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給与額がそのままレベルに反映されたら最強っぽくなった  作者: (独)妄想支援センター
Ⅰ.異世界トリップからの冷静な状況分析 そして草原での華麗なる無双劇
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6 非情な現実

 朝になったらしい。


 ギャアギャア ギャフー


 遠くの方でカラスのような鳥が騒いでいる。

 あまり気分のいい目覚め方じゃない。


 昨夜はあの後また狼っぽい遠吠えに一度目が覚め、

 怖くなって手近な石ころを声のした方に投げた。


 24万6800パワーの全力投擲。

 遠くでドカンと音がした気がするが気のせいだろう。


 すぐ静かになったからまた眠りに就いたけど。


 カラスもどきが群がっているのがまさにそのドカンの辺り。

 遠目でも判るほどのでかいクレーターができている…


 きっと夜中に隕石が落ちたんだ。

 俺は関係無い。


 おや?スキルが増えているぞ。


 【闇夜の狙撃手】


 なにこれカッコイイ…


 そうか!

 昨夜の投擲か!


 …お?

 さらにスキルがもう1個増えてる。


 【アーリィ・ライザー】


 なんだろう。

 よくわからないけどこれもカッコイイぞ!


 俺はアーリィ・ライザーだ!

 さっそく自慢してやろう。


「なあ池野君、俺はアーリィ・ライザーだ」

「アーリィ…?あぁ、early riser〈早起き〉ですね。

 確かに僕もこんな早く起きたのは久しぶりです」


 …ほんと、今朝はあまりいい気分じゃない。





「さあ出発しましょう!」

「はいっ!」

「…………」


 ぐっすり眠って元気なカイト氏とイケ高君。

 対照的に俺はすっかり不機嫌になっていた。


 せっかくの異世界なのに、どうして変哲も無いただの草原を、

 憎きイケメンと中年デブのパーティーでテクテク歩かなきゃならんのだ。


 エルフとかドラゴンはどうしたんだよ!

 せめて女騎士のくっ殺ぐらいあってもいいんじゃないの?


 助けた馬車にはおっさん一人と馬一頭。

 華が無いったらありゃしない。


 どうなってるんだこの世界は。

 おーい神様!いるんでしょ?出てきてくださいよー。

 できれば女神がいいです。



 目覚めよ―――



 あなたは仏様でしょ!?


 いや、ありがたいけどね。

 ありがたや…ありがたや…


 違う、そうじゃない。



 俺の不機嫌が伝播したのか、昨日とは打って変わり口数の少なくなった三人。


「い、いや~、いい天気で…」


 雰囲気の悪さに耐えられなくなり、

 イケ高君が喋りかけた直前――それは響いてきた。


 ギャヒヒィ~~~~ンゥ!!!


 馬の悲鳴だ。

 昨日聴いたから間違いない。


「ご…ダストさん!カイトさん!」

「はい!」

「あー…?」


 イケ高君とカイト氏は頷き合うとすぐさま駆け出す。


 俺は気の抜けた返事をするとその後をだらだら歩いていく。

 ああ…身体が重い。


 道なりに進み、小高い丘を越えると――


 ブヒッブヒ! 


 ヒヒィ~ン


 深緑色をした薄汚い豚男が30体くらい、ぐるりと馬車を取り囲んでいた。


「あ…!あれは!」


 ファンタジー定番の暴れん棒、オッグだ。いや、オー君だ。

 自分でもちょっとわからないくらい興奮している。

 ファンタジー世界のイベントとしてはこれ以上ないシチュエーション。


「オークだ!」


 ひゃっほう!本物だー!

 なんだよ、やればできるじゃないか!

 お約束の展開に、沈んでいた心も急上昇↑↑↑


 こういうのを待ってたんだ!

 それで!?メインの女騎士さんはどんな方かしら。


 馬車の周囲には騎士らしき姿の人が3人いる。

 そのうち3人が男だ。



 ……あれ?

 見間違いかな。

 女騎士はどこにいるんだろう。


 改めて様子を窺う。護衛は3人、全員が男。


 女騎士は――いない。


「なん…だと…ぐはぁ!」


 オークと知ってテンションフルバーストだった俺は、その非情な現実に心が折れた。


「ぐぅ…」


 急に息が苦しくなり、意識が朦朧とする。

 崩れるように倒れ込み、ゴロゴロと丘を転がり落ちる。


 ドサッ


 転がりきったところで仰向けに倒れ、それきり指一本動かせなくなってしまった。


「いきましょう!僕が前衛を務めます!

 ダストさんは昨日のようにサポートをお願いします!」


 遠くでイケ高君が何か叫んでいる。

 思考は霞が掛かったようにおぼろげで、言葉の意味は理解できなかった。


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