わたしも、こんなの、やってみたい」
「さすがキャシーちゃん!」
俺としては、さっさと説明を終えてほしい。
「はーい。ちゅうもーく。次の説明に移ります! 次は勝敗判定についてです。ここで追加ルールあります! 端末には『行動不能または自分の意思による降参宣言』と書かれてましたが、2回戦までは『ステージからの落下』も負けとします。明日に行う準決勝と決勝にはこのルールは適応されません」
つまり『場外に出れば負け』か。
「いいですか? わたし、ちゃんと説明しましたよ。場外負けで『そんな話聞いていない』と言われても知りませんからね!」
ビシッとシューフルールは、こちら側に向けて指を差した。念押しがすごい。
「はい、以上、ルール確認でした。残りは諸注意です。試合に出る時は、『受付』で貰ったバッチを必ず左胸につけてください。バッチは生命活動をモニタリングしています。怪しいものではありません。もしバッチをつけていないと試合には出れません。大切に管理してください」
最後の『管理』という言葉から察するに、盗難の可能性もあるということだろう。気をつけておこう。
「それと、試合開始三十分以内にステージ上に現れない場合は、不参加となります。この場合は、シード枠となり、ステージ上にいた方は次の試合へ進み、現れなかった方は元からいなかったこととされます。気をつけてください!」
表現が回りくどいな。普通に『負けとなる』とかでいいだろう。
「それで最後に…………試合中の『殺し』について」
シューフルールの声が先ほどとは打って変わって、一気に低くなった。殺気も感じる。
それにより、会場の空気が張り詰めた。
「……意図した『殺し』、不必要な『殺し』に関しては、『学園追放』となります。審議が必要な場合は、後日呼び出します。『学園追放』や審議の内容は、端末で確認ください。…………はい! じゃあ、私からの諸注意はここまででーす! ありがとうございました!」
脅しのような説明が終わり、シューフルールはコロリと元のテンションに戻った。
どうやら、シューフルールに対する見方を変える必要があるらしい。かなり厄介そうだ。
「といっても、『開会式』はあと一つ残っています! 続きましては、エキシビションマッチです! その前に、エキシビションマッチを行っていただく二名をお呼びします。お二人共、どうぞ!」
パチパチとシューフルールが拍手すると、モニターの映像にとある二人が映り込んできた。
「はーい、どうもー。おはよー!」
「…………どうも」
映し出されたのは、入学式でステージに立っていたミカ・エピテンドラムとハンナ・バーベナル生徒会長だった。
服装はエピデンドラムは『学園』載せ服、腰にはレイピアが収められた鞘。バーベナル生徒会長は、昨日とほぼ同じドレス姿だ。
「みんな昨日ぶりだし、知ってるとは思うけど一応名乗っとくね。あたしはミカ・エピデンドラム。こっちのちっこいのはハンナ・バーベナル。この『学園』の生徒会長様だ」
「……よろしく」
自己紹介の内容は、入学式の時のとほぼ一緒だった。
いったい、何しに来たんだ?
「なーんか、あたし達よく分かんないままキャシーに呼ばれたんだけどさ。なあ、キャシー。今から何すんの? あたし達、そこまで暇じゃないんだけど」
おいおい、本人達も知らないのかよ。
「すみませーん。このお礼はまた次の機会に必ずしますので! 今回は何卒よろしくお願いします!」
「いやまあ、それはいいんだけどさ。何すればいいの?」
「えっとですね――――――」
そこから三人は耳打ちで話しだし、何を話しているかこちらには分からなくなった。
打ち合わせぐらい先に済ませておいてほしいものだ……。
「――――オッケー。その話、乗った」
「……任せて」
三人が離れた。どうやら打ち合わせは終わったらしい。
「みなさん、お待たせしました! これよりエキシビションマッチを始めます! 内容はこちらのお二人によるトーナメントルールに乗っ取った、三十秒の試合です! こんなの滅多に見られませんよ!!」
なんかシューフルールのテンション、高くなってないか?
「んじゃ、そっち行くわ」
エピデンドラムはそう言うと、パチンっと指を鳴らした。すると、映像からエピデンドラムとバーベナル生徒会長の姿が消えた。
何が起きた……?
「おーい、こっちだこっち」
エピデンドラムの声が、スピーカーからではなくステージあたりから聞こえてきた。モニターから目を離し、ステージを見てみる。そこには、映像から消えた二人が、それぞれステージ端に立っていた。
…………気づかなかった。いや、気づけなかった。
「そんじゃ、始めるとするか」
「…………キャシー。……合図、よろしく」
「はい! それでは…………スタート!」
シューフルールの合図と共に、エピデンドラムは素早く動きだした。レイピアを抜き、あの入学式で見せた『波』を打ち出す。
「……『障壁』」
バーベナル生徒会長は魔法名を口にし、じっとその場で『波』を受けた。『波』がぶつかる衝撃が、会場の空気を揺らした。
エピデンドラムは追い打ちをかけるようにレイピアを何度も振り、『波』を連続で打ち出し続ける。『波』がバーベナル生徒会長の方に衝突する度に、振動が会場に伝わる。
『波』のせいで砂埃が舞い、バーベナル生徒会長の姿が見えない。……っと、思いきや。砂埃の中から無傷のバーベナル生徒会長が姿を現した。
エピデンドラムに突っ込むように進んでいく。
「『直線』」
エピデンドラムはレイピアを降るのを止め、まだ距離のあるバーベナル生徒会長に向けて踏み込み、レイピアを突き出した。その剣先から、直線の『光』が打ち出される。
速い。それに、凄い魔力量だ。
『光』は豪速で進み、バーベナル生徒会長の頬をかすめた。その際、パリンっと何か割れる音もした。
「『直線』」
「……『障壁・三重』」
同じようにエピデンドラムが『光』を打ち出す。
しかし、今度はバーベナル生徒会長の周囲に現れた青い『膜』のようなものに防がれた。
…………魔力障壁、か?
「……『障壁・拡張』」
バーベナル生徒会長がエピデンドラムを指差す。『膜』がエピデンドラムに向かって伸びていく。
エピデンドラムはそれを体で受け止めるも、ズズズー……っと少しずつ後退していく。
あのままではステージから追い出されてしまう。
「そうゆうことか……!『屈折』!」
エピデンドラムが魔法を発動させると、『膜』は上へと伸びていった。
『膜』から開放されたエピデンドラムは、レイピアを構え直し、バーベナル生徒会長へ攻める。
「……『解除』『障壁・三重・領域』『振動』」
バーベナル生徒会長は今ある『膜』を消し、再度『膜』を自分を覆うように半球状に展開。今回は、エピデンドラムに向けてではなく、半球の領域をそのまま全体的に拡大させていく。
そして、それに合わせてステージの地面が揺れだした。まるで地震のようだ。
「わっわっ! こうなれば……『空間図案』!」
不安定な地面に足を取られかけたエピデンドラムは、また別の魔法を発動。先ほどの映像と同じようにパッと姿を消した。
「『直線』!」
「―――ッ!! 『障壁・曲線』!」
バーベナル生徒会長の背後に現れたエピデンドラムは、『光』を発射。それを見たバーベナル生徒会長は、咄嗟に魔法を発動。『膜』がUの字のように現れる。
それにより、『光』はバーベナル生徒会長に向かわず、『膜』に誘導されるように流れていき、エピデンドラムへ戻っていく。
「『屈折』!」
エピデンドラムは返された『光』を手で払った。『光』はまた方向を変えて、地面へ衝突した。
「『衝―――』」
「……『圧―――』」
「はい!! そこまででーーーーす!!! 終わりーー!!」
レイピアの剣先がバーベナル生徒会長に狙い定め、バーベナル生徒会長が手をレイピアに向けたところで、シューフルールのアナウンスが大音量で流れた。
その声を聞いて、二人はピタリと動きを止めた。
「お二人共、終わりです! 試合終了です!」
「えっ、もう終わり?」
「…………勝てそうだったのに」
「時間はほんの少しありましたが、このままだとステージが持たないのでおしまいです!」
「あー、それは……確かに」
エピデンドラムが苦笑いして、頬を少し掻いた。
今のところステージは壊れていないが、あの様子だと、ステージが壊れるほどのことをしようとしていたのだろう。
それに加え、二人共息一つ上がっていない。……なんて『力』だ。
もしこの二人と戦うとなった時、俺は、勝てるだろうか…………。
「はい! ということで、ミカ・エピデンドラムさんとハンナ・バーベナル生徒会長によるエキシビションマッチでした! お二人、ありがとうございました!」
「おう。みんな、頑張ってな」
「…………またどこかで会いましょう」
バーベナル生徒会長が手を振り、エピデンドラムが指を鳴すと、二人は忽然と姿を消した。
「はい! これにて『開会式』は終了です! みなさん、トーナメント頑張って下さい!」
こうして、想像よりも激しい『開会式』が終わり、トーナメントの幕が上がった。
次回、1回戦開始。
前回の後書きで1回戦始まると言っておいて、今回書けなくてすみません。次回は必ず1回戦から始まります。
次回の更新は、6/30(金)を予定しています。
6/29 誤字訂正・後書き追記




