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紅蓮の挑戦者  作者: 水谷 空
入学式編
17/45

16 同室Ⅱ


 さて、どこから説明したものか……。


 俺はミルクティーを飲みつつ、頭の中で話すことについて軽く整理する。


「そうだな……。まず、妖精についてリリーはどこまで知っている?」


 フェアの事情に触れる前に、まずは妖精のことについてリリーに尋ねてみる。


「うーん……昔話に出てくる妖精は、小さくて、空を飛べて、『才能センス』関係なく魔法が使えて…………あっ、あと可愛い!」


 最後のは無視するとして……リリーのように妖精については、あまり認知されていないのが現状だ。

 妖精は物語に出てくる架空の生き物とされており、ほとんど観測も研究もされていない。

 そのため、一般的に知られている妖精はリリーの言った通りだろう。


「……分かった。予定通り一から話す。まず、妖精というのは簡単に言えば魔力に『意思』が宿った生き物だ。それからーーーーーーーーー」


 ここからの説明は、珍しいことにリリーが大人しく俺の話を聞いたため、一方的なものとなった。


 俺の説明は、前にフェアから聞いた妖精の実状についてだ。


 妖精とは、架空の生物ではなくフェアのように実際に存在する生き物だ。

 フェア曰く、魔力に『意思』が宿ったものだそうだ。

 ある条件下において、魔力濃度が一定以上に達した時に生まれるようで自然発生に近いらしい。ある条件について、俺は知らない。

 一度に生まれる数はバラバラで、近年妖精の数は減少しているそうだ。


 このことが、フェアの出生について関係してくる。


 絶滅を危惧した妖精たちは、仲間を()()()()増やせないかと考えた。


 そこで動いたのが、妖精達を仕切る存在ーーー妖精王だ。

 妖精王は人の力を借りることを提案した。人の魔力を集め、その魔力と妖精王の魔法を使って妖精の『核』ーー人間でいう心臓の部分にあたるものーーを生成。そして、『核』を元に妖精を生み出すことに成功した。

 今は少し方法が変わっているそうだが、今回の話には関係ないので省く。


 ここまでの話をして、一度リリーに話についてこれているか質問した。すると、リリーは「えっと、つまり妖精さんはピンチだったんだね!」と答えた。

 本当に理解出来ているか怪しいところだが、理解するまで付き合うのは面倒なため話を進めることにした。


 ここから本題、フェアについての話だ。

 フェアは自然発生ではなく、新しい方法によって生まれた一人だ。

 しかし、フェアの『核』には問題…………やまいみたいなものがあった。その病のせいで、定期的に人の血を摂取する必要があった。

 このことが原因でフェアは『アクマの』と呼ばれ、所属していたクローバー族を追い出される結果となった。妖精は所属していた族名を姓にするため、フェアの姓はその名残だ。


 吸血の頻度はだいたい五日に一度。けれど、疲労や魔力消費によって変わることが分かっている。

 吸血後は強い眠気に襲われるようで、今フェアが寝ているのもそのためだ。


 以上のことを話し終え、俺は残り少ないミルクティーを飲み干した。冷めていても、ミルクが凝固することなく美味しかった。


「あの、リュウヤさん。質問いいですか……?」


 俺がカップを置くと、リリーが恐る恐る手を挙げた。


「なんだ」

「もし、フェアちゃんが血を五日以上飲まなかったら…………どうなるの?」

「恐らく……死ぬ」


 そのことについては一応フェアから聞いている。しかし、五日以上血を飲まなかったことがないため、フェア本人にもどうなるか分からないらしい。


「ーーーーーー」


 俺の返答を聞きリリーは何か言おうとして口を開くも、すぐにグッと口を閉じた。

 ゴクッと生唾を飲む音が、微かに聞こえた。


「……分かった。リュウヤさん話してくれてありがとうございました。…………肝に命じておきます」


 リリーは真剣な顔つきで、ゆっくりと頭を下げた。

 俺は説明しただけであって何か命じだわけではないのだが……まあいいか。


「フェアはほっておいたら起きる。無理に起こさないようにな」


 無理に起こすと面倒なことになるしな……。


 それを最後に話を終わらせ、俺は立ち上がった。


「どこに行くの?」

「風呂だ。……すまないが、タオルとかあるか?」


 フェアが寝てしまいバックが今手元にない。そのせいで、タオルを取り出せないことに今気づいた。


「少し小さめのバスタオルならありますけど……」

「それで大丈夫だ」

「本当に大丈夫?」

「ないよりマシだ。頼んだ」

「分かったー」


 リリーは返答しながら、近くの棚を漁り出した。その間に、俺は服を脱いでいく。


「はい、これを使ってくだ…………って、なんで脱いでいるの!?」

「風呂だから脱ぐだろ」


 真っ赤な顔をしたリリーに俺は当たり前のように答えた。


「扉の奥に小さな脱衣所があるので、そっちでお願いします!!」


 後ろを向いてリリーは、通路の壁沿いにある扉を指した。


「なら俺が入った後にタオル頼んだぞ」


 俺はそれだけを伝えて、脱衣所へ入った。





 数十分後、俺は首にタオルを掛け、ズボンだけを履いて部屋に戻った。


 やはり汗を流せると気持ちがいい。


「タオル、ありがとな」

「いーえー、どういたしまして。……なるべく早く服着てくださいね」

「…………なんでだ?」

「……もういいです……」


 湯冷めでも気にしているのか考えながら、俺は先程座っていた場所に腰を下ろした。

 テーブルを見ると新しいミルクティーが用意されていたので、ゴクゴクと飲んでいく。


 うむ、やはり美味い。


「それでこれからどうしましょうか」

「どうするも何も、寝る」

「そうじゃなくて! そ、その……これから部屋を共にすることについて……あのー…………」


 リリーがもじもじしている。何か言いたそうだ。


「お風呂以外でも、着替えとか……」


 その姿を見て、なんとなく察しがついた。


「大丈夫だ。言ってくれたら外に出ていく」


 脱衣所はかなり狭い。男の俺が着替える分には問題ないが、女のリリーが着替えるとなると手狭かもしれない。他にもいろいろと女性にはあるのだろう。


「でも、それは申し訳ないですし」

「と言われても、他に方法あるか?」

「うっ……ない、です」

「だろ?」

「なら、今度カーテンを買いに行きましょう! それまではすみまさんが、いいですか?」

「ああ、大丈夫だ」


 俺は上半身の服を着て、玄関へ向かった。これからリリーが風呂に入ると推測できたからだ。


「俺は少し散歩してくる。一時間ぐらいしたら戻る」

「分かった。気をつけてね」


 小さく手を振るリリーを見てから、俺は玄関の扉を閉めた。


次回、リリーの心境とアレス再び……­?


更新遅くなってすみません。止まらないように頑張っていきますので、これからも何卒よろしくお願いします。


6/11 誤字訂正

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