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魔法研究と喫茶店  作者: 烏郷野 修
2/2

研究員と喫茶店

暇でしたらどうぞ。

第cos2π話

________________________


チリーン


軽快な音で喫茶店のドアを開けると、想像通り洒落た喫茶店であった。

カウンターが5.6席とテーブル一つのこじんまりとしたものである。

厨房からはコーヒー豆のなんとも言えない香りが漂う。


…しかし、何処にも魔法研究所と言えそうなものは無い。

すると俺の気持ちを察したかのように

「研究所、というか研究室は二階です」

と、空岡アオが言った。

あぁなるほど、確かに厨房の奥に階段がある。

「綺麗な喫茶店なんですね。」

「ありがとうございます。普段はもう営業なんですけど、今日は夕方から開けようかと思いまして。

あと、大宮さん、さっきから丁寧語になったりタメ口になったり話し方が不安定です。緊張してますか?」

彼女はふふっと可愛らしく笑って言った。

「え?そ、そうか?じゃあタメ口で喋らせて貰おうかな。あ、あとなんで今日だけ午前やらないんだ?書いてある情報じゃここは水曜日以外午前はやってるぞ?何かあるのか?」

「?あぁ、それは今日はなんだか午前に何かが起こりそうと、思ったからですよ?」

彼女はまた可愛らしく笑いながら言った。

…不思議な事を言うやつだ。

「さぁ、早く研究室に行きましょう。所長が待ってます。多分。」

多分ってなんだよ。

まぁいいや。


彼女と俺は二階へと足を運んだ。


二階には細い廊下があって、突き当たりには扉がある。

そこには

”鈴蘭台魔法研究所”

と書かれた木の板が吊るしてあった。


「さぁ、いよいよです」

彼女がなんだか嬉しそうに言った。


ガチャリ


普通に扉が開いた。

真ん中にはおしゃれな茶色のテーブルがあって、座席が3つ。…3つ?

先には窓があって、空岡アオの趣味だろうか、青い花の植木がいくつかある。

横には本棚があって、たくさんの本があり、手間の棚にはいくつか魔法実験道具が入っていた。

そして、角のところに、赤ちゃん用の柵があって、中は本や紙の山になっており、そこには角に沿って黒板がある。

「そこのスイッチを押すと、そこにも黒板が出てきますよ。」

確かに俺の横らへんにスイッチがある。


「へぇ、結構ちゃんとしてるのか」

「失礼な、疑ってたんですか?」

そりゃそうだ、だって普通の喫茶店だもん。

「なぁ、空岡さん、所長はどこだ?」

「すぐ呼んできますよ。あと、空岡さんではなく、アオにして下さいね。なんだかよそよそしいです。」

わかったと言って、アオが所長を呼ぶのを待つ。

ちなみに、俺は女性に下の名前で呼んでほしいと言われて、頑なに呼ぼうとしないテンプレ展開は好まない。

むしろ可愛い子なら下の名前ウェルカムウェルカムだ。アオちゃん万歳。

あいつは正直可愛いからな。


それにしても、あの赤ちゃん用の柵が気になる。

遠目に見てもわかるくらい、夥しい本と何やら書きなぐった紙で埋め尽くされている。

気になったが、初見で室内での物色はやばい、さすがに捕まりそうだ。



5分くらい待っただろうか。

扉の向こうからアオと、子供の声が聞こえた。

子供の声は女の子で、年は小学校低学年くらいか。

「こらっ、早くあがりなさい!あっ!また服汚して!全く何してたんですか?もぅ!」

アオが軽く叱ると

「うっせぇクソババア!ちょっと外で遊んでたらコレだよ!別にいいじゃねぇか!このクソバb….うっ!痛い痛い痛い痛いいだただぁあ!ごめんなさいごめんなさい!やめてやめてぇ!それ以上腰を曲げないでぇ……」


なんだこの口悪いガキは。

よくわからんままいると


バンっ!


勢いよくドアが開いた。


次の瞬間物凄い速さで俺の前をガキが通過した。


そのガキは例の赤ちゃん用の柵の中に入ると


「うっ…うっ…腰がぁ…腰がぁ…」

とうずくまる。


「次はありませんよ!全く!」

アオが頬をぷくっと膨らませて言った。

するとアオが俺に気づいたようで

「す、すいません!見苦しい所を見せてしまって!

あ、紹介しますね、ウチの所長です!」

と、恥ずかしそうに言った。

ふと思う。

ん?所長?

所長って言ったか?

待て待て待て

今俺の目の前にいるのはアオと赤ちゃん用の柵の中で腰を押さえてうずくまる幼女だけだ。

どこにも所長は見当たらない。

まさか、…

「お、おい所長はまだか?お前連れてくるって言ったよな?」

キョトンとしてアオが言う。

「?、所長ならいるじゃないですか?」

そして、赤ちゃん用の柵の中にいる幼女と目が合う。

…。

…。


「うぇぇぇぇ!?」

思わず声をあげてしまった。

こいつはどう見ても幼女じゃないか。

ダメだ、もしかすると俺は女性がみんな幼女に見える病にかかったのかもしれない。

「なんだオメェ?人様見て奇声あげんじゃねぇよ!おいアオ?コレが新しいのか?」

相変わらずすげぇ口が悪い。

俺が呆気に取られていると、

「そうですよ、所長。この方が大宮ソウさんです。先生ご存知無いですか?ほら、理論魔法オリンピック最年少メダリストの」

マジか…こいつマジで所長か…

「はぁ?しらねぇよそんなん。ってか最年少っていくつの時だよ?」

「12ですよ。」

アオがすかさず答えた。

ガキにしてもまぁ口が悪い、なんだこいつ?

ガキが止まった。目を見開いてびっくりしている。

ん?流石にびっくりしたか?

まぁ確かに、自分でも何だが中々な経歴だと思うと、思っていた瞬間だった

「お、お前…12って小学校だろ?」

「まぁ、そうだ。」

シンと静まる。

呆気に取られたのか…?

そう思った時

「あははははははは!」

何故か爆笑である。

意味不にも程がある

「あはっ…!お、おまっ…12でまだ小学校だったのかよっ…ぶっ…あはははっ…!」

聞き捨てならないことを聞いた。

まだ12…だと?

俺は半ば怒り口調で言う

「はぁ?お前さっきから意味わかんねぇんだよ?第一お前本当に所長か?いくつだよ?」

ガキは澄ました顔で

「はぁ…面白っ!リロは12ん時はもう大学だったしな、だからまだ小学校っつってんだよ」

まさか…

12で大学なんて、聞いたことが無い。

そう思って俺はハッとする。

聞いた事がある。

国際魔法学会で、年端もいかない少女が、賞を貰ったと、

まさか、あれは伝説じゃなかったのか?

となればこいつなんだろうか?

恐る恐る尋ねる

「お、おい、お前、まさか…あの学会の伝説の少女か?」

ガキがしれっと言う

「?伝説?よくわからんな?でも学会には14の時にでて、なんか賞貰ったな?あ、壁にかかったアレがそうだ」

壁にかかったソレを見て、全てを悟った。


…こいつはあの天才少女だ。

さっき自分の事をリロとか呼んでたな?リロが下の名前か?

ということは、たぶん苗字はこの研究所と同じ鈴蘭台


「鈴蘭台リロ…所長か?」

所長がまた目を見開いている。

また馬鹿にするんだろうか、こいつ。

すると前とは違い、今度は青い顔をしてこっちを震えて見ている。

「お、お前…なんで私の名前がわかったんだ?」

所長は震えている

「いや…、さっきお前自分の事をリロって言ったし、ここの研究所は鈴蘭台魔法研究所だから、そうかなぁと推測したまでだ。」

所長は何か怖いものをみたような顔で、アオの後ろに隠れている。

「あ、…アオっ!あ、あいつ!めちゃくちゃ賢いやつだぞ!うわぁぁ…はっ?まさか悪魔か?悪魔だから名前がわかったのか?」

何言ってんだこいつ。

馬鹿だ。

こんなやつよりも魔法研究では劣った自分が癪だ。

「まぁ、大宮さんは悪魔でしたか!」

アオが悪ノリする。

「ア、アオ!悪魔だ!悪魔には塩を撒くんだ!」

なんだよそれ、偏ってんな知識が。

「俺は悪魔でも何でもない!人間だ!ってかお前そんなに賢いのに何でそんなことはわかんないんだよ!」

「ぬわっ!?お前騙したな!アオ!こいつは悪魔じゃなかったぞ!」

「あらあら、私は悪魔だったのですかとは言いましたけれども悪魔だとは一言も言ってませんよ?」

「あぁっ!?アオっ!お前も私を騙したな!」

そうなんとか言って、ブンブン腕を振り回している。

はぁ、やかましい所長だな。


☆☆☆


ガチャリ

ドアが開いた

また誰か入ってきた…が

なんか女中さんの格好をした女性が入ってきた

「いらっしゃいませ、いや、ようこそお越しくださいました。大宮ソウ様。」

誰だ。

ってか今更だが、アオが最初に言った”ずっと一人だったんです”が余計に腹立たしくなってきた。

どう見たってアオさん以外にも俺含めて3名程いるんですが?

「私はこの鈴蘭台魔法研究所で雑用、もといお世話係をしております。名前は女将で結構です。」

こいつお世話係の分際で女将とか言ってますけど?

というか、揃いも揃って綺麗な奴が多いな。

アオは言うまでもなく、この自称女将だってかなり美人だ、何よりそのショートヘアと母性漂うオーラがすげぇいい感じだ。

所長は…いや、これは特殊過ぎだ。

なにしろ小さい、ガキにしか見えん。

しかも髪も綺麗な黒髪をツインテールにしてやがるからな。

「おい女将!炭酸水が無くなったぞ!はよ持ってきてくれ!」

所長がアオをペチペチ叩きながら言う。

「かしこまりました。あ、大宮様も何かお飲みになりますか?」

「あ、えっと…じゃあ…何がありますか?」

「おすすめは真夏の夜のアイスティーです。」

名前が引っかかるが、まさかな。

「えっと…じゃあそれでお願いします。」

「かしこまりました大宮様。あっ、睡眠薬は入れておきましょうか?」

「やめなさい。ここはそのネタを披露して良い所ではない。」

思わず突っ込んだ。

これはあかんやつや。


3分後

真夏の夜のアイスティーが運ばれてきた。

普通のアイスティーでした。

「ところで、お前今日からウチに入るんだろ?」

所長はようやく機嫌を取り戻した。

「あぁ、まぁそうだけど…何をするんだ、具体的に」

「普段はまぁ個々に好きな事を研究してるぞ、例えばアオは魔法療法を、私は理論魔法工学を、そして女将は計算機をやってるな」

へぇ、アオは魔法療法か、なんからしいな。

ん?女将さんの計算機ってなんだ?

「お前は何が専門なんだ?」

「俺は魔法化学だ、理論魔法工学もかじってるけど」

「へぇお前魔法化学か、ってかオイコラ、お前より私の方が立場も年齢も上なんだからせめて丁寧語を使え」

その見た目で年齢の事は説得力が無いが、楯つくと面倒くさそうだから少々癪だがそうしよう

「すみません所長、あ、その…女将さんの計算機ってなんすか?」

やはりこの幼女もどきに丁寧語は腹が立つな。

「ん?なんだ言ってなかったか、女将は暗算が凄いんだぞ。四則演算から定積分からなんでもアリだ」

マジかよ

「疑うんなら何か女将に言ってみろよ」

確かに気になる…じゃあ…

「女将さん」

「はい?」

女将さんはさっき飲んでたグラスとかを洗っている

「28691×78959 は?」

「2265412669 ですね」

思わず無言になる、即答である。

急いで携帯の電卓を使ってハッとする

女将さんは正直人間ではない

「そら言ったろ、女将はすげぇんだよ」

「私で良ければ計算なら何なりと、大宮様」

マジですげぇよ。

もう食えるだろ、コレで。

「女将さん凄いですね…」

「あっ、オイ!お前女将にはすぐ丁寧語じゃねぇか!」

所長がまたペチペチ叩いてくる。

ちなみにめちゃくちゃ弱い。

「女将さんは昔、歩く関数電卓と言われてたみたいですよ?」

アオが本を片付けながら言っている。

どうやらここには、こんな所にいるのが勿体無いくらいのやつらがいるようだ。

所長もなんだかんだ天才だし。

俺よりも賢い奴が、ここにはいる。

もしこのまま大学にいたら、こんな出会いは無かっただろう。

「…ここはここで悪くないのかもな…」

俺はそう呟いた。

「おいそうだ!お前、部屋はもう決めたな?部屋が決まったら早速今日の実験だ!」

所長はワクワクしながら言っている。

よほど実験好きか。

ん?待てよ?部屋?

ここには一階が喫茶店で、二階はこの部屋だけだ。

「あの…部屋ってなんすか?」

俺が尋ねると、

「?決まってるだろ、住む部屋だ。」

…。


また厄介な事になりそうだ。


俺が住む部屋はもう借りてますと言おうとすると

「それにしても、アオ、よくこの研究所にこいつスカウトできたなぁ。こいつ、なんだかんだ優秀だとは思うぞ、まぁ、経歴しか見てないけど。」

「そ、それは…まぁ…あはは…」

アオがなんだか目を不審に動かして答えている

「あっ!アオ…お前私がこの前に言った泣き落としでスカウトしたのか!でかしたぞ〜!何せ人手不足だからな!」

非常に聞き捨てなりませんなぁ!はっはっは!

泣き落としですとぉ?

アオは俺の雰囲気に気づいたようで、真っ青な顔して謝り倒している

「アオさぁーん、後でお話ししましょー」

俺は正直憤慨しながら言った。

アオはゆっくり頷いた、震えている。


「その……大宮さん…ホントにホントにホントにごめんなさいぃぃ…うぅ…でもこれは仕方なかったんですぅ…」

すると、これまた抱きしめたくなるような泣き顔でこっちを見る。

うぅ…ずるいぞアオさん。

しかし、ここは心を鬼にしてやろう。

さっきから俺はやられっぱなしだ。

「……泣き落とし女…」

「うわぁぁん、言わないで下さいぃぃ…私を捨てないでぇぇ…」

関係ない事を言いだしたぞ。

なんだ捨てないでって、そういう系か。

「あーあ、女の子泣かせたよ、最低だなこいつ」

違う、勝手に泣き出したんだよぉぉん。

「…大宮様、それはちょっと…」

女将さんが中々な目で見て言ってくる

あれ?いつの間にか俺が悪くなってる。

わかりました、わかりましたよ。

「だぁぁぁ、わかったよ!別に気にしてねぇよ!だから泣くな泣くな!ほら、結構本格的な研究所だし?俺も入って悪くない感じはするからさぁ!」

精一杯のフォロー。

「ほんとですかぁ…?うぅ…」

「ほんとほんと!」

「良かったですぅ…」

突然また抱きしめたくなるような笑い顔、しかも涙付き、ずるい、ずるいぞ!

「さぁ、茶番も終わったし、お前の部屋開けるか」

所長はそう呟くと、何故か凄く嬉しそうに俺たちのやりとりを見ていた。









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