ヒメサユリ【2】
土曜日の朝、日が出てまだ間もない時間、栞奈はむくっと起き上がる。
「目覚ましいらなかった!」
ベッドを飛び降り、バスタオルを持って風呂場に行き、素早く服を脱ぎシャワーを浴びる。肩に少しかかるくらいの長さの髪をワシャワシャと豪快に洗い寝癖ごと整えていく。
「いよーし!さっぱりした―!」
シャワー浴び終え、頭を拭きながらバスタオル一枚巻いたくらいにして台所へ向かい、冷蔵庫を開け牛乳をお気に入りのマグカップに注ぎ、一気に飲み干した。
「クウゥゥ―――!いやぁ、風呂上がりのいっぱいは格別ですなぁ!うんうん!」
ドライヤーで髪を乾かし、歯磨きをし、服を選ぶ。
「やっぱり、動ける服装がいいから・・・・、ウインドブレーカーに・・・ジーンズと・・・。よし!」
一通り身支度を済ませると、栞奈はヘアゴムで髪を一本結びにし、キャップを被る。
「切符と、財布と、スマホと、充電器と、絆創膏と、酔い止めと、タオルに、着替えの下着、それとカメラ!後なんか色々入ってるな・・・。まぁいっか!」
バックの中身を確認しよし!と気合と満足の織り交ざったもの表情になり、玄関でスニーカーを履いたところで、
「お母さん、行ってきます。」
と寝ている母を起こさないように言った後、栞奈は家を出発した。
マウンテンバイクにまたがりいつもの河原を走る。天気は晴れ。今年の梅雨はあまり雨が降らないようで、晴れの日が少し多かった。それでも6月、じめっとした空気なのは仕方がないわけだが、栞奈にとって特に気になることではなかった。
「今日はトラにおはよう言えないけど!寄ってる暇はないのでそのままいくよー!」
いつもの学校へ向かう住宅街への道へ曲がっていかず土手を一直線に進んでいく。電車の駅と学校は方向がちょっと違う。仮称トラのいる細道を通り過ぎ、大きな駅に向かって加速していく。大きい道路に出てそのまままっすぐ駅を目指す。土曜日の朝ということもありそこまで混雑してはいなかった。駅につく手前のところで駐輪場に入っていき自転車を止め、鍵をかけ、軽い足取りで駅の方へと階段を上り歩いていく。駅に入ると大きな改札が見えた。栞奈は自動改札へ向かわず、横の窓口へと足を運ぶ。
「駅員さん!これで!」
自動改札ではなくその横の窓口に、母からもらった切符を見せる。
「お、キャンプか旅行かい?朝早くから今時珍しいね、お嬢さん。」
アウトドアです!と言わんばかりの恰好の女の子をみて、駅員は少し嬉しくなった。もちろんそういったことに電車を使う人も沢山いるだろうが、もっと若者に電車を使っていろんな場所に行って欲しいという希望みたいなモノを抱いていたことを思い出した。あくまで手段として、例えば通勤、通学の際に電車を使うことと、旅の移動手段として電車を使う行為に変わりない。しかし旅の場合の電車の役割は「手段」のみならず、電車に乗ることも旅の「目的」として成立する事がある。人によってそこを意識するしないはあるだろう。しかし人は旅の手段として電車に乗ったとき、過ぎ去る風景を見る。景色をみる。家を出た時から旅が始まり、また電車に乗ること、その窓から見える高速の景色もまた、旅の一部だからだ。
「はい!ちょっと山形まで旅行です!」
「気を付けてな。向こうは少し寒いかもしれないぞ。」
ありがとう。と一言、栞奈は言いながら改札を抜ける。駅員のそんな自分の願望を表に出しているわけでもないし、直接栞奈に伝えたわけでもない。しかし、これから何処かへ向かう少女の目の輝きが、「今日も頑張るか。」と、延べ何百万、何千万と行きかう人を見てきた駅員を元気づけた。
「今日の曲はこれ!でんしゃにゆられー・・・ふふん。」
栞奈はイヤホンを両耳につけ、歌詞を口ずさみながら程々の音量で音楽をかける。売店で飲み物を買い、ホームにて電車を待つ。
「電車が参ります。白線の内側にお下がりください。」
アナウンスが流れ、電車が入ってくる。ドアが開き、栞奈はホームで一番最初に乗りこむ。窓際の席に陣取り、外の景色に目を配る。電車が動き出し、駅を出ると街の景色が見える。自転車で駆け回っている町を違う視点から見る。普段は平面に近かった栞奈の認識が形と角度を変えて目に飛び込んでくる。
「おお・・・あんなところにケーキ屋さんがあったのか・・・知らなかった。」
そうじゃない。いや間違ってはいないかもしれないが、駅員のかすかな、希望に少しヒビが入ってしまったかもしれない栞奈の感想。
「この街は・・・。そうか、カメラカメラ。」
栞奈はおもむろにカメラを取り出し景色を写していく。
「おお、なるほど、なるほどなるほど。」
3、4枚撮った写真を見ながら栞奈は頷く。
「ミニチュアみたいで可愛いなぁ。人間てこんなにいろんなものを自分たちで作れるのか。うーん、いいよぉ。街の息遣いが聞こえてきそうだ。ちょっとプロみたいなこと言っちゃったな。へへへ。」
動く電車に揺らされてピントがズレている写真のあとに、街の景色を高いところからでなければ見えない角度から写したものが1枚ある。朝日に照らされたコンクリートの塊が生き物のように赤みをほんのり帯びている様子はなんとも幻想的だった。
暫く電車は走ると街小さくなっていく。それに反比例する形で田んぼや山がどんどん増えてきた。
「おおー、田んぼばっかり!田舎だねぇ、この辺は。畑仕事してる村人発見!がんばれー!」
水田に植えられた稲はまだ青々としていて短い。水面に空の青が反射し、ガラスを張ったように美しい。そんな田んぼが山の麓まで続いている。父親に連れられて車で遠出していた時は、遊ぶことに夢中だった栞奈。車から見える景色に興味はなく、目的地で遊ぶことに意識が集中していた。しかし、今、栞奈は一人で外に出た。ヒメサユリを探しに行くという目的を忘れた訳では決してない。だが、写真を撮るようになって一年。栞奈は無意識のうちに被写体を探す。その無意識の行為は栞奈の視野を広げ、今まで認識の外にあった情報が栞奈の頭の中に入り込んでくる。街の景色と田園風景。違いは各々を構成している要素だけにすぎず、栞奈にとってその二つは新鮮で新しい発見であり、栞奈にとってその二つはある意味同じものだった。そして栞奈は田園風景にカメラを向ける。
・・・・・・・・・
「お、おなか減った・・・・。」
栞奈は朝ごはんを食べていなかった。牛乳一杯飲みで家を出てきていた。忘れていたわけではないとしながらも、高揚感を優先してしまい、飛び出してきてしまったのは事実だ。
「そうだ、テレビで見たことある!こういう時は駅弁を嗜むものよ!」
途中の駅で、電車を降り、売店へ向かう。初めて食べるであろう駅弁に栞奈のテンションは上がってきた。
「どんなのがあるかなー!どれどれ・・・・。ん!?1100円!?」
小遣い制の一女子校生にとって1100円の弁当は高かった。仕方なく菓子パンを二つ買い、少し肩を落として電車に戻る。
「牛肉弁当・・・食べたかった・・・。」
栞奈は菓子パンをかじりながら、いつか駅弁を食べようと心に誓うのだった。
・・・・・・・・・
電車に揺られて1時間少しのところで乗り換えの駅に着いた。
「ここで、降りて・・・寒河江のほうに行く電車は・・・・。」
スマートフォンと駅の案内板を照らし合わせて、次に乗る電車のホームへと向かう。乗り換えの電車が車で少し時間があると見た栞奈はカメラを取り出し、電車の中で撮った写真をチェックしていく。
「普段あまり景色は撮らなかったけど、これはこれで光るものがありますねぇ!うんうんうん!」
栞奈はこれと決めたものを中心に写真を撮ることが多かった。しかし、今回電車から見えた景色は栞奈の価値観に刺激を与え、違う視点というものもがいかに魅力的かを知った。
いつもと違う自分の写真をニヤニヤしながら見ていた栞奈の前に次の電車が到着した。栞奈はゆっくりと電車に乗り込む。ここまでくるともはや街というような街は無く、高い建物も一切ない。田んぼと山、その繰り返しの中に、たまに防風林に囲まれた民家が見える。
「ずっと山ばっかり・・・。ここの人たちは買い物とかどうしているんだろう。不便じゃないのかな。」
自分の住んでいる街は少し移動すればコンビニがある。スーパーがある。遊ぶところがある。それが当たり前の栞奈にとってここに住んでいる人たちは不思議だった。見たところコンビニがない。お店らしきものはあるものの、絶対数が少ない。きっと何かの買い物となったらみんなあそこへ行くんだろう。車がないと不便だな。お年寄りは家から遠くのお店に行くのが大変そうだな。高校生はどこで遊んでいるのかな。栞奈の目に飛び込んでくる情報は栞奈の想像を加速させる。だがこれといった答えを栞奈は導き出せない。その代りなのか、山に囲まれた畑と民家の何気ない景色に向かってシャッターを切り続けた。
電車はゆっくりと駅に停車し栞奈は電車を降りる。ホームを出て、改札をくぐり、新しい地面に足をつける。
「よーし!やっと着いた!次は・・・バスに乗ってだから・・・。こっちか!」
朝日町いきのバスに乗り込む栞奈。午前9時半。栞奈はバスに揺られ田舎道の景色に目を向ける。
「お父さん・・・よくこんな場所を知っていたなぁ。」
朝日町に向かって進むバス。たどり着くまでのバス停は40ヵ所。半分を過ぎたところで貸し切り状態になった。若い女の子が一人で乗っているという珍しい光景が気になった運転手が声をかけてきた。
「お姉ちゃん、旅行かい?何処から来たんだ?」
「え?あ、はい!仙台から来ました!向かうのは朝日町の一本松公園まで!」
「ほー。仙台か。わけぇもんが珍しい事もあるもんだなぁと思ってね、一本松公園か、ちゅうことは・・・ヒメサユリかい?」
「おじさん!知ってるんですか?」
「知ってるも何も、朝日町の棚田とヒメサユリは有名よ。棚田は神様が落とした扇の田って言われててな、今の時期はヒメサユリがちょうど見ごろだ。」
「そうなんですか!私全然知らなかったんですよ。お父さんの秘密の場所かと思ってました。」
バスの運転手と栞奈の会話は弾み、時間はあっという間にすぎ、気が付けば朝日町に到着した。
「運転手さん!ありがとうございました!」
「おう、さっきも言ったけど、結構歩くから気を付けろよー?」
バスを降りたところから公園まで歩いて40分ぐらいだと運転手が教えてくれた。この調子だとおそらくお昼ぴったり位にはつけるだろう。栞奈は公園のある小さい山に向かって歩き始めた。
「うおおお・・・・。なかなかしんどい!ここらへんでちょうど半分くらいかな・・・。ちょっと休憩・・・。ふう。」
道の脇に座り込みペットボトルを取り出しお茶を飲み始める。
「んー・・・?おお!?カエルさん何してんの!」
栞奈が座り込んだ足元の草むらにアマガエルがじっと隠れている。栞奈が覗き込んでもじっとしている。
「キミ、ちょっとモデルになってよ!」
栞奈はそういうとアマガエルにカメラを近づけていく。姿勢を低くしていき、アマガエルの目線にカメラの高さを合わせていく。奇妙な体制の少女が狙いを定め体が固まる。どちらかというと栞奈のほうがカエルの格好に近い。
「そのまま、そのままそのまま・・・おあ!!」
ピントを合わせてシャッターを切ろうとした瞬間にアマガエルは跳躍した。
「またんかぁい!」
栞奈はすぐさま立ち上がり、アマガエルの前に出ようとダッシュした。しかし、あと一歩のとこで間に合わず。
「あー・・・いっちゃった。お気に召さなかったのかしらねぇ。」
カエルは車道を横切り、草むらへと消えてしまった。
「うーん。トラはじっとしてるから隙だらけなんだけどなぁ。生き物を撮るって難しいなぁ!」
一休みした栞奈はそのまま、山道を歩き始める。休憩所のような小屋が場所が見えてきた。小屋のベンチには老人が腰かけている。
「お、小屋がある!おじいちゃんこんにちは!」
「こんにちは。ヒメサユリかい?」
「そうそう!この上にあるの?」
「あるよ。そろそろ見ごろが終わるからね、早く行きなさいな。」
「ありがとう!」
栞奈は丘を駆け上がる。すると開けたところに遊具が少しあり、奥にベンチと長くすらっとした松の木が見える。栞奈はそこに駆け寄った。
「・・・スゴイ!はぁー!スゴイよお父さん!」
松の木と草むらの間から一望できるその景色。段々になっている棚田全てに水が張られ、一面が鏡になっている。その鏡は空の雲と青を映し出し、空が二つあるような感覚になる。
「あ!これかー!」
少し視線を下げた足元の山の斜面にヒメサユリが彼方此方に咲いていた。
「やっぱりここだったのか!ふふふ・・・私の勝ちだねお父さん!早速、キミには私のモデルになってもらうよ!」
栞奈はカメラと、父からもらったヒメサユリの写真を取り出し同じような構図に近づける。奥の棚田をボカし手前のヒメサユリを強調していく。
「・・・お父さんは、こんな景色を・・・見ていたんだ。」
父からの贈り物に囲まれた栞奈は気持ちがいっぱいになった。カメラ、写真、そして、この景色まで導いてくれた道しるべ。栞奈は少し、父の温もりを思い出した。
「ぐすっ・・・、よし、このくらいだ!」
栞奈の目が少し涙で濡れたが、ぐっとこらえてファインダーを覗き、シャッターを切った。
「へへへ、お父さん。見てる?いいのが撮れたよ。」
栞奈は、棚田の向こうに見える青空に向かってそう呟いた。
―――と、景色を眺めていた栞奈の横でシャッターを切る音が聞こえた。音の方を向くと隣で若い男の人が同じようにヒメサユリと棚田を撮影をしていた。すらっとした細身で短髪、鼻は高く整っている。一見すると栞奈と同じか少し上の年齢だろうか。
「あ、ご、ごめんなさい!邪魔でした?」
栞奈はそそくさとフレームの中に入らないようにと避ける。
「あ、いや、大丈夫。・・・あんた、写真撮ってんのか。」
「ん?あ、そうそう!これ私のカメラ!腕前は全然だけど・・・、いろんなものを撮るのが楽しくて!」
「女の子で一眼レフって珍しいな。ここにはよく来るのか?」
「今日初めて来たんだ!綺麗なところですよね・・・。来れてよかった。」
「そうか。俺も初めて来たんだ。綺麗だよな。ここ。」
「うん。ほんとうに・・・。」
栞奈はまた、景色を眺めていた。一人でここまで来て色々な人と少しだけ喋り、普段は見ない景色を見た。誰かと一緒に来ていたらそうはならなかったかもしれない。別の何かに夢中になっていたかもしれない。よく旅に行く人にとっては、たった100kmの旅路かもしれない。しかし栞奈にとってはそうではなかった。自分の見たことがない世界はこんなにも美しく、どこまでも開けていると教えてくれた。
「さて、そろそろ帰らないと!」
栞奈は立ち上がり。荷物をまとめる。
「帰るのか。」
隣の若者が呟く。
「うん!ここまで4時間くらいかかっちゃったからね!今から帰らないと遅くなっちゃってお母さんに怒られちゃう!」
「そうか、遠くから来たんだな。気を付けて。」
「ありがとう、あなたも素敵な写真、いっぱい撮ってね!」
「うん。お前、名前は?」
「私?私の名前は、翔陽 栞奈!あなたは?」
「荒川 元。」
「元!カッコイイ名前ね!じゃあ、今日はありがとう!さようなら!」
栞奈はそう言うと、丘を走って下っていった。
「翔陽・・・・。」
少年はそう呟くと、頭を少し掻いて、また撮影を始めた。
「ちょっと、お前さん。」
駆け足で降りてきた栞奈に先ほどの小屋の老人が話しかける。
「え?はいはい!おじいちゃんなに?」
「お前さん、翔陽さんの娘さんかい?」
「え!?何で知ってるの!?」
「そのカメラ、翔陽さんのだろう?ここによく来てたからね。彼は。色々世話になったよ。」
聞けばその老人はここの棚田の景観保全をしている団体の一員であり、よく栞奈の父、春樹と話をしていたそうだ。父は仙台からの差し入れも持ってきたこともあったという。土曜日は決まってこの老人がここにいるようだ。
「4年位前に、この時期になったら、娘が来るかもしれないと言われててね。預かりものをしていたんだが、まさか本当に来るとは驚いたよ。」
「お父さん、私がここに来ることそんな昔から考えていたの!?」
父、春樹には確実に来るという確証はなかったかもしれない。栞奈がたまたまカメラにはまったから偶然ここまで来たのかも知れない。我が父はなんて宝探しを思いついたんだと栞奈は思った。
「わしも年寄りでな、特にこれと言って何をしているわけではなかったし、翔陽さんのお願いだったから直ぐに引き受けたよ。まぁ、お前さんを待ってればいいという楽なお願いだったけどね。来たらラッキー、来なければアンラッキー、それだけのことよ。」
と老人は笑った。そして老人は懐から封筒を取り出し、栞奈に渡した。真ん中に栞奈へと書かれている。
「お父さんの字だ・・・・。」
「確かに渡したぞ。帰ったら翔陽さんによろしく伝えてくれるとええ。」
「あの・・・、お父さんは・・・・。」
そう言いかけた栞奈の肩に老人が手を置き言葉を遮る。老人は首を横に振りながら喋り始めた。
「言わなくてええ。もう一度言う。翔陽さんによろしくな。」
栞奈は、胸がいっぱいになった。涙があふれてきそうだった。ぐっと噛みしめ、首を縦に振った。
「・・・・ありがとう、おじいちゃん!必ずまた来るね!」
栞奈は老人に手を振りながら山道を駆けていった。老人は笑顔で栞奈を見送った。
・・・・・・・・・・・
帰りの電車、16時ごろ。春先に比べると日が長くなってきた。栞奈は、老人から渡された封筒を開け、中を見ると、一枚の写真と手紙が入っていた。
「栞奈へ
空は何処までも青、山は何処までも緑。人間なんてちっぽけだろう?だが、どんなに人間はちっぽけでも、この世界を美しいと感じることができるのは人間だけだ。お前はどう感じたんだろうか。ヒメサユリを送れる人になっているだろうか。帰ったら聞かせてくれ。
父、春樹より」
「お父さん・・・・。ありがとう、私いろんなものを見れたよ。感じたよ。・・・・ありがとう。」
栞奈はそう呟き、外の景色に目を向ける。見慣れた街並みが近づいてきた。少女の手には手紙と、一面に蓮の花で埋め尽くされた湖の写真が握られていた。