表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/69

68 Tai-toru omoi tuka nai !

山道を渡る風が真紅の髪を掬い上げるように撫でる。

艶やかな髪束が主の心中を表すかのごとく所在無げにふりふりと揺れた。


「はぁ……」


風音に混じる溜め息は本日何度目か。


「足止めされてもう3日……」


王都へと急ぐルチア一行は、不運にもその進路を塞がれ立ち往生していた。



西部と中央を隔てるヤマモトヤマ山。

かつて勇者自ら命名した霊山も、千年のうちに魔物の棲み処と成り果てた。


唯一の安全路である細い山道は地崩れによって埋まり通行は為らず。

どうにも山肌に何かが激突したことが原因らしい。


この地を治めるノリリン男爵が復旧に当たっていたものの、

魔物の襲撃にすくんで作業は遅々として進まず。


ルチアの護衛達が警護に付いたことでようやく見通しが立ったところである。



「もどかしい、見ていることしかできないなんて」


ルチアは自らも円匙を振るうつもりであったが、

貴人が側に居ては人足が浮き足立って仕事にならぬと追い出されてしまった。


もっとも貴人である以上に、見目麗しい乙女であることが問題なのだが。

滅多にお目にかかれないような美女が、むくつけき男達に混じって汗を流していたらそれはいかにも都合が悪い。


同じ理由で作業に加われぬ侍女のユリーカは、炊事、洗濯、子守唄(魔物に怯えて寝付けぬ者も多い)等の雑事を引き受けて忙しく働いている。


最近よく耳にする“山路の聖母”とは彼女のことらしい。


女でありながら例外的に作業に従事するノーラは、文字通りの100人力を発揮して大活躍している。

今では大親分と呼び慕われている。(当人は嫌がっている)


「私だけが何の役にも立たず、無為に時を潰すばかり」


ルチアはすっかり消沈し切り、さりとて一人休むことも良しとせず、今日もこうして作業を眺めていた。


実のところ彼女の目があるお陰で人足達は平素より熱心に働いているのだが、

そこに考えが及ぶほどに自己評価は高くないようだった。


「ヘイ!マイレディ」


そこへ警戒に当たっていたパーシーが林間から滑るように姿を現す。


「パーシーか…君はすごいな。俊敏で夜目も利くし、それに…変だし」


いつもと変わらぬ調子の少年へ、羨望の混じった視線を向ける。


「ヘイ!グレイトサンクス!」



「ところで何があった――うん?主人とはぐれた奴隷を見つけた?

 狐の若い女性で…ユイツで会ったことがあると?」


「ヘイ、実はその主人というのがダス――」


「わーーーー!!」


ズムッ


「ヘブフォッ?!」


「ど、どうしたんだノーラ。いきなりパーシーを地面に沈めたりして」

「えっと……変な虫でもいたかな?えへへ」


濃紺の髪を作業帽の内にしまい込んだ少女は、大の大人100人分の働きをしてもまだ有り余る活力に溢れていた。


「それより今の話なんですけど」

「狐の女性のことか」


「はい、その人たぶん私の知り合いじゃないかなー…と思いまして」

「なんと、それならノーラも一緒に来てもらおう」


「……えと、ルチア様も行かれるんですか?」

「当然だ。ユイツの民であるなら領主家の者として放ってはおけないだろう」


「あー、うー……そうですね」





希少な狐の、それも若い女を目にした男達はギラついた雰囲気をまとわせ人垣を成していた。


女の連れていたワークリザードは、薄情にも我関せず草を食んでいる。


「ほら、どいたどいた」


先触れを務めるノーラが腕をブンブン回しながらやって来ると、素早く人垣が割れる。

彼らが畏敬する大親分の剛腕は容易く人の命を刈り取るからだ。



「ひぃ……ぃ」


件の女は憔悴しきった体で蹲り、怯えた様子で小刻みに身を震わせていた。


「あわわ……これは、なんとも」


その妖しいほどに魅力を湛えた容貌を目の当たりにして、

同性であるルチアでさえ小さく息を呑む。


何よりその憐れな姿に強く胸を痛めた。


「(いったいどれほどの距離を歩いたのか……)」


擦り切れ、襤褸布のようになった靴はもはや用を成さず、傷だらけの足は固まった血がこびり付いている。


そして白い肌に残る痛々しい縄の跡。

歩けなくなった後も、自らをワークリザードに縛り付けることでどうにか歩みを進めてきたのだろう。


「(それに比べて私は――)」


必死に何かを果たそうと足掻くその姿は、

無為に時を潰していた自らの不徳を浮き彫りにするようで一層苦しく感じられた。



「ハルさん!」


僅かな沈黙を破り、ノーラが女に駆け寄る。


「!ひ……ぃ、ノーラさん?!」


周囲の視線から隠すように抱きしめると、怯えばかりだったその目に僅かに安堵が浮かぶ。


「ノーラさん、主様が……わたし、はぐれて……荷トカゲさん、

 言うとおりに探して、でも、でも、見つからなくて……」


「話は後でゆっくり聞くから、まずは傷の手当を……あ、のど渇いてるよね?お腹は?

 誰かお水持ってきて。早く、駆け足!」


指示を受けた男達が慌てて動き出す。

逆らえば命は無い。


「お水……!そ、そうです、わたしがお水を差し上げないと、主様は、主様は……!」


水と聞いて飛び上がらんばかりに驚いた女は、

どこにそんな力が残っていたのか必死に抱擁を振りほどこうともがきだす。


「ちょ、ちょっと、落ち着いて」


「あ、あああ……!大変です、主様もうずっとお水を飲んでいません!

 早く、早く、お側に行かないと……!」


まるで命を削るかのような暴れようにノーラは危機感を募らせる。


「……ハルさん、ごめん!」


首筋からトスンと軽い音が鳴る。


「!――――…………」


この頃すっかり熟達した手刀で瞬時に女の意識を刈り取った。


「今は……今だけは無理にでも休んで」


女は糸が切れるように倒れ込むと、そのまま深い眠りに落ちた。




◆◆◆




ルチアは眠りについた女を自身のために誂えられた小屋へ運び入れた。


「こんなボロボロになってまで……」


侍女のユリーカの手を借りて治療と清拭を済ませた後、

どうにも離れ難いものを感じてずっと側で看ている。


「ルチア様、お食事の用意が――」

「うん、今行く」


ユリーカに呼ばれて小屋を出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。

日の落ちた山道は一寸先も見通せず、否応なく寄る辺無さが胸をよぎる。


「具合はいかがですか」

「よく眠っている。よほど疲れていたようだ」


いま床に伏せた女はこの暗闇と同じ、絶え間ない憂苦の中にいるのだろうか。


「彼女の主人という方も気掛かりです」

「そうだな……」


奴隷という望まぬ境遇にありながら、あれほどまでに主を慮る。

大切に扱われていた証拠だろう。


「自力で水も摂れないというからには、よほどのご老体に違いない。

 早急に探し出さなければ命に関わる」


ルチアの脳裏に優しげな老婦人の姿が思い浮かんだ。


「心配ですね。ノーラさんはどういうわけかあまり気にしていないようですが」

「もしかすると行き先に心当たりがあるのかもしれない。後で詳しく訊いてみよう」




「ハルさんのご主人さんですか?!え、ええ、まあ知ってますけど……」


食事時に訊ねると、なぜかノーラは目に見えて狼狽した。


「宿のお客様ということでしたね」

「そ、そうなんです。身なりが良くって上品で――」


しかし話し出すと途端にほわんと表情が柔らかくなる。


「私のお料理のまずさをきちんと教えてくれて、味見をしてもらう約束も。

 あと、このエプロンもプレゼントしてくれたんですよ。えへへ」


その話からも温かな人間性が見て取れた。


「想像通りお優しい方のようですね」

「そうだな。失くすには惜しい人物だ」


「ですがルチア様……」

「わかっている、わかっているけれど……」


だからこそ先を急ぐ身には厳しい選択を迫られることになる。


「う~ん……あの人なら大丈夫だと思うんですけどねぇ。あ、おいしい」


そんな二人をよそに、ノーラは暢気に粥の感想を口にした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「大丈夫じゃない、ちっとも大丈夫じゃないよ?!むしろ今にも死にそうだよっ!」


虚空に向けて突っ込みを入れる俺は、いま無人の原野を彷徨っている。


水は無い。


食べ物も。


「まずい……ほんとこれまずい」


面倒事を華麗にスルーして山を下ったまでは良かったが…

なんていうか、当てずっぽうというか。

心の妖精の導きのまま適当に突っ走ってきたらこの有様よ。


おのれ妖精!


「ううっ……お腹すいた、のど渇いた、おっぱい飲みたい…………」


いえ、違うんです。


ただ飢えと渇きを同時に満たせる理想の食物というだけで、いやらしい意図は無いんです。

本当です。信じてください。ありがとうございます。


ハァ……精神的にもだいぶまいってるな。

普段の俺なら絶対こんなおかしなこと言わないのに。


早いところなんとかしないと清潔な快男児のイメージが崩れてしまう。

どこかにおっぱいの木でも生えてないかしら。


実の生る木ならそこら辺に生えてるんだけど……なんせ異世界の植物だ。

食べていいものか判別がつかない。


異世界で一人生きていくのはこうまで難易度が高いんだなぁ。

今の俺は自力で水も摂れないリアル赤ちゃん人間だ。


とはいえ、あんな品性下劣なクソ鬼が養父では育つものも育たない。

むしろ縮む。シワシワになる。


俺の育成には美人で優しい甘々ふわとろメイド嫁ママンが欠かせない。

どこかに落ちてないかしら。


落ちてない。


落ちてないよ!


『~満たされなかった悲しみが力に換わる!~』(脳内テロップ)


過酷な環境で育った俺は確実に強い!


幼稚園の粘土工作で恐竜を作ったこともあるんだ。

強いぞ。ガオーだぞ。


召喚サモン!】


いでよ粘土恐竜アースレックス


ガオー


ドシンドシン



恐竜の背に乗ってどうにか人の住む場所まで辿り着いた。


……実のところ意識が朦朧としたまま歩いてるうちに辿り着いたんだろうけど。


まあいいじゃねか。


粘土恐竜アースレックスは無敵の恐竜戦士なのだ。




柵を飛び越え、広場を抜けて。

比較的小奇麗な家を定めて宿を乞う。


トントン

泊めてくださいな。


「駄目です」


そっかー。


困るんですそういうの。

こっちは命が懸かってるんで。


ならすぐに次の家へ――とはいかない。

精神的に立ち直る時間が必要だ。


なんだこの腰抜けの弱虫芋虫水虫田虫野郎め、などと思ってはいけない。

今すぐ余所のお宅へ行って宿泊を頼んでみればわかる。


っていうかそんなことできない。できないよね?

できないんだ。できないんだヨォォォぉぉぉおおんおんオオオン!!

ゥわぉワぁ~お!ゥわぉワぁ~お!オイッチニー、オイッチニー。(腰抜け体操第一)



「お困りかい」

「ご覧のとおりです」


打ちひしがれる俺に、しょぼくれた爺さんが声を掛けてくる。


「この村は今ちょいと厄介事を抱えていてな。余所者を泊める者はいないだろう」


あっ、そう。ふーん。

それはいよいよ命の危機。まいったね~。


ヤダー!


し゛に゛た゛く゛な゛い゛!マ゛マ゛ー!


「村長であるこの美中年わしを除いて、だがな。よければうちに泊まるといい」


なん……だと。


そう言ってニヒル(なつもり)に笑う村長は、やっぱりしょぼくれた爺さん。


でもね、でもね、今だけはお目目にフィルター掛けちゃう。

はい、いないいない~…バァ!デター!ナイスミドル!むしろヤングマン!子供!



ふぅ……しかしこれ普通に考えて怪しすぎるよね。

身代わりに生贄~とかでよく見るパターンじゃない?


とはいえ今の俺に申し出を断る余裕は無い。

よし、今夜は絶対に警戒を怠らないようにしよう。


ぐぅ……




深夜――



ランコ~


ランコ~



どこからか不気味な鳴き声が響いた以外何事も無かった。



……


…………


おおごとだよ!!??


バーン


美中年おれが村長なんだぜ」


寝ぼけて口調のおかしい村長に縋りつく。


「それは最近洞窟に住み着いた例のアレの声なんだぜ」


な、なんだ例のアレの声か。


それなら安心だ。

おやすみー。



……


…………


例のアレってなんだよ!!??


ちっとも安心じゃないのに気付いた時には既に朝になっていた。




「おはようなんだぜ」


村長が唾を吐きながら挨拶してくる。

口調は妙なままだ。


どうやら日付が変わるとキャラも変わるシステムらしい。

今日のはちょいワルおやじ(のつもり)だろうか。


「さっそくだが例の洞窟に行ってもらいたいんだぜ」


急に何を言い出すんだこのジジイ。ボケたのか。


「泊めてやるかわりに厄介事を片付けてもらう約束なんだぜ」


冗談じゃない、ふざけんなよジジイ。

呪ってやる。ジジイにな~れ。なってる。


「おい村長のジジイ、また洞窟から脅迫状が届いとる。例によって女を寄越せだとよ」


村人の、これまた年寄りが手紙を持ってやって来る。


「ジジイじゃない。俺はまだ中年だ。美中年だ。お前こそジジイだ」

「ふざけんな、お前がジジイだ」「黙れジジイ」「うるせえジジイ」


ジジイ認定合戦はさておき、その洞窟に住み着いた魔物が厄介事の正体か。


そいつがたびたび女を生贄に要求してきてるんだな。

なんて破廉恥でスケベなゴミクズなんでしょう。


……?なんか最近似たような状況を目にしたような気がする。

そういうの流行ってるのかしら。いやねえ。


だがそういうことなら話は早い。


「その魔物を退治すればいいわけだな」


シュバッとやっつけて洞窟を頂戴すれば万事解決。

女は俺が代わりに受け取ってあげるので魔物さんも安心して死ねる。


「いや、住み着いたのは魔物じゃなくて変なおっさんなんだぜ」


……?またしても最近似たような状況を目にしたような気がする。

そういうの大流行なのかしら。ほんといやねえ。


しかし相手は人間か……


そうなると交渉でどうにかなるかもしれない。

社会人生活で培った技術とかいう死に設定を活かす時がきたようだ。


「その脅迫状を見せてもらえるか」


「読むのか、気をつけろよ」


おいおい、手紙を読むだけで何を注意しろと……うわぁ。


―――――――――――――――――


バブゥ!ママだいしゅき

ママァ…しゅき!

しゅき!だいしゅき~~!!

ママいい匂いしゅる~

ン゛ァ゛ァ゛ァ゛~~

キャッキャ…マ゛マ゛ァ゛~~

ママ…ミルクちょうだい

チュパチュパチュッチュ…

だっ、だぁっ、んま

んまんま…マ゛マ゛ァ゛~~!!


※一部抜粋


―――――――――――――――――


「はじめのうちはまだ読める内容だったんだが、最近じゃこの通りなんだぜ」


「ふむ……よし、行ってくる」


「お、おい、大丈夫なのか、だぜ」


「ああ、おそらくな」


不思議と自信があった。



この送り主となら話が通じる気がしたからだ。




◇◇◇




「ここだな」


問題の洞窟に到着。


日当たり、風通しともに良好。近くに綺麗な沢まで流れている。

なんだよ……俺が住んでた所より上等じゃねえか。


「おや?」


そしてなぜか入り口には気品を感じさせる美丈夫が佇んでいる。


「なにかご用かな」


若くはないが、重ねた年月がえもいわれぬ渋みとなって醸し出されている。

村長ジジイに見せてやりたいな。こういうのが本当の美中年だぞ。


しかしこの人は誰なんだろう?


年齢的にはおっさんである。

が、立ち振る舞いを見るにあの怪文を寄越した人物とは到底思えない。


「あの、貴方はどうしてこんな所に?」


「フッ……つまらない話です」


一瞬表情に陰が差し、どこか自嘲気味に呟く。


年上好みの娘さんならコロッといっちゃいそうだ。


「ボクは以前王都で魔物の研究をしていたんです」


「学者さんでしたか」


知的な男性が好みの娘さんならコロッといっちゃいそうだ。


あ?これしね?しね?


「特に力を入れていたのが魔物の繁殖です。しかしボクの考えを理解してくれる人は誰もいなかった」


「そりゃまあ……敵である魔物を増やそうとすれば当然反発もあるでしょうね」


それで異端視されて追放されたのか。

だからこんな辺鄙な所にひっそり隠れ住んでるんだな。


うむ、生きてよし。


「ゴブリンなどの類人型魔物に孕まされた女性が一度に3~5匹の仔を産み落とすことは広く知られている」


「ふむふむ」


いいね、俄然興味のある内容だ。続けて。


「しかしその原因を追求した者は誰もいない。おかしなことだ。ゴブリンの仔とヒトの赤子は大きさにさして違いは無い。にも関わらずタネが違うだけでこうも生まれ方が異なっている」


「それは、確かに。何故なんでしょう」


「ボクは交尾の方法に原因があると考えている」


交尾!詳しく。


「ゴブリンの交尾は母体となる女性に多数の雄が群がるのが常だ。

 そうすることで排卵が促され、母体は一度に複数の仔を宿す」


「つまりその状況を再現できれば人間でも同じことが……?」


「そう……!可能かもしれない!キミは実に理解が早い。王都の石頭共とは雲泥の差だよ」


えへへ、褒められちゃった。

頭の出来を褒められるなんて初めてじゃない?


「でも先生、人間でも双子や三つ子はたまにありますよね?それはもしや……」


そういう状況(・・・・・・)で宿った子である可能性は高いだろうね」


マジかよ。


今度から双子三つ子を見かけたらママさんに声を掛けてみよう。

うまくすればお楽しみパーティーに参加できるかもしれない。


(注)こいつらの勝手な妄想です。事実とは異なります。



「ヒトは元来それだけの出産能力を備えているんだ。今はその力を意図的に封じているに等しい」


「それって……つまり」


驚いた。


途中まで単なるちょいエロ小話だと思って聞いてたけど、これはそんなチャチなもんじゃない。

この人は人間と魔物の力関係を根底から覆すつもりだ。


この世界では魔物が人間よりも強く、栄えている。

過去の魔王軍による蹂躙もその圧倒的な物量によって為されている。


今に至るまで続くこの不利を、人間本来の力を解き放つことで対等に持ち込もうとしている。

間違いなく世界を変革し得る大天才だ。


すなわち、数には数を。

多産には多産を。集団交尾には集団交尾を……あれ?


「一夫一妻など害悪。これからはボクの提唱する一婦不特定多夫こそが世の常となるべきだ」


あ、ああ……


「ボク自ら先鞭をつけるべく、前々から目をつけていたスワプ男爵夫人に協力を頼んだ。頼み込んだ。

 伏してお願いした。足も舐めた。美味しゅうございました」


この人は、あれだ。


「するとどうだい!手酷くあしらわれた挙句、あろうことかこのボクを色情狂を扱い。しまいにはゴブリン王子などと陰口を叩く始末。どいつもこいつもまるで理解しちゃいない!女性は人類共有の財産なんだ!」


間違いない。



「乱交は文化!!」



例の変なおっさんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ